表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【OLふたり、今日も明日も】  作者: 桜餅 詩音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/40

第16話「駅のホームで」

第16話は、ひより視点です。

今回は、駅での出来事。

人が倒れている。

でも、誰も助けない。

そんな冷たい光景に、ひよりは迷わず行動します。

正義感と優しさ。

それが、ひよりの魅力です。

ひよりの優しさを感じていただけたら嬉しいです。

それでは、第16話をお楽しみください。

火曜日の夕方。仕事を終えて、私は駅に向かった。


今日も一日、よく働いた。


明日も頑張ろう。


そんなことを考えながら、駅の階段を上がっていた。


その時、上の方でザワザワと騒がしい声が聞こえた。


「誰か倒れてる!」


「大丈夫ですか!?」


人だかりができている。


私は、急いで階段を駆け上がった。


ホームの端に、初老の男性が倒れていた。


周りには野次馬がたくさんいるけど、誰も近づこうとしない。


スマホで写真を撮っている人までいる。


私は、迷わず駆け寄った。


「大丈夫ですか!」


男性は、意識があるようだったが、顔色が悪い。


額に汗をかいている。


「救急車! 誰か救急車呼んでください!」


私は、周りに向かって叫んだ。


駅員さんが駆けつけてきた。


「すぐに救急車を呼びます!」


「お願いします!」


私は、男性の側に膝をついた。


「大丈夫ですよ。すぐに救急車が来ますからね」


男性は、弱々しく頷いた。


「すみません……」


「謝らないでください。今は楽にしててください」


数分後、救急車が到着した。


救急隊員が、男性を担架に乗せる。


「ご家族の方ですか?」


「いえ、通りがかりで……」


「そうですか。でも、付き添っていただけますか?ご本人、意識はありますが、念のため」


「はい、わかりました」


私は、救急車に乗り込んだ。


病院に着くと、すぐに男性は処置室に運ばれた。


私は、待合室で待った。


三十分ほどして、看護師さんが出てきた。


「意識は戻りました。大事には至らないと思います」


「よかった……」


私は、胸を撫で下ろした。


「ご家族に連絡を取っています。到着まで、少しお時間がかかるそうです」


「わかりました。それまで、私が付き添います」


「ありがとうございます」


処置室に案内されると、男性はベッドに横たわっていた。


でも、さっきよりずっと顔色がいい。


「あの……大丈夫ですか?」


男性は、私を見て微笑んだ。


「ありがとうございます。助けていただいて」


「いえ、当然のことですから」


「いや、周りの人は誰も……」


男性は、少し寂しそうに笑った。


「でも、あなたは助けてくれた。本当にありがとう」


「元気になってくださいね。栄養のあるもの食べて」


「ああ、そうですね」


「あっ、そうだ! レバーなんて栄養満点でいいですよ! 鉄分たっぷりだし!」


「レバー……」


「あと、納豆も! 納豆は毎日食べた方がいいです! 発酵食品は身体にいいですから!」


私は、熱く語り始めた。


「そういえば、この前、すっごく美味しい焼き鳥屋さんに行ったんですよ。そこのレバー、臭みが全然なくて、ふわふわで!」


「へえ、それは美味しそうだ」


「でしょ! それでね、その後にハツも頼んだんですけど、これがまたコリコリで……」


気づけば、私は自分の好きな食べ物の話をずっとしていた。


男性は、優しく頷きながら聞いてくれている。


「あ、あれ……ごめんなさい、私ばっかり喋っちゃって……」


「いやいや、楽しかったですよ。元気が出ました」


男性は、本当に嬉しそうに笑った。


「あなた、食べることが好きなんですね」


「はい! 大好きです! 食べることと、美味しいお店を探すのが趣味で!」


「いいですね。人生、楽しまなきゃ」


「そうですよね!」


それから、しばらく他愛もない話をした。


男性は、昔は営業の仕事をしていたこと。


今は引退して、のんびり暮らしていること。


でも、時々身体の調子が悪くなること。


私も、自分の仕事のこと、趣味のことを話した。


そうしているうちに、病室のドアが開いた。


「お父さん!」


六十代くらいの女性が、駆け込んできた。奥さんだろう。


「大丈夫? 心配したのよ!」


「ああ、もう大丈夫だ。この方が助けてくれたんだ」


奥さんは、私の方を向いた。


「本当にありがとうございました!」


「いえ、大したことはしてないです」


「いえいえ、病院の方から聞きました。救急車も呼んでくださって、ここまで付き添ってくださって……」


奥さんは、深く頭を下げた。


「本当に、ありがとうございました」


「いえ、当然のことですから」


私は、少し照れくさくなった。


男性が、ベッドから声をかけてきた。


「あなたのおかげで、元気が出ました。ありがとう」


「こちらこそ、お話いっぱい聞いていただいて、ありがとうございました!」


私は、笑顔で答えた。


「じゃあ、私はこれで」


「本当に、ありがとうございました」


奥さんが、もう一度頭を下げた。


私は、病室を出た。


病院の外に出ると、もう夜だった。


空には、星が少しだけ見える。


私は、深呼吸をした。


よかった。


あの人、無事で。


でも、なんだか胸が締め付けられるような気持ちもあった。


周りに人がたくさんいたのに、誰も助けようとしなかった。


みんな、他人事だったんだ。


もし、私が通りかからなかったら……。


そんなことを考えると、怖くなった。


でも、助けられてよかった。


私は、再び駅に向かって歩き始めた。


澪さんに、この話をしようかと思った。


でも、やめた。


なんとなく、一人で胸に刻んでおきたい気がした。


この出来事を。


この気持ちを。


誰かに話して、慰めてもらうんじゃなくて。


自分で、ちゃんと受け止めたい。


人を助けること。


見て見ぬふりをしないこと。


それが、どれだけ大切か。


今日、私はそれを学んだ。


だから、これは私だけの宝物にしよう。


そう決めて、私は家路についた。


家に着いて、シャワーを浴びて、簡単に夕飯を食べた。


ベッドに横になると、今日の出来事が頭の中で繰り返される。


あの男性の笑顔。


奥さんの涙。


そして、周りの冷たい視線。


全部、忘れない。


私は、もっと強くなろう。


もっと優しくなろう。


そして、困っている人がいたら、迷わず手を差し伸べられる人になろう。


そんなことを考えながら、私は眠りについた。


明日も、頑張ろう。


今日の自分より、少しだけ成長した自分でいられるように。

第16話、いかがでしたでしょうか。

ひよりの行動力と優しさ、素敵でしたね。

誰も助けない中、迷わず駆け寄る。

それって、簡単なようで難しいことです。

ひよりは、そういうことができる人。

そして、食べ物の話で盛り上がっちゃう、

そんな可愛らしさも、ひよりらしいですね。

次回、第17話は澪の視点。水曜日、珍しく外回りの仕事を任された澪。公園で出会った泣いている子供。

澪は名探偵のような推理で、その問題を解決します。

クールで論理的な澪の魅力が光る、第17話です。

第17話もお楽しみに。

最後まで読んでくださって、

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ