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破滅はお断りです  作者: 高萩


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20/45

攻略対象に絡まれました①

学園に入学してから三ヶ月、私の周りでは何も起こらなかった。

私の周りで起こっていないだけだ。

廊下を歩けば他クラスから聞こえてくる女生徒の泣き声にどうしてこうなったと心が痛くなる。

入学式から三ヶ月で起こった変化。それは一部の貴族男性が婚約者を蔑ろにし始めた事だ。

原因は分かっている。ゲーム内でヒロインと呼ばれていた少女バルバラのせいだ。

ルードルフに冷たくあしらわれたせいなのかは知らないがバルバラは鬱憤を晴らすかのように他の貴族男性に手を出し始めたらしい。

どうやって口説き落としてるのかはさっぱり分からないが一部の男性貴族にとって彼女はお姫様、そして女性貴族にとっては婚約者を奪う盗人。彼女が所属しているクラスの男女の間に大きな亀裂が入っているそうだ。

今のところ婚約破棄を行った形跡はない。しかし関係に亀裂が生じた限りそれも時間の問題だろう。


「クラスが離れていて良かったというべきなのかしら」


ゲームだとバルバラも同じクラスだったはずなのに何故かここではかなり離れたクラスになっている。

成績順に決まるから幼い頃から教育を受けている貴族とそうじゃない平民が離れているのは自然なのだけど不思議な話だ。


「あれは…」


真っ直ぐこちらに向かって走ってくる赤髪の男には見覚えがある。

アロイス・フォン・シュレンク。

ゲーム内における攻略対象者の一人で騎士団長子息のポジションにいた人物だ。ルードルフと親しい人間でもあり私も何度かお茶会で会った事がある。


「おい!クラウディア!」


怒鳴り声で名前を呼ばれて驚いた。

アロイスは少々頭の悪い部分があるがそれでも騎士を志す者として礼儀正しかったはず。

明らかに様子がおかしい。何かあったのだろうか。


「お前、バルバラをいじめたな!」


速攻で理由が分かって安心したわ。

この世界だとアロイスとヒロインは同じクラスのはず。おそらく攻略されそうになっているのだろう。

しかし不自然だ。アロイスルートにおける悪役を担っているのは彼の婚約者エーディトなのにどうして私が怒鳴られているのかさっぱり分からない。


「虐めておりません」


今はアロイスの言葉を否定しないと面倒だ。

面倒だと思いながら返事をする。


「嘘だ!」

「そもそもバルバラとは誰なのかしら」


知っているけどあくまでも前世の知識があるから。この世界で彼女に名乗ってもらった事はないから知らないふりをしても嘘にはならない。

え?と驚くアロイスに追撃する。


「私が名前も知らない方を虐めると言いたいのかしら。理由もないのに?」


こっちは破滅を回避したいというのに虐めなど幼稚な行動をするわけがない。


「それは…。い、いじめたかったからだろう」


こいつ馬鹿だわ。

ゲームで攻略した時は明るくて正義感に溢れる人だと思っていたけどただの無鉄砲だとは。

ファンが知ったら泣くわよ。


「質問の仕方を変えるわ。どうして私がその子を虐めたと思ったのかしら」

「な、泣いている彼女がお前の名前を言ってたからだ…」


それで確認もせず正義感だけでやってきたのね。ここまで馬鹿とは知りたくなかったわ。

そもそも入学式が終わった後ヒロインとは出会っていない。

私はAクラスで向こうはDクラスだ。

教室がある階も、授業が終わる時間も違う。会う機会があるとするとお昼休みか放課後のみ。

昼はルードルフと一緒にいるし、放課後も彼に連れられて城で公務の手伝いをしている。

今気づいたけどルードルフと過ごす時間長すぎない?家族より長いわよ。


「私は忙しいの。貴方が言う子を虐めている暇などないくらいにね。それくらいアロイスも分かっていると思っていたけど残念ね」


呆れたように冷たく返すとアロイスは一歩後ろに下がった。やっと終わりが見えた頃だった、私の背後に人が立つ気配がする。


「私の婚約者に何をしているのですか、アロイス」


氷のように冷ややかな声を響かせたのはルードルフだった。

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