第27話「笑いの土曜日」
土曜日の朝。
澪は、ちょっと落ち着かない気分で外に出ました。
公園で、彼女が目撃したものとは――
今回は、クスッと笑える息抜き回です。
肩の力を抜いて、お楽しみください。
それでは、第27話、どうぞ。
土曜日の朝。私は、なんだか落ち着かなかった。
昨日のこと。
気まずいというより、変な感じ。
部屋でゴロゴロしていても、落ち着かない。
気分転換しよう。
私は、軽く着替えて、外に出た。
秋の風が、心地いい。
特に目的もなく、近くの公園に向かった。
土曜日の午前中。
公園には、家族連れや犬の散歩をしている人がいた。
私は、ベンチに座って、ぼんやりと景色を眺めた。
少し離れたところに、中年の男性がベンチに座っていた。
五十代くらい。スーツを着ている。
休憩中のサラリーマンだろうか。
男性の周りには、何羽かの鳩がいた。
ああ、餌をやってるのかな。
そう思って、何気なく見ていた。
でも、様子がおかしい。
男性は、餌を持っていない。
そして、鳩に向かって、何か話しかけている。
いや、話しかけているというより……。
怒っている?
男性の声が、少し聞こえてきた。
「だから、お前はダメなんだ!」
え…
私は、耳を疑った。
鳩に、説教してる?
男性は、真剣な顔で鳩を見つめている。
「何度言ったら分かるんだ!」
いや、鳩に何度も説教してるの?
私は、思わず男性の方を凝視した。
男性は、一羽の鳩を指差して、続けた。
「お前のそういうところだぞ! 分かってるのか!」
鳩のどこ? どういうところ?
私は、心の中でツッコんだ。
鳩は、首を傾げている。
当たり前だ。分かるわけない。
男性は、さらに熱弁を振るう。
「俺は、お前のためを思って言ってるんだ!」
鳩のため?
何のため?
私は、必死に笑いを堪えた。
でも、まだ続く。
「お前、最近態度悪いだろ! 気づいてないのか!」
鳩の態度。
悪い鳩。
もうダメだ。
私の肩が、プルプルと震え始めた。
その時、鳩が飛び立った。
男性は、慌てて立ち上がった。
「おい! 話はまだ終わってない!」
終わらせてあげて。
私は、心の中で必死に叫んだ。
男性は、飛んでいく鳩を見上げて、大きく手を振った。
「戻ってこい! ちゃんと最後まで聞け!」
聞かないよ、絶対。
鳩は、あっという間に遠くに飛んでいった。
男性は、肩を落として、ベンチに座り直した。
そして、ため息をついた。
「あいつ、全然分かってない……」
私は、もう限界だった。
プルプルと震える肩。
必死に口を押さえる。
でも、無理。
「ぷっ……」
小さく、音が漏れた。
ダメだ。
笑いが止まらない。
「ふふっ……」
また漏れた。
男性が、こちらを見た。
ヤバい。
私は、慌てて立ち上がった。
そして、早歩きで公園を出た。
男性から離れた場所まで来て、ようやく我慢できなくなった。
「あははははは!」
私は、大声で笑った。
道行く人が、私を見る。
でも、もう止まらない。
「あははは! 何、あれ! 鳩に説教! あははは!」
おかしい。
おかしすぎる。
お腹が痛い。
涙が出てきた。
でも、このままじゃ、私の方が変な人だ。
私は、必死に笑いを堪えて、家に向かった。
家に着いて、ドアを閉めた瞬間。
「あはははははは!」
また、爆笑した。
ソファに倒れ込んで、笑い続ける。
「だから、お前はダメなんだ! って! あははは!」
「お前のそういうところだぞ! って! どこ! あははは!」
思い出すたびに、笑いが込み上げてくる。
お腹が痛い。
息ができない。
でも、おかしい。
私は、ソファで丸くなって、笑い続けた。
どれくらい笑っただろう。
ようやく、落ち着いてきた。
お腹が痛い。
顔の筋肉が疲れた。
でも、すっごくスッキリした。
「あぁ〜! 笑ったなぁ! おかしかったー! あっははははは!」
また、笑ってしまった。
久しぶりに、こんなに笑った。
気分転換、大成功。
私は、ソファに座って、深呼吸をした。
まだ、時々思い出して、クスクス笑ってしまう。
鳩に説教。
真剣な顔で。
あの男性、何があったんだろう。
鳩に、何を伝えたかったんだろう。
でも、きっと鳩は分かってない。
当たり前だけど。
私は、お茶を淹れた。
温かいお茶を飲みながら、窓の外を見る。
青い空。
白い雲。
どこかに、あの鳩が飛んでいるかもしれない。
説教から逃げて、自由に空を飛んでいる。
それでいいと思う。
私は、また笑った。
今日は、いい日だった。
笑って、スッキリして。
明日からまた、普通に過ごせそう。
夜、ベッドに入って、今日のことを思い返した。
そして、また笑った。
「鳩に説教……あははは……」
枕に顔を埋めて、笑いを堪えた。
でも、止まらない。
しばらく笑って、ようやく落ち着いた。
私は、目を閉じた。
今日は、よく笑った。
そして、明日からまた、いつもの日常。
それでいい。
そう思いながら、私は静かに眠りについた。
お読みいただき、ありがとうございました。
鳩に説教するおじさん。
実は私も似たような光景を見たことがあって、それがモチーフになっています。
真剣な顔で鳩に話しかけている姿、本当におかしいんですよね。
前回がちょっと濃い内容だったので、今回は息抜き回にしてみました。
澪の笑い声が聞こえてきそうです。
次回は、ひよりが新たな挑戦をする日曜日の話です。
それでは、また次回お会いしましょう。




