第36話「クリスマスの街」
水曜日の朝。
街は、すっかりクリスマスモード。
ひよりは今日も、元気に営業に出かけます。
クリスマス商戦、頑張らないと。
華やぐ街と、ちょっぴり寂しい気持ち。
そんなひよりの一日。
それでは、第36話、どうぞ。
水曜日の朝。
目が覚めると、もう六時半を回っていた。
ちょっと寝坊した。
急いで起きて、顔を洗って、化粧をして。
スーツに着替えて、部屋を飛び出した。
駅までの道。
街は、すっかりクリスマスモードだった。
イルミネーションが、あちこちで光っている。
お店の前には、クリスマスツリー。
BGMは、クリスマスソング。
もう、そんな季節なんだ。
電車に乗って、会社に向かった。
なんとか、八時前に到着。
ギリギリセーフ。
デスクに座って、今日のスケジュールを確認する。
午前中は、マルヤマスーパーへ訪問。
クリスマスの棚作りの提案をする予定。
食品業界にとって、クリスマスは一年で一番大事な時期の一つ。
ケーキ、チキン、ワイン。
普段の三倍は売れる。
だから、棚の配置が重要なんだ。
お客さんの目に留まる場所に、どう置くか。
それで売上が全然変わる。
ここが勝負だ。
午後は、他の取引先を回る。
忙しい一日になりそうだ。
八時。
朝礼が始まった。
「はい、みんな。今日も頑張りましょう」
課長の声。
「クリスマスまで、あと二週間ちょっと。クリスマス商戦、しっかり頑張ろう!」
「はい!」
朝礼が終わって、すぐに出発した。
マルヤマスーパーは、私のお得意様の一つ。
いつもお世話になっている。
丸山部長は、優しくて面白い人だ。
車で三十分。
マルヤマスーパーに到着した。
店の前には、大きなクリスマスツリー。
綺麗だな。
店内に入る前に、ちょっと観察。
お客さんの動線を見る。
どこに目が行くか。
どこで足を止めるか。
これが、営業の基本。
お客さんの視点で考える。
店内に入った。
もうクリスマスの飾り付けがしてあった。
サンタクロースの置物や、リース。
雰囲気が出てる。
「いらっしゃい、朝比奈さん」
丸山部長が、笑顔で迎えてくれた。
「おはようございます!」
「今日は、何の用事?」
「クリスマスの棚作りの提案に来ました」
「おお、ちょうどいい。話を聞かせて」
丸山部長は、事務所に案内してくれた。
テーブルに座って、資料を広げる。
「今年は、こんな商品を揃えてみました」
私は、カタログを見せた。
クリスマスケーキ、チキン、ワイン。
それから、お菓子の詰め合わせ。
「今年のトレンドは、小さめのケーキなんです」
「小さめ?」
「はい。一人暮らしや、少人数の家族が増えてますから」
丸山部長は、頷いた。
「なるほどね」
「それから、チキンも。丸ごとより、カットされたものの方が人気です」
「確かに。調理も楽だしね」
「そうなんです」
私は、もう一枚の資料を出した。
「棚の配置なんですけど」
店内の図を見せる。
「入口から三メートルの位置。ここに、クリスマスコーナーを作るのはどうでしょう」
「入口から三メートル?」
「はい。お客さんが店に入って、最初に目に入る場所です」
丸山部長は、じっと図を見た。
「でも、ここは今、日配品が置いてあるんだよね」
「日配品は、一時的に奥に移動させるんです。クリスマスまでの二週間だけ」
「ふむ」
「お客さんは、入口から三メートルで、買うものを決めると言われてるんです」
「そうなの?」
「はい。だから、ここにクリスマス商品を置けば、目に留まりやすいんです」
丸山部長は、また頷いた。
「なるほどね。朝比奈さん、よく勉強してるね」
「ありがとうございます」
「じゃあ、これでいこうか」
「ありがとうございます!」
話がまとまった。
よし、これで一件落着。
「それでは、宜しくお願いします!」
私は、立ち上がった。
帰ろうとすると、丸山部長が声をかけてきた。
「朝比奈さん、クリスマスは彼氏と?」
え。
「あー! 丸山部長! セクハラー!」
私は、大げさに叫んだ。
「あー! ごめんなさい……」
丸山部長は、慌てて謝った。
「しゅ~ん。。」
私は、わざとらしくいじけて見せた。
丸山部長は、笑った。
「朝比奈さん、相変わらず面白いね」
「もう、丸山部長ったら」
「ごめんごめん。でも、クリスマス、楽しんでね」
「はい、ありがとうございます!」
和やかに別れた。
店を出ると、もう昼近く。
お腹が空いてきた。
でも、まだ他の取引先を回らないと。
コンビニでおにぎりを買って、車の中で食べた。
午後も、何軒か回った。
どこも、クリスマスモード。
クリスマスケーキの予約、チキンの注文。
みんな、忙しそうだった。
この季節は、街全体が華やいでる。
それが、好きだ。
夕方。
もう五時を過ぎている。
そろそろ、会社に戻ろう。
車を走らせながら、街を見た。
イルミネーションが、もう点灯している。
綺麗だな。
赤や青や緑の光が、街を彩っている。
クリスマスソングが、聞こえてくる。
ああ、もうすぐクリスマスなんだ。
会社に戻って、今日の報告をまとめた。
マルヤマスーパー、無事に商談成立。
他の取引先も、順調。
いい一日だった。
定時になって、会社を出た。
駅に向かう道。
街は、もう真っ暗。
でも、イルミネーションが明るい。
カップルが、たくさん歩いている。
手を繋いで、楽しそうに。
いいなぁ。
私にも彼氏がいたらなぁ。
ちょっとだけ、寂しい。
まぁ、そのうちね。
電車に乗って、家に帰った。
部屋に着いて、ソファに座った。
ふう。
疲れた。
でも、いい疲れだ。
窓の外を見ると、遠くにイルミネーションが見えた。
綺麗だな。
クリスマス。
子供の頃は、サンタクロースが来るのを楽しみにしてた。
大人になってからは、友達とパーティーしたり。
社会人になってからはやらなくなった。
澪さんはクリスマス、どうするんだろう。
金曜日に会った時に、聞いてみよう。
「さてと、お風呂入るか」
お風呂に入って、ベッドに入った。
布団に包まれて、目を閉じる。
明日も忙しくなりそうだな…
そんなことを考えながら、私は眠りについた。
お読みいただき、ありがとうございました。
クリスマスの季節になりましたね。
街はイルミネーションで華やいで、カップルがたくさん。
ひよりも営業で頑張っていますが、ふと寂しさも感じています。
「私にも彼氏がいたらなぁ」
でも、前回道に迷った時に助けてくれた男性のこと、まだ心のどこかにあるのかもしれませんね。
次回もお楽しみに。
それでは、また次回お会いしましょう。




