護衛は攻略対象
命を狙われる危険性がある私に護衛がつけられる事になったのはまだ理解出来る。
ただどうしてこの人物なのだろうか。
ちらりと後ろに立っている男性に目を向ける。
「何か?」
仏頂面で尋ねてくる人物の名前はキーランド・フォン・ヴィルト。
年齢は二十五歳。黒髪黒目が特徴的な近衛騎士だ。
彼がただの騎士であったならば文句はない。しかし彼は…。
「よりにもよって護衛が攻略対象者ってどうなのよ」
キーランドは隠れ攻略対象者の一人。
王太子であるバルデマーを攻略しないと攻略対象として現れない人物だ。
ゲームではクラウディアと関わりはなかったはず。現実でも関わりはなかったのだけど。
どうやらバルデマーが寄越したらしい。
ルードルフ曰く「兄上なりにディアを心配しているみたいだよ」との事。一番信頼している騎士を護衛としてつけてくれるあたり嫌われてはいないみたいで安心はしたけど…。
攻略対象とはあまり関わりたくなかったわ。
「何か言いましたか?」
「何も言っていないわ」
「そうですか」
めちゃくちゃ気まずい。
今日はルードルフに誘われて城下町にやって来たのだ。ただ到着した時に聞かされたのは彼が急用で遅れるという知らせ。帰っている時間はないからという理由で、結果キーランドと二人で待つ事に。
変装をしているので私とバレる事はない。それに人目もあるから不貞を疑われるような事はないのだけど会話が続かないので気まずいのだ。
遅れるなら屋敷から出る前に言ってほしかったわ。
「キーランド様」
「私の事は呼び捨てで結構ですよ」
キーランドは伯爵の息子。私は公爵家の娘だ。
身分的には私の方が上だけど流石に年上を呼び捨てには出来ない。これは年功序列で生きてきた前世の性だ。
苦笑いで「キーランド様は年上ですので」と拒否すると怪訝な表情を向けられる。
「そうですか、分かりました」
この人、私の事を嫌っているのかしら。
再び訪れる沈黙が重い。後ろを見ると相変わらずの仏頂面だ。
もしかして私のような小娘の護衛をやりたくなかったのだろうか。
第一王子に仕える騎士としては公爵令嬢の護衛を請け負うのは嫌よね。私が嫌いというよりもこの仕事が嫌なだけだと思う。
「クラウディア様、ルード様がいらっしゃいましたよ」
遠くを見つめながら言うキーランド。彼の見ている方を向くが遠くに黒い物体が見えるくらいだ。よくあれがルードルフの乗っている馬車だと分かるものだと感心する。
そういえば目がかなり良い設定だっけ。
気まずい空気から逃れられそうで良かったと安堵の息を吐いた。
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