第二王子とデート③
食事が終わってルードルフに連れて来られたのは貴族専用の書店だった。五階建てのそこはどの階に行ってもどこを見回しても本という幸せ空間。
めちゃくちゃ癒されるわ。
「嬉しそうだね」
「はい、幸せです!」
だらしない笑顔で返事をする。
しまったと思ったのはルードルフが驚いた表情を見せてからだった。
でれでれと変な顔になっていたわね。
恥ずかしすぎて死にそうだ。赤くなった頬を両手で隠す。
「すみません、変な顔になっていましたね」
気持ち悪い顔を見せてしまった事を謝ると「違うよ」という声が降ってくる。
顔を上げると真っ赤になったルードルフが腕で口元を押さえていた。
熱でも出たのかしら?
首を傾げていると深く溜め息を吐かれてしまう。
「ディアがあまりにも愛らしい顔をしていたから…」
「へっ?」
「急に可愛い顔を見せないでほしい」
可愛いって私の事よね?
クラウディアの顔面偏差値は高い。美人と褒められる事は多いけど可愛いと言われる事は少ないのだ。
嬉しさと恥ずかしさで頬が熱くなる。
「照れているルード様も可愛いですよ」
照れ隠しで余計な事を言ってしまった。
私の言葉にルードルフの頬の赤みは抜けていく。やがて悪魔のような笑みを浮かべ始めた。
しまった、この人に可愛いは禁句だった。
「誰が可愛いって?」
低い声が響いた。
ルードルフは小さい頃から可愛いと言われるのが苦手、嫌いと言っても過言ではない。
前に言ってぐちぐちと一時間以上の説教を喰らった事があるくらいだ。二の轍を踏むとは我ながらアホすぎる。
「ディア、説教が足りなかったのかな?」
「違います。今のは口が滑ったというか…」
「口が滑ったって事は可愛いと思っていたのは本当の事みたいだね」
腰を抱いて怖い顔を近づけてくるルードルフ。自分の考えなしの発言に呆れてしまう。
「本を見る前にお説教にしようか」
「いや、あの…。本を見たいのですが…」
「駄目だよ。恨むなら失言をした自分を恨んでね」
目の前に天国があるのに側に居るのは悪魔だ。
無駄に良い笑みを浮かべた悪魔は「じゃあ移動しようか」と私を地獄に誘おうとする。
「ですが、時間がなくなってしまいますし…」
どっかの誰かさんが遅れたせいで遊ぶ時間が少ない。
その気持ちを込めて伝えると察しの良いルードルフは表情を歪める。
「ルード様への贈り物を買う時間がなくなるのは嫌なので…」
私の贈り物で引き止められるとは思わないけど…。
そう思っているとルードルフは溜め息を吐いて、じっとこちらを見つめてくる。
「今回は見逃すけど次はないよ」
「え?」
「さぁ行こうか」
手を引いて書店の中を歩いていくルードルフ。
よく分からないが許してもらえたらしい。
天国を楽しめそうで良かったと安堵の息を吐いた。
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