入学式
結局ルードルフが私を下ろしてくれる事はなかった。
お姫様抱っこのまま会場に入った私達は当然注目の的となり、驚愕、羨望、憎悪と様々な視線を注がれる事になったのだ。
私を椅子に座らせたルードルフは隣に腰かけるとずっと手を握っていた。新入生代表の挨拶をする時以外ずっとだ。おかげで入学式の内容がほとんど頭に入ってこなかった。
「教室に行きましょうか?」
「そうですね」
立ちあがろうとしたところで膝に痛みを感じる。
怪我してるんだったわ。
ルードルフに握られた手ばかり気にしていたから完全に忘れていた。
「私が運びますよ」
「だ、大丈夫ですから」
「遠慮しないでください」
「で、でしたら腕を貸していただけると…」
エスコートならそこまで目立つ事もない。貴族社会ならよくある光景だからだ。苦肉の策として提案するが「無理したら駄目ですよ」と笑顔で却下される。
結局またお姫様抱っこされてしまう。周りから悲鳴にも似たような歓声が響く。
「下ろしてください」
「痛いのでしょう?私に任せてください」
確かに痛い。立つと激痛が走るくらい痛いけど。
大勢の前でのお姫様抱っこはやめてほしかった。
羞恥心に見舞われた私はルードルフの肩口に顔を埋めて周囲の視線など見ないようにする。
「しっかり掴まっててくださいね」
嬉々として話すルードルフが少しでも苦しめばいいと首に巻きつけた腕の力を強めた。
周囲を見ていなかったせいで会場から出ていく私達を憎たらしそうに睨みつける人物に気づかなかったのだ。
「私の挨拶どうだった?」
「………とても格好良かったですよ。堂々としていて素敵でした」
二人きりになって尋ねられた問いに答えを返す。悔しいけど挨拶をしている際のルードルフはめちゃくちゃ格好良かった。
ぼんやりと見惚れてしまうくらい。
「嬉しいよ」
「やめてください…」
頬にキスをされるけど体勢のせいで逃げる事が出来なかった。じんわりと熱くなる顔を見られたくなくてもう一度ルードルフの肩に頭を寄せる。
「私達は婚約者なんだ。照れる必要ないのに」
「嵌めたくせに…」
「もしかしてまだ怒ってるの?」
「死ぬまで言い続けますわ」
貴方の婚約者になった事でいつ死ぬか分かったものじゃないですけどね。
「じゃあ、何十年も言われ続ける事になるね」
こちらの気持ちなど知らないルードルフは笑いながらそう返してきたのだ。
「そうなればいいですね…」
ルードルフの言葉に泣きそうな気分になったのはどうしてだったのだろうか。
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