誰かのSAIDO
今回は三話更新します。
たまたまだった。
学校から配られた地図で近道を知っていたけど、たまたま遠回りしたい気分だった。渡り廊下を歩いていたら春一番かと思うほどの強い風が吹いて、思わず目を瞑っていたら。
「あっ!!」
男よりも高く、しかし女にしては低い、不思議な声が響いた。
声の持ち主の方を見ると、桜が、いや、幻術で作った桜の木の下に女の子が立っていた。よせばいいのにその日のオレは入学式で気分が高まったからなんとなく声をかけたんだ。
「ねえ、どうした?」
オレの声に驚いたのか、女の子はビクッとしてすぐにオレの方を見た。
女の子は中性的な顔立ちの少女だった。正直俺好みではない。俺の好みはかわいい系で、こんな中性顔の、きつめで意思の強そうな瞳は苦手どころか大嫌いだった。
しかし、その少女はその涙目でオレの目を見ていた。泣いている女ほどメンドクサイものはなく、ただ話しを聞いてさっさと離れればいいのに。
冷たい俺の心にナニカ暖かいモノが湧いて来た。
久しぶりに「ほっとけない」と思うようになった。
「何かあったの?」
なるべく穏やかに、優しそうな声で少女に話し掛けた。少女が安心するように。
「う、あ、その……」
少しテンパってるのか少女は言葉が詰まっているようだ。女の子は息を思いっきり吸って、吐いた。やっと言葉を詰まらなくなったようだ。
「リ、リボンが風で飛んじゃて……」
少女が指差しした先には、確かに赤いリボンが木の枝に引っ掛かっていた。登れば取れる範囲なのだが。
「わ、私、高い所がニガテで……その」
ああ、成る程。取ろうにも高い所がニガテで、どうすればいいか分かんなくなって泣いちゃたか。
「・・・・・・アレ、私の家族が、入学式にプレゼントしてくれたものだから……」
ああ、泣き出しそうな顔をしないでくれ。滅多に痛まない心が張り裂けそうに痛くなってしまう。
オレらしくないが、一肌脱ぐか。
「ちょと待ってて」
少女の頭を撫でてオレは木に登った。




