攻略対象に絡まれました③
人混みを掻き分けてこちらにやってきたのはアロイスの婚約者エーディトだった。
「ルードルフ様、クラウディア様!この度はうちの馬鹿が大変なご無礼を働き、誠に申し訳ございません!」
まさかのエーディト登場に驚いていると彼女はアロイスの頭を掴み地面に擦りつけさせながら自分の頭を下げた。
いきなりの行動に私もルードルフも固まる。
「エディ、痛いぞ」
「うるさい!黙って頭を下げなさい!」
ぐりぐりとアロイスの頭を押しつけるエーディトの強烈なキャラについ笑ってしまった。
豪快な女性なのは分かっていたけどここまでとは。
「ディア?」
「ルード様、もう許してあげましょう」
「しかし…」
「アロイスは正義感の強さから突っ走ってしまっただけのようですし」
私の言葉にアロイスとエーディトは顔を上げる。思い切り地面に押しつけてられたせいかアロイスの額には少しだけ血が滲んでいた。
「言っておくけど次はないわ。一緒に頭を下げてくれた心優しい婚約者に感謝しなさい」
ヒロインがアロイスを狙ったのならエーディトには破滅が訪れるかもしれない。
それは避けたいところだ。
「ルード様もよろしいですか?」
「ディアが許すと言うのなら構いませんよ」
許せないって雰囲気を出しつつ頷いてくれるルードルフに安堵の息を吐いた。
「ありがとうございます」
一件落着と思っているとエーディトが涙を流し始めた。
どうしたのかしら。
困惑していると彼女はアロイスの胸ぐらを掴み引き寄せた勢いのまま頭突きを食らわせたのだ。
傷口にそれはかなり痛そうだ。
「アロイス!二度と馬鹿な事しないで!」
「エディ、痛い…」
「私は貴方が居なくなったら嫌なのよ!馬鹿!アホ!脳筋!」
痛そうに額を押さえるアロイスに抱きついて泣き崩れるエーディト。
怒涛の展開についていけないが彼女がアロイスを本気で思っている事だけは伝わった。
アロイスもそれが分かったのだろう。何度も謝りながら彼女の背中を擦っている。
こんなに思われているのだから大事にしてもらわないとね。
「アロイス」
「は、はい!」
私が声をかけると背筋を伸ばすアロイスに近寄り笑いかける。
「婚約者を放ったらかして他の女性にうつつを抜かす事があったら許しませんからね?」
顔を青ざめさせて何度も頷くアロイスは泣き続けるエーディトを抱っこして素早く逃げて行った。
これでアロイスルートは潰せたかな。
「本当に許して良いのですか?」
納得出来ないと言った顔をするルードルフに頷く。
「アロイスは正義感が強い馬鹿です。バルバラさんに騙されただけですよ」
「それでもディアを傷つけようとしたのは事実です」
「次はないと言いました。もしも同じ事を繰り返すというならば今度はエーディトが庇おうが容赦致しません」
ルードルフからヒロインの話を聞いたアロイスの表情を見るにもう騙されるとは思えないけど、念の為に警戒だけはしておこう。
「ルード様」
「何ですか?」
「助けてくださってありがとうございます。心強かったですよ」
正直ルードルフの声が聞こえた時に安心してしまった。肩を抱きしめられた時も同じ。
笑いかけると彼は微妙そうな表情を見せた。
「ディア、その笑顔は二人きりの時だけにしてください」
「え?」
「まったく。早く戻りますよ」
私の手を引くルードルフの耳が少し赤く染まっていた。
【☆☆☆☆☆】で評価をして頂けると嬉しいです。




