第一王子
バルデマー・フォン・ロタリンギア第一王子。
攻略対象者であり、彼ルートの悪役令嬢はクラスメイトの高位貴族のご令嬢。ゲーム内ではクラウディアと関わりが薄いけど現実ではそうでもない。
幼少期はまったく絡みがなかったのに私がルードルフと婚約してからはよく突っかかってきているのだ。
すぐ叱ってくるからちょっと苦手なのよね。
「久しぶりだな、クラウディア嬢。第二王子の婚約者が廊下を走るとは良い度胸だ」
二歳上であるバルデマーは学園の先輩でもある。
校舎が違う為、会う事はないと思っていたのだけど私が逃げ込んだのは三年生の校舎だったらしい。変な人から逃げられたのは良かったけど出会ったのがバルデマーとは。
「それは、その…。事情がありまして」
「ほぉ?その事情とやらを聞かせてもらおうか」
睨みつけてくるバルデマーから視線を逸らすとゆっくり詰め寄られて壁ドンをされてしまう。
乙女ゲームだったらときめくようなシチュエーションなのに全然ときめかない。
弟の婚約者に壁ドンは駄目でしょ。
「顔色が悪いな。何かあったのか?」
「少しだけ…」
普段よりも優しい口調で尋ねてくるバルデマーに素直に答えると溜め息を吐かれた。
そろそろ離れてほしいのだけど。もし誰かに見られたら変な誤解を招いてしまう。
「何があったんだ?」
「その前に離れてください。誰かに見られたら困ります」
「逃げないか?」
「逃げようとしても逃がしてくれないでしょう。どこにも行きませんから」
この人はネチネチした性格なのだ。ここで逃げ出したら後で何をされるか分かったものじゃない。その前に逃げ出せるとは思わないけど。
逃げないという意思を示せばやっと離れてくれた。
「それで何があった?」
「実は変な人に追いかけられていたんです」
「変な人?」
「同級生の男子生徒の格好をしていたのですがあれは…」
「暗殺者の類か?」
「おそらくは」
察しの良いバルデマーに頷くと鬼のような形相で「本当か?」と肩を掴まれる。
いちいちスキンシップが多い人だ。身体を捩じって彼の手から逃げ出す。
「すぐに学園に警備の強化を手配させよう」
「そこまでしなくても…」
「何を言っている、お前は第二王子の婚約者なんだ。まだ自覚がないのか?」
うっ、声を詰まらせる。
昔からバルデマーが説教を始める時のお決まり文句は「お前は第二王子の婚約者なんだ」だった。またあの悪魔のような説教が始まるのかと頬を引き攣らせる。昔は理不尽に感じていたけど今回の件に関しては完全に私が悪い。
「生徒会室までついて来い。ルードにも報告させてもらうからな」
「それは…」
「あいつが来るまで説教だ」
覚悟しろと言うバルデマーの声に項垂れた。
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