婚約者になりたくて②※ルードルフ視点
一週間後、クラウディアから本のお礼の手紙が届いた。
どうやら例の本を読み終わったらしい。
マルコに頼み薔薇の花束を用意してもらってからクラウディアの元に向かうと驚いた顔で出迎えられた。
「おはようございます、ディア」
「ルード様、おはようございます」
いつも通りに挨拶をしてくるクラウディアだったが視線は薔薇に向かっている。
「ルード様?どうされたのですか?」
首を傾げるクラウディアに対して私は膝を折り、目の前で跪く。
焦った様子を見せる彼女に笑顔で言ったのだ。
「ディア。私と婚約をしてください」
驚きのあまり固まるクラウディアはどうして私が婚約申込みをしているのか気になっているようだ。
もしかしたら嫌がられるかもしれない。しかし彼女に逃げ道など残っていないのだ。
「ディアが嫌だと言っても婚約はしてもらいますよ」
「あの…」
「詳しい話は中でしましょう」
慣れた足取りでいつもの談話室に向かっている途中、振り向くとふらふらと歩くクラウディアに驚いた。
触れて良いのかと思ったが倒れてからじゃ遅いと彼女の腰に腕を回せば驚いた顔を向けられる。
「すみません、ふらついていたので。大丈夫ですか?」
「は、はい…」
貴方のせいだと言わんばかりの視線は無視して談話室までエスコートする。
中に入りクラウディアの侍女であるヒルマに「大切な話をするので出ていてもらえますか?」と部屋を出て行くよう指示を出す。
「マルコには居てもらいますので二人きりではありませんよ」
笑顔で言えばヒルマは何も言えず頭を下げて出て行った。
扉が完全に閉まったのを確認した後、クラウディアの方を見る。
「婚約者になってもらう理由をお話しましょう」
「は、はい…」
背筋を伸ばし姿勢を正すクラウディア。
焦らず一つずつ話していかなくてはならない。
「確認ですがディアはプレゼントした本を読みましたね?」
「えっ、はい。読みましたよ?」
「良かったです。内容を見て感じた事は?」
「あの、婚約の話をするのではなかったのですか…?」
婚約話に関係ない話ではないかと首を傾げるクラウディアに笑いかける。
「関係あるのですよ。それより内容はどうでしたか?」
「………面白かったですよ。ただお城についてだけはやけに詳しく書かれているなと感じました」
「そうですか。分かりました」
納得いかないといった表情で答えてくれた彼女に頭を軽く下げてお礼を言う。
「ディアに質問なのですが」
「はい」
「『逆賊のアリーセ』や『王宮の秘密探検』の著者をご存知ですか?」
勿論知らないだろう。調べようとしても絶対に辿り着かないようになっているのだから。
首を横に振って知らないというクラウディアに答えを授ける。
「著者は私の姉ですよ」
「え?」
目を点にするクラウディア。
当たり前だ。元王女、今は隣国の王妃である人間が書くような代物ではないのだから。
「私の兄が生まれるまで姉は女王になるために厳しく育てられていて、その息抜きとして小説を書いていたのですよ」
説明すれば、どこか納得いかないといった表情を向けられるが想定内だ。さて、ここからが本題となる。
「姉の処女作である『王宮の秘密探検』は姉の実体験が元になっているのですよ」
「えっ…?」
「あの本がどこにも出回っていないのは書かれている内容が全て事実だからです」
もうここまで言えば分かりますよね?
という言葉は飲み込んだ。言わなくても賢い彼女なら分かってくれると信じているから。
「この国の王城の秘密を知ってしまったディアには私の婚約者となってもらいます。この意味、分かりますよね?」
小説の事は他言無用。
話せば碌な事にならないと理解を示したクラウディアは真っ青な顔を私に向けてきた。
「は、嵌めたのですか?」
おどおどした様子で聞かれるので首を縦に振る。
「結果的にそう捉えられてもおかしくないですね」
絶望した表情をするクラウディア。そんな顔をさせてしまっているのは申し訳ないが絶対に大切にすると誓おう。
「よろしくお願いしますね、婚約者殿」
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