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【OLふたり、今日も明日も】  作者: 桜餅 詩音


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24/40

第24話「涙の水曜日」

第24話は、ひより視点です。

今回は、ひよりが自分の弱さと向き合う物語。

いつも明るく元気なひよりが、

本当の自分をさらけ出す。

泣いて、泣いて、泣き続ける。

涙なしには読めない、感動の回です。

ハンカチを用意して、読んでいただけたら嬉しいです。

それでは、第24話をお楽しみください。

 水曜日。私は、また飛び込み営業を続けていた。


 がむしゃらに、ひたすらに。


 断られても、断られても、次の扉を叩く。


 立ち止まったら、崩れてしまいそうだから。


 考えたら、全部が嫌になってしまいそうだから。


 だから、動き続けた。


 でも、今日も成果はなかった。


 夕方、会社に戻った時、課長が声をかけてきた。


「朝比奈、大丈夫か?」


「はい、大丈夫です」


 私は、笑顔で答えた。


 いつもの、明るい笑顔。


「無理すんなよ」


「大丈夫です。元気ですよ!」


 課長は、少し心配そうな顔をしたけど、何も言わなかった。


 私は、デスクに戻って、報告書を書いた。


 今日訪問した会社の数。十二件。


 成果。ゼロ。


 また、ゼロだ。


 でも、明日も頑張ろう。


 そう思いながら、パソコンを閉じた。


 定時になって、会社を出た。


 駅に向かう道を歩きながら、ふと思った。


 私、何やってるんだろう。


 月曜日に言われた言葉が、頭の中で繰り返される。


 **「何かから逃げてるの?」**


 逃げてる?


 私が?


 何から?


 私は、いつも笑顔で明るい。


 元気で、前向きで。


 周りからも、そう思われてる。


 でも、本当は。


 悩むことも、挫けることも、たくさんある。


 弱い自分を、たくさん知ってる。


 でも、それを認めたら。


 一気に、崩れていってしまうかもしれない。


 だから、がむしゃらに動いて。


 自分と向き合うことから、逃げていた。


 気づいたら、私は澪さんの家に向かっていた。


 連絡もしていない。


 水曜日だから、金曜日じゃないから、迷惑かもしれない。


 でも、足が勝手に動いていた。


 澪さんのマンションに着いて、インターホンを押した。


『はい』


「澪さん……私……」


『ひより? 今開けるわ』


 ドアが開いた。


 澪さんが、立っていた。


「あら? どうしたの?」


 澪さんの顔を見た瞬間。


 私は、堪えていたものが全部溢れてきた。


「澪さん……!」


 私は、澪さんに抱きついた。


 そして、大声で泣いた。


「うああああああ……!」


 声にならない声で、泣いた。


 澪さんは、何も言わなかった。


 ただ、私を抱きしめて、頭を撫でてくれた。


 私も、何も言わなかった。


 言葉にできなかった。


 ただ、泣いた。


 怖かったこと。


 悲しかったこと。


 悔しかったこと。


 情けなかったこと。


 全部、全部、涙になって溢れてきた。


 澪さんは、全てを知っている。


 だから、何も聞かない。


 何も言わない。


 ただ、そこにいてくれる。


 それだけで、いい。


 二人の間に、言葉はいらない。


 私は、泣き続けた。


 いつまでも。


 いつまでも。


 玄関で、立ったまま。


 澪さんに抱きつきながら。


 涙が、止まらなかった。


 どれくらい泣いたか、分からない。


 でも、澪さんはずっと、私を抱きしめてくれていた。


 少しずつ、涙が枯れてきた。


 息が、まだ荒い。


 身体が、震えている。


 でも、少しだけ、楽になった気がした。


「ごめん……なさい……」


 私は、ようやく言葉を絞り出した。


「いいのよ」


 澪さんの声が、優しかった。


「水曜日なのに……来ちゃって……」


「いつでも来ていいって、言ったでしょ」


 澪さんは、私の頭を撫でた。


「中、入りましょう」


「うん……」


 私は、澪さんに手を引かれて、部屋の中に入った。


 リビングのソファに座ると、澪さんが温かいお茶を淹れてくれた。


「ありがとう……」


「ゆっくり飲んで」


 私は、お茶を一口飲んだ。


 温かい。


 身体に、染み渡る。


「少し、落ち着いた?」


「うん……」


 私は、顔を上げた。


 澪さんは、穏やかな顔で私を見ていた。


「話したくなったら、話して。無理しなくていいから」


「うん……」


 でも、私はまだ何も話せなかった。


 言葉にすると、また崩れてしまいそうで。


 澪さんは、それを察してか、何も聞かなかった。


 ただ、隣に座って、私の肩に手を置いてくれた。


 時間が、ゆっくりと流れた。


 窓の外は、もう真っ暗だった。


「今日、泊まっていく?」


「……いい?」


「もちろん」


「ありがとう……」


 私は、また涙が出てきた。


 でも、今度は静かな涙だった。


 澪さんは、私の涙を拭ってくれた。


「大丈夫。あなたは、強いから」


「……強く、ない……」


「強いわよ。弱さを見せられることも、強さなのよ」


 澪さんの言葉が、胸に染みた。


「弱い自分をさらけ出せる相手がいること。それは、あなたの強さの一つよ」


「澪さん……」


「だから、泣きたい時は泣けばいい。私が、ここにいるから」


 私は、また澪さんに抱きついた。


 そして、泣いた。


 いつまでも。


 いつまでも。


 その夜、私は澪さんの家に泊まった。


 ベッドで横になっても、まだ涙が出た。


 でも、もう怖くなかった。


 澪さんが、隣にいてくれるから。


 私は、ようやく自分の弱さを受け入れた。


 傷ついたこと。


 怖かったこと。


 全部、認めた。


 そして、それでも。


 明日から、また前を向こう。


 そう思えた。


 澪さんの温もりを感じながら、私は静かに眠りについた。


(第24話 おわり)

第24話、いかがでしたでしょうか。

泣いてしまいましたか?

ひよりの涙、澪さんの優しさ。

言葉のない抱擁。

「いつまでも、いつまでも」

この繰り返しが、胸に響きました。

弱さを見せられることも、強さ。

そして、それを受け止めてくれる人がいること。

それが、どれだけ幸せなことか。

二人の絆が、最高に描けた回だと思います。

それでは次回、第25話でお会いしましょう。

最後まで読んでくださって、

ありがとうございました。

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