攻略対象に絡まれました②
冷ややかな声が響くとアロイスは顔を青くさせた。
「ルード様、どうしてこちらに?」
「ディアがなかなか教室に戻ってこないので迎えに来ました」
担任に頼み事をされて職員室に行った帰りだった。ついて来ようとするルードルフを宥めてから行ったのだ。
教室と職員室はそこまで離れていないし、頼み事も大した内容じゃない。戻らなかったら心配にもなるだろう。
「迎えに来たのは正解みたいでしたね」
ルードルフは私の肩を抱き寄せながらアロイスを睨みつけた。
「ルード様…」
「アロイス、私の質問に答えてくれますか?」
アロイスが助けを求めるような視線を送ってきたのは私にだった。
怒鳴っていた相手に助けを求めるって騎士向いてないんじゃない?
心優しい女性なら庇ってあげるのだろう。でも冤罪をかけられて簡単に許してあげるほど私は優しくない。
「アロイスが私にバルバラという方を虐めたと嫌疑をかけてきたのですよ」
「クラウディア!」
アロイスは非難するように私の名前を叫んだ。
事実を誤魔化そうとしても無駄なのに。調べたらすぐに分かる事だ。
「アロイス、いつから彼女を呼び捨てに出来るほど偉くなったんですか?」
ルードルフの冷たい声が響いた。
私は公爵令嬢、アロイスは伯爵子息。
立場が違うのだ、許可なく私を呼び捨てにする事は不敬罪扱いになる場合がある。貴族社会とはそういう理不尽なものなのだ。
「ルード様、ここは貴族も平民もない学園です。呼び捨ての件は置いておきませんか?」
身分関係なく平等に過ごすのがここのルールだ。実際呼び捨てにされた件では怒っていないから問い詰める気はない。
「ディアがそう言うなら。ですが言いがかりをつけた件は許せませんね」
第二王子と公爵令嬢の二人から睨まれたアロイスは可哀想なくらい真っ青になり、立っているのがやっとのようだ。
「そもそもバルバラとは誰なのですか?」
「私も存じておりません」
首を傾げるルードルフに私も同意する。
「ディアも知らないのですか?アロイス、バルバラとは誰ですか?」
「同じクラスの平民の少女です…。ふわふわしたピンク色の髪が特徴的な…」
「ルード様、入学式の日に私にぶつかった少女の事かもしれません」
アロイスと同じクラス、平民、ふわふわのピンク髪。
これだけ条件が揃えば誰なのかは導きやすい。
今気づいたふりをすると無表情で怒り狂うルードルフに余計な事を言ったかもしれないと焦る。
「あの非常識な女ですか」
「ルード様、バルバラをそんな風に言うのは…ひっ!」
ルードルフの言葉を否定しようとしたアロイスは睨まれて口を閉ざした。
「アロイス。君の言うバルバラという少女は入学式の日に《《私の大切な婚約者》》であるディアに故意にぶつかって怪我をさせました。それに謝罪もせず私に言い寄ろうとした屑ですよ」
簡単な説明ありがとう。でも私の大切な婚約者を強調して言うのはやめてほしいわ。
ルードルフの言葉を聞いたアロイスは確認をするように私に視線を向けた。
「ほ、本当…ですか?」
王族の言葉を疑うとは正真正銘の馬鹿だ。
ただアロイスにとってはそれくらい信じられない事だったのだろう。
「事実よ。膝に傷跡が残るところだったわ」
今はすっかり綺麗になっているがそれはルードルフが特別な軟膏を作らせたのと侍女であるヒルマが懸命に世話をしてくれたから。
もし傷跡が残っていたらヒロインはとっくに潰れていただろう。
私の返事にアロイスは土下座の姿勢に入った。
「も、申し訳ございません!」
人に土下座されたの前世も合わせて初めてだわ。
あまり気分の良いものじゃないわね、これ。
誤解だと分かって謝罪してくれたのだからもう良いかと思っていると。
「謝って済むと思っているのですか?」
低い声を出すルードルフ。ここまで怒っていると止めるのが難しい事を私は知っている。
困っていると人混みを掻き分けて入ってくる女生徒がいた。
「エディ…」
意気消沈したアロイスが呟いた。
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