攫われた婚約者※ルードルフ視点
クラウディアが姿を消してから一時間以上が経過した。それなのに見つかるどころか目撃情報すら無い。
何の情報もない状況に苛立ちが増し、何もできない自分に腹が立つ。
「くそ、ディアはどこに行ったんだ…」
クラウディアは城下町に詳しくない。どこかに行って戻って来られなくなったというだけなら良いが暗殺者に捕まり殺されていたらと考えると背筋がぞっとする。
一刻も早く見つけないと。
彼女と昼食を共にしたレストランで待機していると焦った様子のキーランドがやって来る。
「何か分かったのか!」
取り乱した私の問いかけにキーランドは苦い顔を見せた。その表情に嫌な予感が胸の中を駆け巡る。
クラウディアの身に何かあったのか?
まさか本当に殺されて…いや、そんなわけがない。
あの子は私を置いて勝手に居なくなったりしないはずだ。
「ついさっき店の従業員がこちらを届けに来ました」
渡されたのは今日クラウディアが持っていた花柄のハンカチ。数年前に私が彼女にあげた物だった。
キーランドの言葉に違和感を感じる。
「今日出勤だった従業員は全員家に帰している!」
「え?ですが…」
考える素振りを見せたキーランドはすぐに違和感の正体に気がついたらしい。一気に顔色を悪くする。
「まさか…」
「その偽従業員がディアの行方を知っているかもしれない!すぐに捕まえろ!」
「かしこまりました!」
指示を出すと飛び出して行くキーランド。一人残された部屋で深く溜め息を吐いた。
誰もいなくなったところでハンカチの間に挟まった私宛の紙を取り出す。
二つ折りになったそれを恐る恐る開く。
『クラウディア・フォン・シーラッハは預かった。返して欲しければお前一人で来い』
続けて書かれていたのは廃墟となった倉庫の場所だった。
クラウディアは拐われていた。怒りで身が震える。
「狙いは私か?」
私が行ったところでクラウディアが無事に帰ってくる保証はない。しかし他の者を向かわせたら生きたまま帰って来ない可能性が高まる。
クラウディアが死ぬのは絶対に駄目だ。
もっと自分の立場を考えないといけない事も、他の者に任せるべきなのも分かっている。
分かっているが自分の手で彼女を救い出したい。無力なままでいたくないのだ。
「殿下、どちらに?」
部屋を出ると私の護衛を担当している者に声をかけられた。笑顔で「手洗いに行くだけだ」と答えてその場を立ち去り手洗いの窓から外に出る。
「ディア、今助けに行くからな」
私には君に伝えていない事がたくさんあるんだ。
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