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【OLふたり、今日も明日も】  作者: 桜餅 詩音


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22/40

第22話「がむしゃらな月曜日」

第22話は、ひより視点です。

今回は、ひよりの葛藤を描きます。

桜井の件は解決した。

でも、心は晴れない。

だから、がむしゃらに動く。

立ち止まったら、崩れそうだから。

でも、それは本当の解決じゃない。

「何かから逃げてるの?」

この言葉が、心に刺さる。

ひよりの、これからの成長に繋がる、

大切な一日です。

それでは、第22話をお楽しみください。

 月曜日の朝。私は、いつもより少し早く会社に着いた。


 昨日、澪さんとランチを食べて、少しだけ元気になった。


 今週は、頑張ろう。


 そう思って、デスクに座った時、課長が声をかけてきた。


「朝比奈、ちょっといいか」


「はい」


 私は、課長の席に向かった。


「今朝、桜井拓也から連絡があった」


 その名前を聞いて、私の身体が固まった。


「桜井さん……」


「ああ。本人から直接、謝罪の電話があった」


 課長は、真剣な顔で言った。


「『先日は本当に申し訳ありませんでした。朝比奈様に取り返しのつかないことをしてしまいました』と」


「……」


「それから、自分の会社にも報告したそうだ。そして、今日付で退職すると」


 私は、何も言えなかった。


「朝比奈、これは大きな問題だ。場合によっては、被害届を出すこともできる」


「被害届……」


「ああ。お前が被害を受けたことは事実だ。会社としても、全面的にバックアップする」


 課長の言葉が、優しかった。


「どうする?」


 私は、少し考えた。


 桜井さんは、もう退職する。


 それで、十分なんじゃないだろうか。


「課長、被害届は出しません」


「本当にいいのか?」


「はい。桜井さんは、もう十分に制裁を受けたと思います」


 私は、課長の目を見た。


「それに、私も未熟でした。もっとちゃんと見極める力があれば、こんなことにはならなかったかもしれない」


「朝比奈……」


「だから、これは私にとっても勉強です。次は、もっとちゃんとやります」


 課長は、少し目を細めた。


「分かった。お前がそう言うなら、会社もそれに従う」


「ありがとうございます」


「でも、朝比奈。今日は無理しなくていいぞ。ゆっくり休んでもいい」


「いえ、大丈夫です。営業に出ます」


「本当にいいのか?」


「はい。前を向きたいんです」


 課長は、頷いた。


「分かった。頑張れよ」


「はい!」


 私は、デスクに戻って、営業の準備をした。


 今日は、新規顧客の開拓に行こう。


 飛び込み営業。


 断られることも多いけど、でも、それでいい。


 今は、動いていたい。


 午前中、私は五件の会社を回った。


 全部、門前払いだった。


「うちは間に合ってますから」


「今、忙しいので」


「また今度にしてください」


 冷たい言葉ばかり。


 でも、私は諦めなかった。


 午後も、続けた。


 六件目。


「何度も来られても困るんですよ!」


 怒られた。


 七件目。


「しつこいですね。帰ってください」


 冷たく言われた。


 八件目。


「もう来ないでください」


 完全に拒絶された。


 私は、必死すぎたんだと思う。


 でも、止まれなかった。


 夕方。もう五時を回っている。


 あと一件だけ、チャレンジしよう。


 私は、最後の会社のドアを開けた。


「すみません、朝比奈と申します。お時間いただけますでしょうか」


 受付の女性が、困った顔をした。


「アポイントはありますか?」


「いえ、飛び込みで申し訳ありません。でも、少しだけでも……」


「申し訳ありませんが、アポなしの方は……」


「お願いします! 少しだけでも!」


 私の声が、少し大きくなった。


 その時、奥から男性が出てきた。


 五十代くらいの、落ち着いた雰囲気の人。


「どうしました?」


「あの、飛び込みの営業の方が……」


「ああ、そう」


 男性は、私を見た。


「少しだけ、お話しします。こちらへどうぞ」


「え、本当ですか! ありがとうございます!」


 私は、応接室に案内された。


 男性は、椅子に座って、私を見た。


「それで、どんなご用件ですか?」


 私は、準備していた資料を広げた。


「弊社は食品を扱っておりまして……」


「ちょっと待って」


 男性は、私の言葉を遮った。


「あなた、何かから逃げてるの?」


「え……?」


 私は、固まった。


「あなたの目、見てたら分かるよ。心に余裕がない」


 男性は、優しい声で言った。


「営業って、焦ってやるものじゃない。お客さんと向き合うものでしょ?」


「それは……」


「でも、あなたは今、自分と向き合ってない。何かから逃げてる」


 男性の言葉が、胸に刺さった。


「時には、自分と向き合うことも大事だよ」


「……」


 私は、何も言えなかった。


「今日は、もう帰りなさい。ゆっくり休んで、また明日頑張ればいい」


「はい……」


 私は、頭を下げて、会社を出た。


 外は、もう暗くなっていた。


 駅に向かう道を、一人で歩く。


 今日の成果は、散々だった。


 一件も取れなかった。


 怒られて、冷たくされて、拒絶されて。


 そして、最後には核心を突かれた。


 何かから逃げてる。


 そうなのかな。


 私は、何から逃げてるんだろう。


 分からない。


 でも、何かがおかしいことは、確かだ。


「あーあ……上手くいかないなぁ」


 私は、小さく呟いた。


 夜空を見上げると、星が少しだけ見えた。


 明日は、どうしよう。


 また、がむしゃらに営業するのか。


 それとも、立ち止まって考えるのか。


 今は、まだ分からない。


 ただ、疲れた。


 とても、疲れた。


 電車に乗って、家に帰った。


 ベッドに倒れ込んで、目を閉じた。


 明日、また頑張ろう。


 そう思いながら、私は眠りについた。


(第22話 おわり)

第22話、いかがでしたでしょうか。

ひよりの葛藤、感じていただけましたか?

がむしゃらに動くことで、空回り。

上手くいくばかりが人生じゃない。

まだ答えは出ていない。

ひよりは、これからどうするのか。

次回、第23話は澪の視点。

火曜日、仕事帰りに一人で飲んで帰ることにした澪は…

第23話もお楽しみに。

最後まで読んでくださって、

ありがとうございました。

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