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【OLふたり、今日も明日も】  作者: 桜餅 詩音


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18/40

第18話「騙された心」

第18話は、ひより視点です。

今回は、かなり辛い内容です。

ひよりが騙され、傷つく物語。

読んでいて辛いかもしれません。

でも、これも現実にあることです。

そして、ひよりが成長するために、

必要な試練だと思っています。

辛い展開ですが、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

ひよりを、見守ってあげてください。

それでは、第18話をお楽しみください。

木曜日の朝。営業部の会議で、課長が言った。


「朝比奈、例の大口案件、進んでるか?」


「はい。先方の担当者とアポを取りました」


「よし。あの案件、取れたら大きいぞ」


課長は、ニヤリと笑った。


「朝比奈、お前は若いし、可愛いからな。その武器を使え」


私は、少し戸惑った。


「武器……ですか?」


「ああ。先方の担当者、独身の男だろ? お前が近づけば、イチコロだ」


周りの先輩たちも、笑っている。


「頑張れよ、朝比奈」


「は、はい……」


私は、複雑な気持ちで会議室を出た。


可愛いから、近づけ。


それって、仕事なのかな。


でも、会社はそういうものなのかもしれない。


私は、気持ちを切り替えて、アポの準備をした。


先方の担当者は、桜井拓也さん。三十代前半。


新しいレストランチェーンの仕入れ責任者。


この案件が取れれば、大きな取引になる。


午後、桜井さんとカフェで会った。


「初めまして、朝比奈です」


「桜井です。よろしく」


桜井さんは、爽やかな笑顔で握手をしてくれた。


背が高くて、清潔感がある。


話していると、とても優しい人だった。


「朝比奈さん、営業何年目?」


「三年目です」


「若いのに、しっかりしてるね」


「ありがとうございます」


私は、準備してきた提案を説明した。


桜井さんは、興味深そうに聞いてくれた。


「なるほど。いい提案だね」


「本当ですか!」


「ああ。でも、すぐには決められない。もう少し詳しく聞きたいな」


「はい、もちろんです!」


「じゃあ、また来週会える?」


「はい!」


その日から、私は桜井さんと何度も会った。


最初は仕事の話だったけど、だんだんプライベートな話も増えていった。


「朝比奈さん、グルメ好きなんだね」


「はい! 美味しいお店探すの、趣味なんです!」


「俺もだよ。今度、いいお店教えてよ」


「いいですよ!」


桜井さんは、いつも優しかった。


私の話を真剣に聞いてくれて、笑ってくれて。


仕事の相談にも、親身に乗ってくれた。


「朝比奈さん、頑張ってるね」


「ありがとうございます」


「俺、朝比奈さんみたいな人、応援したくなるんだよね」


その言葉が、嬉しかった。


会社は「可愛いから近づけ」って言うけど、私は純粋に桜井さんと話すのが楽しかった。


そして、気づいたら、私は桜井さんのことを考えている時間が増えていた。


仕事中も、帰り道も、家にいる時も。


これって……好きになってるのかな。


でも、これは仕事。


契約を取るために、近づいてるだけ。


そう言い聞かせても、心はドキドキしていた。


ある日、課長が私を呼んだ。


「朝比奈、あの案件どうなった?」


「順調です。来週、最終的な返事をもらえる予定です」


「よし。分かってるよな? 契約を取るためだぞ」


「はい……」


「お前が可愛いから、向こうも期待してるんだ。頑張れよ」


私は、モヤモヤした気持ちで会社を出た。


契約を取るため。


それだけなのに、私は桜井さんを好きになってしまった。


これって、ダメだよね。


仕事なのに。


木曜日の夜、桜井さんから連絡が来た。


『明日、最終的な話をしよう。夜、会えるかな?』


私は、ドキドキしながら返事をした。


『はい、大丈夫です!』


明日。


契約が取れるかもしれない。


そして……桜井さんと、もっと近づけるかもしれない。


そんな期待を胸に、私は眠りについた。


翌日、金曜日。


私は、指定された場所に向かった。


駅前の高級レストラン。


桜井さんは、すでに席に座っていた。


「遅れてごめんなさい」


「大丈夫。座って」


桜井さんは、笑顔で迎えてくれた。


「朝比奈さん、今日はゆっくり話せるね」


「はい」


ワインが運ばれてきた。


私は、緊張しながらグラスを傾けた。


「それで……契約の件ですけど……」


「ああ、それね。前向きに考えてるよ」


「本当ですか!」


「うん。でも、もうちょっとゆっくり話したいな」


桜井さんは、私の目を見つめた。


「実は、この近くにいいホテル予約してあるんだ」


私の心臓が、ドキッとした。


「ホテル……ですか?」


「うん。静かに話せるから。朝比奈さん、来てくれるよね?」


私は、迷った。


ホテルって……それって……。


でも、契約の話をするなら……。


それに、桜井さんのこと、好きになりかけてるし……。


「あの……」


「大丈夫。変なことしないから。ただ、ゆっくり話したいだけ」


桜井さんは、優しく笑った。


私は、頷いた。


「……分かりました」


レストランを出て、近くのホテルに向かった。


エレベーターに乗る時、ドキドキが止まらなかった。


部屋に入ると、夜景が綺麗に見える広い部屋だった。


「綺麗な部屋ですね」


「だろ? 座ってよ」


私は、ソファに座った。


桜井さんも、隣に座った。


近い。


「それで……契約の話……」


「ああ、その前に」


桜井さんは、私の肩に手を回した。


「ちょ、ちょっと……」


「いいじゃん。朝比奈さん、分かってたでしょ?」


桜井さんの目が、さっきと全然違う。


「え……?」


「やっと二人きりになれたね」


桜井さんの手が、私の腰に回る。


「や、やめてください!」


私は、立ち上がった。


「何怒ってるの? 朝比奈さんだって、そのつもりでついてきたんでしょ?」


「違います! 契約の話を……」


「契約?」


桜井さんは、笑った。


「ああ、あれね。実はもう他のところと決まってるんだ」


私の血の気が引いた。


「え……?」


「最初から、契約する気なんてなかったよ。でも、朝比奈さんが可愛かったから、つい遊んじゃった」


「そんな……」


桜井さんは、ニヤニヤしている。


「せっかくホテルまで来たんだし」


「やめてください!」


 私は、ドアに向かって走った。


「おい、待てよ!」


桜井さんが、腕を掴んできた。


「離して!!!」


私は、振りほどいて、ドアを開けた。


廊下に飛び出して、エレベーターに乗った。


桜井さんは、追ってこなかった。


エレベーターの中で、私は震えていた。


怖かった。


危なかった。


もう少しで……。


ホテルを出て、私は走った。


駅まで走って、電車に乗った。


外は、もう暗かった。


涙が、溢れてきた。


騙された。


利用された。


遊ばれた。


そして、危ない目に遭いそうになった。


私、馬鹿だ。


好きになりかけてたのに。


本気で、いい人だと思ってたのに。


全部、嘘だった。


しかも、ホテルまでついて行ってしまった。


もし、あのまま……。


考えるだけで、怖くなった。


私は、駅のホームで、一人で泣いた。


電車に乗っても、涙が止まらなかった。


身体が、まだ震えている。


家に帰って、ベッドに倒れ込んだ。


澪さんに、電話しようと思った。


でも、できなかった。


こんな恥ずかしいこと、言えない。


騙された自分が、情けない。


ホテルまで行ってしまった自分が、馬鹿だった。


私は、枕に顔を埋めて、泣き続けた。


明日、会社に行ったら、何て報告すればいいんだろう。


課長に、何て言われるんだろう。


全部、私が馬鹿だったから。


可愛いから近づけって言われて、その通りにして。


でも、本気になって。


そして、ホテルまでついて行って。


全部、私が悪い。


私が、甘かった。


そんなことを考えながら、私は長い夜を過ごした。


怖くて、悔しくて、悲しくて。


でも、誰にも言えない。


一人で、抱え込むしかない。


これが、大人になるってことなのかな。


そんなことを思いながら、私はようやく眠りについた。

第18話、いかがでしたでしょうか。

辛かったですね...。

ひよりが傷つく姿、見ていて苦しかったと思います。

でも、これは大切な物語です。

騙されること。

信じた相手に裏切られること。

それは、とても辛いことです。

ひよりは、まだ若くて、純粋です。

だからこそ、傷つきやすい。

でも、大丈夫。

次回、第19話では、ひよりを支える人たちが現れます。金曜日、会社での出来事。そして、仕事中に現れる澪さん。ひよりは一人じゃない。そのことを、感じていただける第19話です。

第19話もお楽しみに。

最後まで読んでくださって、

ありがとうございました。

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