第20話「氷の復讐」
第20話は、澪の視点です。
今回は、復讐の物語。
でも、ただの暴力ではありません。
澪らしく、冷静に、理詰めで。
そして、最後は…
澪の新しい一面、かっこいい一面を、
存分に楽しんでいただけると思います。
スカッとする展開です。
それでは、第20話をお楽しみください。
土曜日の朝。私は、いつもより早く起きた。
今日は、やるべきことがある。
昨日、ひよりの部署で聞いた話。
桜井拓也という男が、ひよりを騙して、傷つけた。
許せない。
私は、ひよりの課長から桜井の会社の情報を聞き出していた。
桜井が働いているレストランチェーンの本社。
そこに、今日は土曜日だが、桜井は出勤するらしい。
私は、準備をした。
シンプルな白いブラウスに、黒いパンツ。
髪をきれいにまとめる。
化粧は、少し濃いめに。
鏡を見て、微笑んでみる。
完璧。
午前10時。私は、桜井の会社の前に立っていた。
ビルの入り口が見える位置で、カフェに入った。
窓際の席に座って、待つ。
11時。
11時半。
正午。
ビルから、人が出てくる。
昼休み。
そして、桜井拓也が出てきた。
事前に聞いていた特徴通り。背が高くて、爽やかそうな顔。
でも、私には吐き気がする。
私は、カフェを出て、桜井の後をつけた。
桜井は、近くの定食屋に入った。
私も、少し間を置いて入る。
店内は、サラリーマンで混んでいた。
桜井は、カウンター席に座った。
私は、桜井の隣の席が空くのを待った。
数分後、隣が空いた。
「すみません、お隣いいですか?」
私は、可愛らしい笑顔で声をかけた。
桜井は、私を見て、目を輝かせた。
「ああ、どうぞ」
「ありがとうございます」
私は、隣に座った。
定食を注文して、何気ない会話を始めた。
「お仕事ですか?」
「ああ、そう。休みなのに出勤でさ」
「大変ですね」
「まあね。でも、こうやって素敵な人と会えるなら、悪くないかな」
桜井は、私を口説き始めた。
気持ち悪い。
でも、私は笑顔を保った。
「お上手ですね」
「本当だよ。君、すごく綺麗だし。連絡先、交換しない?」
「そうですね……」
私は、笑顔を消した。
そして、桜井を見た。
氷のような目で。
「女の敵ね。クズが……」
桜井の顔が、固まった。
「え……?」
「朝比奈ひより。覚えてる?」
桜井の顔色が、変わった。
「あ、あれは……」
「黙って」
私は、冷たく言った。
「あなた、最低ね。契約をちらつかせて女性を騙して、ホテルに連れ込もうとした」
「ちょ、ちょっと……」
「まだ喋るの? 耳が悪いのかしら」
私は、桜井に一切口を挟ませなかった。
「あなたがしたことは、準強制わいせつ未遂に該当するわ。訴えられたら、どうなるか分かってる?」
「そんな……俺は……」
「黙りなさい」
私の声は、静かだけど、圧倒的だった。
「ひよりは、真面目に仕事をしていただけ。あなたを信じていた。なのに、あなたは彼女を利用して、傷つけた」
「でも、あいつだって……」
「あいつ?」
私の目が、さらに冷たくなった。
「彼女の名前は、朝比奈ひより。ちゃんと名前で呼びなさい」
桜井は、黙った。
「あなたに、選択肢を与えるわ」
私は、桜井の目を見た。
「月曜日の朝までに、自分の会社と、ひよりの会社、両方に本当のことを話して謝罪しなさい。そして、辞表を出しなさい」
「なっ……! 何言ってんだ、お前!」
桜井の声が、荒くなった。
「ふざけんな! 辞表なんて出すわけないだろ!」
「じゃあ、警察に行くわ」
「警察? 証拠もないのに?」
「ひよりが録音してるかもしれないわよ。ホテルでのやり取り、全部」
桜井の顔が、青ざめた。
実際、録音はしていない。でも、桜井は知らない。
「それに、あなたの会社には、私の友人がいるの。あなたの評判、聞いたわ。他にも何人か、同じことしてるんでしょ?」
これも、嘘だ。でも、桜井の表情を見れば、当たっていることが分かる。
「お、おい……」
「月曜日の朝まで。それまでに何もしなければ、もっと取り返しのつかない後悔をさせてあげるわ」
私は、氷のように冷たい目で桜井を見つめた。
「じゃあ、ごちそうさま」
私は、会計を済ませて、店を出た。
外に出ると、秋の風が心地よかった。
やるべきことは、やった。
あとは、桜井がどう動くか。
私は、駅に向かって歩き始めた。
その時、後ろから足音が聞こえた。
振り返ると、桜井が走ってきていた。
「待てよ!」
私は、冷静に歩き続けた。
人通りの少ない路地に入る。
わざと。
桜井は、後ろから私の肩を掴んだ。
「ふざけんな! お前、何様だよ!」
私は、振り返った。
「何様? ひよりの友人よ」
「調子に乗るなよ!」
桜井は、私の腕を掴んで引っ張った。
その瞬間。
私は、桜井の腕を取った。
そのまま、身体を捻る。
桜井の胸に思いっきり自分の肩をぶつけ、掌底を一発。
そのまま手首を返し、投げ飛ばした。
桜井の身体が、ふわりと浮いた。
そして、地面に叩きつけられた。
「がっ……!」
桜井は、呻いた。
私は、倒れた桜井の顔面に、もう一度掌底を打ち込もうとした。
でも、寸止め。
数センチ手前で、止めた。
「力でなら勝てると思った? とことんクズね……」
私は、立ち上がった。
桜井は、地面で息を荒くしている。
「私ね、昔 合気道やってたの。有段者よ」
桜井は、何も言えなかった。
「月曜日の朝、楽しみにしてるわ」
私は、桜井を見下ろして、去った。
駅まで歩きながら、私は深呼吸をした。
久しぶりに、合気道の技を使った。
身体が、まだ覚えていてよかった。
家に帰って、シャワーを浴びた。
それから、携帯を取り出した。
ひよりに電話する。
「もしもし、ひより?」
『澪さん!』
「昨日、金曜日恒例の飲み、やってないから、明日ランチ行かない?」
『え? いいの?』
「もちろん。美味しいもの、食べに行きましょう」
『ありがとう、澪さん!』
ひよりの声が、少し明るくなった気がした。
「じゃあ、明日ね」
『うん!』
電話を切って、私はソファに座った。
これで、いい。
月曜日、桜井がどう動くか。
もし何もしなければ、私はもっと厳しい手段を取る。
でも、きっと桜井は動くだろう。
あの怯えた顔を見れば、分かる。
私は、窓の外を見た。
青い空。
ひよりは、傷ついた。
でも、もう大丈夫。
私が、守るから。
そう決めて、私は穏やかな週末を過ごした。
第20話、いかがでしたでしょうか。
スカッとしましたか?
澪、めちゃくちゃかっこよかったですね!
「女の敵ね。クズが...」
この名言、痺れました。
そして、合気道の設定!
澪、実は強かったんですね。
冷静に、でも容赦なく。
友達を傷つけた相手を、
完膚なきまでに追い詰める。
それが、霧島澪という女性です。
最後、ひよりに優しく電話する澪。
この対比も、素敵でしたね。
次回、第21話は日曜日。二人でランチに行きます。思い出の場所で、二人の絆を確認する、温かい物語。辛い出来事の後だからこそ、この優しさが染みる。第21話です。
第21話もお楽しみに。
最後まで読んでくださって、
ありがとうございました。




