警戒
例の一件があってからアロイスはバルバラと関わる事をやめたようだ。むしろ軽蔑しているらしい。
一方バルバラは相変わらず信者を増やそうと色々と動いているみたいだ。ただ私とアロイスの件が広まったせいか付き合いを控え始めた人も多いみたいで。特に高位の貴族ほど彼女の事は避けている。
理由は簡単。私の隣で真っ黒な笑みを浮かべている婚約者のせいだ。
「ディアは何も心配しなくて良いですからね」
私の腰を抱いて笑いかけてくるルードルフが王子ではなく魔王に見える。
高位貴族の多くは第二王子に睨まれるのが怖いみたいでバルバラとの関わりをやめたらしい。
彼女が私にやらかした事に幻滅した人もいるみたいだけど。
「大丈夫、私が守ってあげますから」
髪にキスをしてくるルードルフは甘ったるい笑みを浮かべる。
守ってくれるのは嬉しいけどもし彼が敵になったらどう対峙するべきなのか分からない。
それにしても彼のバルバラへの好感度はかなり低めだ。ゲームでもここまで下がる事はないと思う。
「ルード様、あまり過激な事はしないでくださいね」
「それはあの女次第ですよ」
ラスボスの風格を見せるルードルフに私は頬を引き攣らせるしかなかった。
「少し調べたのですがあの女なかなかの曲者みたいですね」
「どういう事ですか?」
「どうやらアロイスの好む物や学園で過ごす場所、休日の予定まで把握していたみたいでただの平民とは思えないんですよ」
ルードルフの発言に言葉が詰まった。
おそらくというか絶対にバルバラは転生者だ。それもこの世界の元となったゲームをプレイした事がある。
自分以外の転生者がいる可能性を考えていなかった。よりにもよってヒロインとは。
「ディア、何か知っているのですか?」
「知りません。変な関わりを持ちたくないので」
「それもそうですね」
この世界のバルバラがどんな風に過ごして生きてきたのか。いつ前世の事を思い出して、いつから攻略を狙っていたのかはまったく知らない。
ルードルフを狙っているのは分かるけど他の情報はさっぱりだ。
「ディア、警戒していてください」
「警戒?」
「いつあの女に絡まれるか分かりません。学園では一人にならないようにしてください」
そこまで心配しなくても大丈夫だと思うけど。
バルバラは私に近寄ってこようとしないし、アロイスの件で私を陥れるのが難しい事くらい分かったはず。
「とにかく絶対に一人にならないでください」
「わ、分かりました」
どうしてルードルフの忠告を真面目に聞かなかったのか。
後悔する事をこの時の私はまだ知らなかった。
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