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破滅はお断りです  作者: 高萩


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イベント?

入学式の準備があるからか保健室には先生の姿が見当たらなかった。薬品の匂いが漂う静かな空間が広がっている。

初めて学園に来たというのに真っ先に来る場所が保健室ってどうなのかしら。

それにしても全体的な設定は西洋感があるのにこういう部屋は現代日本って感じがする。

流石は乙女ゲームと思っていると椅子に下ろされる。


「これは酷いな」

「ですね」

「傷跡にならないと良いけど」


擦りむいた膝を見ると思ったよりも傷が深そうだ。患部を見ていたら更に痛みが増した気がする。


「泣かないで、ディア」

「すみません、痛くて…」


ルードルフから言われて初めて自分が泣いている事に気がつく。

いい大人が痛みで泣くとは実に情けない。でも本当に涙が出るくらい痛いのだ。

目元にそっとハンカチを押し当てられて化粧が落ちないように拭ってくれる。


「………あの糞女」

「え?」

「何でもないよ。それよりも手当てをしよう」


今聞こえちゃいけない単語が聞こえた気がするのだけど気のせいだろうか。ルードルフがそんな言葉遣いするとは思えないし幻聴だろう。

ぼんやり思っていると手当てを始める婚約者に驚く。絶対に王子にさせる事じゃない。


「怪我の手当ては自分でやりますから!」

「大丈夫だよ。私にさせて」

「入学式が始まってしまいます。先に行ってください!」

「嫌だよ」


貴方、新入生代表でしょう。

入学式が始まるまで時間があるとはいってものんびりしているわけにはいかない。

手当てしてくれている手を止めようとしないルードルフはどうしても自分でやりたいようだ。

相変わらず頑固な人ね。小さい頃から変わってない。


「すみません、ありがとうございます」

「ディアは私の婚約者なんだ。こういう時は甘えてくれたらいいよ」


こちらを見上げたルードルフの甘い笑顔を見てある事を思い出す。

もしかしてこれ保健室イベントだったりする?

確か出会った時に転んだヒロインをルードルフが保健室まで運んで手当てをしてあげるというものだった。まさに今行われている光景だ。

どうして私が相手なの?

怪我をしているのだから保健室に来るのは当たり前だけど…。


「ディア?」

「あの、ルード様…」

「どうしたの?」

「先程の、私にぶつかった女生徒をどう思いますか?」


出来心で聞いてみる。

さっきのタックルを見て好きになるとは思わないけど気になり始めるきっかけになってもおかしくはない。

ルードルフは変わった子が好きだもの。

驚いていた表情がにっこりしたものになる。

笑顔なのに怖いってどういう事なの。


「ディアを傷つけた愚か者だよ」

「えっと…」

「ごめん、あまりアレの話はしたくないかな」


今アレって言ったんだけど。

話したくなさそうに顔を背けるルードルフになにも言えなくなる。

どうやら好きになったわけではなさそうだ。


「さぁ、入学式に行こうか」

「私は膝が痛いのでここにいますね」

「駄目だよ」


鬼畜なの?

膝も腰も痛いのだけどそれでも入学式に出ろと言うのか、この王子様は。

睨みつけると何故か嬉しそうに頭を撫でられる。


「怒らないで」

「痛いので歩きたくないです」

「歩きたくないなら仕方ないね」

「そうで…きゃっ!」


楽しそうに笑うルードルフにまたお姫様抱っこをされてしまう。思わずしがみつくとそのまま頬にキスを落とされた。

いきなりなにやってるのよ、この王子は。


「歩けないのだろう?私が運んであげるよ」

「け、結構です…!」


そもそも入学式に出なくて良いから。

新鮮な気持ちでドキドキワクワクするのは前世で十分味わったし、そもそも別に楽しい行事じゃないし。

何よりこの状態で会場に行ったらいつも以上に目立つだろう。それは嫌だ。


「駄目だよ。逃がさない」


しっかりと抱きかかえられて抵抗する術もなく連れて行かれる。

せめて会場に入る前に下ろしてほしいのだけど。

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