ヒロインの激昂
「なんでちゃんと悪役令嬢やらないのよ!」
どうしてこうなったの?
人気のない階段の踊り場。
私の目の前には会いたくない人ナンバーワンのヒロインことバルバラが立っていた。
待ち合わせはしていない。むしろバルバラに待ち伏せされていたのだ。
普通に歩いていたら急に出てきたからびっくりしたわ。
「ちょっと聞いてるの!」
怒鳴りつけてくる声に思わず身体が震える。
バルバラの顔を見ると鬼の形相をしており血走った目で私を睨みつけていた。
せっかくの美少女顔なのに。ヒロインがしたら駄目な顔になってるわよ。
キャラクターデザインさんが見たら涙目になるだろう。ただのファンの私まで悲しくなる。
「貴女は確かバルバラさん…ですよね?何の話をしているのでしょうか?」
悪役令嬢、ね。
ここはすっとぼけさせてもらおう。厳しい淑女教育のおかげで表情を作るのは得意なのだ。
「何の話ってあんたは悪役令嬢なのよ!ちゃんと悪役をやってくれないと私が困るの!」
「悪役、令嬢…?それは何でしょうか?」
首を傾げて訳が分からないというポーズをするとバルバラは怒りに顔を赤く染めた。
選択肢間違えちゃったかしら。
乙女ゲームなら間違えたりしないのに。
「ふざけないで!分かってるのよ、あんたも転生者なんでしょ!」
やっぱり転生者ね、しかもかなり厄介な部類。
前世がある者同士仲良くしたかったけどこの様子だと無理そうだ。
この子の様子を見ると、私に向けているのは敵意だけ。転生者だと知られるのは良くない。
「転生者、ですか…?言っている意味がよく分かりません」
「とぼけないでよ!あんたのせいでルードルフ様を攻略出来ないの!!」
ルードルフ狙いも確定か。一番人気のキャラだったし狙いたくなる気持ちも分かる。
でもゲームの彼と現実の彼では全然違う。私が悪役をやっていたとしても今のバルバラに惚れるかと言われたら微妙なところだ。
少なくともその性格の悪さをどうにかしないと彼とは結ばれない気がする。
「仰っている意味がよく分かりません」
さっさと解放してもらいたいのだけど。
怒りで身体を震わせるバルバラは急に顔を上げたかと思うと私を指差して不穏な事を言う。
「そうだわ、あんたがいなくなったら良いのよ!消してやるから覚悟しておきなさい!」
ぽかんとする私を置いてバルバラは立ち去って行った。
てっきり階段から突き落とすか突き落とされたふりをするのかと思ったのだけど…。
「何だったのよ…」
小さな声を響かせた。
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