表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【OLふたり、今日も明日も】  作者: 桜餅 詩音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/40

第23話「震える勇気」

第23話は、澪の視点です。

今回は、佐藤くんの魅力発見回。

いつもは頼りない後輩だけど、

いざという時、男らしい一面を見せます。

不器用だけど、一生懸命な佐藤くんのお話。

それでは、第23話をお楽しみください。

 火曜日の夜。私は、珍しく一人で飲みに行くことにした。


 いつもはまっすぐ家に帰るのだけど、今日は少し気分転換したかった。


 駅前の居酒屋に入って、カウンター席に座る。


 日本酒を一合だけ頼んで、軽くつまみを食べた。


 静かに飲む時間も、悪くない。


 三十分ほどで店を出た。


 少しほろ酔い。


 でも、心地いい。


 駅に向かって歩いていると、横から誰かがぶつかってきた。


「おっと……」


 見ると、明らかに酔っ払った男性だった。


 四十代くらい。スーツはシワだらけで、顔は真っ赤。


「あ、すみません」


 私は、謝った。


 明らかに相手がぶつかってきたのだけど、争いは避けたい。


「すみませんでした」


 私は、その場を去ろうとした。


「おい、待てよ」


 男性が、私の腕を掴んだ。


「え?」


「ぶつかっておいて、それだけかよ」


「すみません、謝りましたけど……」


「謝って済むと思ってんのか?」


 男性の声が、大きくなった。


 周りの人が、チラチラとこちらを見ている。


 でも、誰も助けてくれない。


 私は、冷静に言った。


「すみませんでした。本当に申し訳ありませんでした」


「ふざけんな! お前みたいな女が……」


 男性が、私の肩を掴もうとした。


 その瞬間。


「やめてください!」


 誰かが、私の前に立った。


「え……?」


 振り返ると、佐藤くんだった。


「佐藤くん……?」


「霧島さん、大丈夫ですか?」


 佐藤くんは、震える声で言った。


「あ、ああ……」


「なんだお前! 関係ねえだろ!」


 酔っ払いが、佐藤くんに掴みかかろうとした。


 でも、佐藤くんは一歩も引かなかった。


「関係ありますよ! この人は、僕の……大切な先輩です!」


 佐藤くんの声が、震えている。


 身体も、震えている。


 でも、目は真剣だった。


「これ以上、絡むなら、警察呼びますよ!」


 佐藤くんは、携帯を取り出した。


 酔っ払いは、少し冷めたのか、舌打ちをした。


「ちっ……面倒くせえ」


 そして、フラフラと去っていった。


 佐藤くんは、私の方を向いた。


「霧島さん、大丈夫でしたか?」


「ええ、大丈夫よ。ありがとう」


「よかった……」


 佐藤くんは、ホッとした顔をした。


 でも、まだ手が震えている。


「佐藤くん、どうしてここに?」


「あ、仕事が終わらなくて、少し残業してたんです。今、帰るところで」


「そう」


「駅まで、送りますよ!」


 佐藤くんは、真剣な顔で言った。


 私は、少し考えた。


 一人でも大丈夫だけど……。


「う〜ん……じゃあ、お願いしちゃおっかな。ふふ」


「はい! 任せてください!」


 二人で、駅に向かって歩いた。


 佐藤くんは、私の少し前を歩いている。


 まるで、護衛のように。


 でも、足が少し震えている。


「佐藤くん、まだ震えてるわよ」


「え? あ、はい……すみません。実は、めちゃくちゃ怖かったです……」


 佐藤くんは、照れくさそうに笑った。


「でも、霧島さんが危ない目に遭ってたから、放っておけなくて」


「ありがとう」


「俺、男だから。霧島さんが危ない目に遭った時は、守りますから!」


 佐藤くんは、力強く言った。


 でも、声は少し震えていた。


 その不器用さが、何だか微笑ましかった。


「ふふ。ありがと」


 私は、素直にそう言った。


 駅に着いて、改札の前で立ち止まった。


「ここまででいいわ。ありがとう、佐藤くん」


「いえ、こちらこそ。無事でよかったです」


「じゃあ、また明日」


「はい! 気をつけて帰ってください!」


 佐藤くんは、手を振った。


 私は、改札を通って、ホームに向かった。


 電車を待ちながら、さっきのことを思い返した。


 佐藤くん、震えながらも、私の前に立ってくれた。


 いつもは頼りない後輩だけど、あの時は……。


「でも、ちょっとドキッとしちゃったな」


 私は、小さく呟いた。


 電車に乗って、窓の外を見た。


 佐藤くんは、きっとまだ駅にいるだろう。


 ちゃんと、私が電車に乗るのを見届けてから、帰るつもりなんだろう。


 不器用だけど、優しい。


 そんな佐藤くんを、少しだけ見直した。


 家に帰って、シャワーを浴びた。


 ベッドに横になると、また佐藤くんのことを思い出した。


「俺、男だから」


 そのセリフが、妙に頭に残っている。


 でも、恋愛とかそういうのじゃない。


 ただ、嬉しかった。


 守ってもらえたことが。


 私は、いつも一人で何でもできる。


 強いし、冷静だし。


 でも、たまには誰かに守ってもらうのも、悪くない。


 そんなことを思いながら、私は眠りについた。


 明日、会社で佐藤くんに会ったら、何を話そうか。


 いつも通り、普通に接すればいい。


 でも、少しだけ、優しくしてあげよう。


 そう決めて、私は静かな夜を過ごした。


(第23話 おわり)

第23話、いかがでしたでしょうか。

佐藤くん、かっこよかったですね!

震えながらも、守ろうとする姿。

「俺、男だから」

この不器用なセリフが、グッときました。

でも、恋愛フラグが立つわけではなく、

微妙な距離感。

それが、この物語らしいと思います。

次回、第24話はひより視点。

水曜日、まだがむしゃらに営業を続けるひより。

ついに、ある気づきを得て…

第24話もお楽しみに。

最後まで読んでくださって、

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ