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破滅はお断りです  作者: 高萩


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寝不足の朝

前世を思い出したあの日から気づけば四年が経っていた。

体力が回復した後、謝罪回りを始めた私に屋敷中の人間が驚いていたし「お嬢様は本当に反省しているのだろうか?」という疑惑の目を向けた。今までの生活を考えたら皆がそう思うのは当然の事だ、私は文句の一つも言わなかった。

誰よりも私の変化に驚いていたのは両親だ。

私がなにか言うたび二人で顔を見合わせており、その光景はまるで「あの我儘なクラウディアはどこに消えたの?」と話しているように見えた。

私を支えてくれていたのはいつだって私の我儘で専属の侍女となってくれたヒルマだ。

「いつか分かってもらえますよ」

そう言って笑う彼女に何度元気をもらった事か。もう数え切れないくらいだ。

両親を始めとした屋敷に住む全員が我儘でなくなった私を受け入れ始めたのは二年前の事だ。まさか変化に納得してもらうまで二年もかかると思っていなかった。


「クラウディア様、朝ですよ」


カーテンを開けてこちらに笑いかけてくるヒルマを睨んでしまったのは寝不足のせい。

昨夜は遅くまでミステリー小説を読んでいたから。寝ないといけないと分かっていても続きが気になって、つい読み耽ってしまったのだ。

前世の頃から本を読むのが好きだった。社会人になって読める時間が限られていた事もあって読み足りてなかった分を補うかのように今の身体で読みまくっているというわけだ。

貴族としての授業はしっかり受けているから空いた時間に本を読みまくってても咎めてくる人はいない。むしろ感心されるくらいだ。


「また寝不足ですか?ちゃんと寝ませんと…」

「面白くて、続きが気になっちゃって…」

「四年前まで活字を読まず屋敷を駆け回る事ばかりだったお嬢様が小説を面白いと仰るとは驚きですね」


元気よく言うヒルマにさらっと毒を吐くようになったなとちょっと悲しくなる。

それだけ心を預けてくれているって事なんだろうし四年前まで文字を見ようともしなかったのは事実だ。今よりずっと子どもだったから仕方ないと思うけど返す言葉もなく苦笑する。


「さて、支度しましょうね」


眠いまま立ち上がるとヒルマは待ってましたと言うように空色のワンピースを持ってくる。

これで良いですか?と聞かれるので片目を擦ったまま頷けば魔法のような速さで服を着替えさせられた。

社畜を極めた大人という前世を持つ身からしたら人に着替えさせてもらうというのはいささか恥ずかしいものがあったが流石に四年も経ったら慣れてしまう。


「髪型はどうしましょうか?」

「ふぁぁ…。ヒルマに任せる…」


大あくびをすると鏡越しにヒルマの苦笑いが映ったけど見なかった事にした。彼女から視線を外して前を向くと鏡に映る自分と目が合う。

いつ見ても猫みたいに吊り上がった目ね。

自分の容姿を客観的に見たらやっぱり美少女に分類されると思う。しかし吊り上がってキツく見えてしまう目が少し残念だ。これはこれでありだという人も多いと思うけど。


「今日もお嬢様は愛らしいですね」


こちらの気持ちを察しているのか、ただの偶然なのか私の髪を梳きながらヒルマは笑いかけてくる。やっぱり褒めてもらえるのは嬉しい。

それにしてもどこかで見た事のある顔だ。

自分の顔を見るたびなにかを思い出そうとしているが結局思い出せていない。


「誰だっけ?」

「どうかしましたか?」

「ううん、なんでもないわ」


そのうち分かるでしょ。

適当に考えてしまった事を後悔するのは数ヶ月後の話だった。

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