11-50 噴煙
急ぎ階段を降りたところで、北棟の方に近づく前から何とも慌ただしいドタバタとした騒ぎになっているのを見て、思わず一瞬足が止まってしまった。
これは想像していた騒動とは随分と違う。まるで戦場の野戦病院でも見ているかのように、どんどんとホールには肩を支えられた騎士達が入って来て、さらにどこからそんなに出てきたのかという多くの聖職者が慌ただしく走り回りながら、そこら中に薬の匂いを漂わせていた。これは一体どうしたことか。
足の踏み場に困って一瞬立ち止まってしまったけれど、ほどなく食堂側の廊下から顔を出した学友フィレンツィオがこちらに気が付いて手をあげたので、邪魔にならないよう回り道をしながらそちらに向かった。
「フィレンツ、一体これは何事なの?」
「今、アルセール先生達が北棟で調査をしています。おそらく地階の通風孔に通じるどこかで小火があり、それに燻された香草のせいで集団中毒が発生したのではないかと」
「香草?」
「まぁそのような言い方をしてはいますが、こんな症状を巻き起こすような中毒性の高い香草が、自然に存在して、都合よく、都合よい場所で燃えたりはしないと思いますが」
つまり誰かが意図的に北棟で毒草を燃やし、通風孔を通じて拡散し、この状況になっているということか。
「被害は?」
「ひとまず北棟にいた全員、特に地階から直接通風孔が通じていた一階の食堂を中心に強く意識の混濁や低迷といった被害が出ており、そこから広がる形で二階、次いで三階へと、個室の方にも薬が周り、体調不良を訴える人達が出ています。幸い、お部屋に戻られていた皇帝候補の皆様は比較的軽症です。そちらの食堂の方にお集まりですよ」
「わかったわ。ホールの病人の状況も把握出来たら、私に報告してもらえるかしら?」
「ええ、勿論です。私はいつでも、リディアーヌ殿下の忠実な僕です」
ニッコリと微笑む胡散臭い聖職者スマイルの友人を「はいはいっ」と適当に呆れた顔であしらい、聖職者が慌ただしく行き来する廊下を通り過ぎ、食堂に足を踏み入れる。
先程までの夕餐会の雰囲気とは言って、机は端に寄せられ、湯が沸かされ、傍でゴリゴリと薬が引かれ、ラモーディオ猊下が慌ただしくそんな机の間を行ったり来たりしている。真ん中には椅子が並べ置かれて、本来こちらには入れないはずの者達まで、北棟の全員がこちらに移動してきているようだった。
リディアーヌはその中でもすぐにピンと立っているダリエルの後ろ姿を見つけると、そちらに歩み寄った。ベルテセーヌの個室は三階にあるおかげか、ホールでぐったりしていた騎士達や侍従達に比べると被害はあまりなかったようだ。ダリエルの前でリュシアンが椅子に深く腰掛けているのは、足の不自由さを計らったものだろう。幸い、気分の悪そうな様子はない。
「リュス、貴方達は大丈夫そうね」
「あぁ、ディー。来たのか」
「ええ。大公達が今こちらにいないから、この場を仕切るべきなのだけれど……どうもそれどころでもないわね」
「北棟では先に二階の方で異変に気が付いた騎士達が避難誘導をかけ、つい先程、アルセール司教らが中心となって原因の調査に出向かれた。原因となる場所も見当がついているようだったから、そう時間はかからないはずだ」
なるほど、これほど早く聖職者達が動いたのは、まだ食堂に残っていたエティエンヌ猊下やサンチェーリ司教がいち早く対処してくださったからでもあったようだ。ならまだリディアーヌも出遅れたというわけではあるまい。
チラリと部屋を見渡したところで、リュシアンよりは少ししんどそうに天井を仰いでいたアルトゥールと目が合った。空気の巡りのいいところにでもいてしまったのだろうか。
「トゥーリ、貴方は大丈夫?」
「あぁ……問題ない。今は煙がどうこうより、アルセール先生に先程実験的にあれこれ詰め込まれた薬の気持ち悪さが勝っている……」
「あぁ……」
そこであえて皇帝候補の教え子を薬の効き目実験に使うだなんて、さすがはアルセール先生。目に浮かぶようである。
ひとまずラモーディオ猊下の元に歩み寄って、薬の状況や想定できる原因についての話を聞いている内に、いつもの冷静さもない様子でバタバタとラルカンジュ侯も飛び込んできた。それに続けて、他の選議卿達も集まり始めているようだ。
「公女殿下」
さらに北棟と東棟との間で差配を取っていたらしいエティエンヌ猊下とサンチェーリ司教が騎士や禁事棟管理の文官らを引き連れてやっていらした。
あちらの情報とこちらの情報とをラモーディオ猊下との間で確認し、「ではそちらの傾向で薬を煎じてみます」と猊下が奥の家事室の方に薬師たちを連れて行くと、エティエンヌ猊下は連れてきた文官らに、「選帝侯閣下方がおりませんし、この場の管理は公女殿下にお任せるするのが宜しいでしょう」と場を引き継いでくださった。有難い差配である。
「まずは猊下、素早いご対応を有難う御座います。ひとまず用いている薬とその量などについては先程ラモーディオ猊下から伺いました。そのほか、北棟からこちらに移っている人数、名簿、それから全体的な薬の残量や今までの使用状況などを教えていただけますか?」
すぐにフィリックにペンを取らせ文官達の輪の中に入って行くと、すでに質問の大半は把握できていたようで、すぐに名簿が出され、状況の確認も行い、また禁事棟の文官らの求めに応じて北棟の者達を東棟に入れて一時避難場所とすることの了承を伝え、書類を整えた。エティエンヌ猊下の許可の元すでに一度緊急として立ち入りが許されていたようだが、リディアーヌの方で書類的なものも整え、後ほど選帝侯達からの許可を取る形にする。
できることならすぐにでも選帝侯達に届けて速やかな許可をいただきたが、ここを離れるわけにもいかないか、と悩んでいたら、選議卿として中央棟に出入りできるサンチェーリ司教が「私が行ってまいります」とすぐに引き受けてくださった。
ついでに、こちらでの事件の報告と、またマクシミリアンがいたら戻って欲しいと伝言することも頼んだ。大公達は状況によっては会議を続けるかもしれないが、こちらを仕切るのにもう一人、味方の差配役を置いておきたい。
「公女殿下、どのようなご様子でしょうか」
一番不安なのは薬の残量だ、という話をしていたところで、ひとまず自分達の王の状況を確認したラルカンジュ侯、それを追いかける形でコランティーヌ夫人も歩み寄って来た。どうやらラルカンジュ侯は公女であるこちらを立てた態度を取って下さったようだ。
リディアーヌはそんな二人を迎え入れると、さらにチラチラっと辺りを見回し、ロイタネン伯らと共にぐったりしているリヴァイアン殿下を気遣っていたレヴェイヨン侯を呼び寄せた。見たところ、ウィクトル公子やギャロワ侯、シンブラン伯らは不在だ。なのでギュスターブ派には声をかけなかったことになるが問題はあるまい。ひとまず他の四派閥には等しく集まってもらった形だ。
「幸い、大司教様方がいち早く動いて下さり助かりましたわ。今アルセール司教が北棟の調査に当たっているとのことです。まだ原因は判明していませんが、症状から緑の襟の猊下や司教様方が薬を選び、ひとまず応急処置となるものを隣の小家事室で一括して煎じていただいております。準備が整い次第薬師様方に処方に当たっていただきますが、皆々様、薬を巡る争いや奪い合いが無いよう、家門と派閥の監督と牽制をお願いいたします。それから別途特定の症状が出ている方への薬はそこの机で調薬に当たり、個別の対応をしていただきます。薬の差配と管理はラモーディオ猊下を窓口とすることで聖職者側との確認をとっています。ただ被害に対して薬の量が乏しく、不安もあります。もし家門内で所有しているものがあれば提出にご協力をいただきたいです」
「現在必要としているものは以下の三種類、特に上の二つはあればあるだけいいですな」
リディアーヌに続けてエティエンヌ猊下が具体的な要求を補ってくださる。
今ここで教会薬師の資格を保有しているのは、エティエンヌ猊下とラモーディオ猊下、サンチェーリ司教、アンジェッロ司教、そして書記官としてここにいるはずのアルセール先生だけだ。中央棟にいるドレンツィン大司教も資格を持っていたと思うが不在である。あとはフィレンツィオを始め、助祭の中に何人か薬師見習いの課程を経ている者がいるらしい。
「このほか、緑の襟の猊下方の担当配置はどうなっていますか?」
「北棟の調査を最も中立的な立場にあるアルセール司教に仕切ってもらい、私が患者全体の確認と管理を。薬の管理と調剤の指揮にはラモーディオ閣下。アンジェッロ司教は早急に対処が必要そうな重症患者の治療の差配に当たってもらっております。実際の投薬は薬師見習いの資格を持っている者達に指示を出させて当たります」
エティエンヌ猊下からのそうした情報を共有したところで、後々の報告と薬の消費などを管理するためにも、薬師見習いから何人か記録を並行する者も出してほしいと要求した。幸い、北棟からは各皇帝候補についてきた文官達もいるので、記録を取るのは難しくはないだろう。
あとは適宜、この秩序だっていない場の状況をまとめるのが最優先か。
「顔の広いラルカンジュ侯やコランティーヌ夫人におかれましては、各家門への状況の説明と協力の呼びかけ、それから状況がはっきりするまで、騒がずに待つことの呼びかけをお願いできますか? どなたか様に任せていただいてもかまいません。それから、このようなことが起きた以上、警備体制への懸念があります」
「ええ、同意します。どうしますか? いっそ部屋から出ないようになどといたしますか?」
「ラルカンジュ侯はどう思われます?」
先程マクシミリアンに“秘事”を囁いた貴方ならどうしますか、という問いだ。
今二人の頭の中にあるのはおそらく同じ人物だ。だが北棟の地階に潜り込み、一歩間違えれば自分もまきこまれるような毒を焚くようなこそこそとした行為は、どうにもギュスターブらしくない。だとしたらそれ以外の問題、あるいは協力者の存在を危惧せねばならない。
敵が分からない上、すでに不特定多数が北棟で被害に遭った以上、特定の人物だけが警戒していればいいような状況でもなくなった。それが分かっているラルカンジュ侯も一つ眉をしかめたのち、「もはや分散しておく方が危険でしょうか」と考え込む。リディアーヌも同意見だ。
「ひとまずホールとこちらの食堂の周りに選議卿、皇帝候補とも、集めることを提案いたしますが、いかがでしょうか。気分のいいことではないかもしれませんが、互いへの監視にもなりますし、少なくとも北棟の調査が終わるまでは統率を取っておくべきかと」
「ええ、公女殿下のご意見に賛同いたします」
すぐに頷いたコランティーヌ夫人に続いてラルカンジュ侯とレヴェイヨン侯も頷くと、ちょうど扉からマクシミリアンとパトリックが揃って飛び込んできた。姿が見えないと思っていたら、パトリックはどうやらお養父様の方に連れて行かれていたらしい。
「リディ、どういう状況?」
「ひとまず最低限の方針は定めたから、後で説明するわ。ミリム、大公様方は何と?」
「サンチェーリ司教からこちらの統率は猊下らとリディが受け持っていると聞いたから、ひとまずこちらは任せると仰せつかって来た」
「ヘイツブルグ大公閣下のご様子は?」
「特に。私も気になったのだけれど、ただ目を閉じて腕を組んで静かに聞いておられるだけだった。ちょっとアチラの会議は揉めているみたいだ。あと教皇聖下も立ち会っておられるから、小聖堂は今誰もいない状況だよ」
大公達の話し合いは長引きそうだ。だが聖下含め、ひとまず大公達が重要人物が一所にいてくれるのは悪くなかろう。中央棟付の騎士達が全員付いているはずなので警備上も安心できる。問題はやはり顔も名前も知らない者も大勢が詰めかけているこの東棟であろう。
「コランティーヌ夫人、ウィクトル公子らがどちらにいらっしゃるかはご存じですか?」
「そういえば見ておりませんわね。まったく……おそらく部屋の方でしょう。すぐに呼びにやらせます」
「極力、選議卿は集めておきましょう。ラルカンジュ侯もザクセオンの皆様に。レヴェイヨン侯はお手数だけれど、ダグナブリク家の方にもお声をかけていただけるかしら?」
「かしこまりました」
「聖職者はすでに皆集まっていますが……いや。そういえば一人。カラマーイ司教が見当たりませんな」
エティエンヌ猊下の言葉に、リディアーヌは頭を抱えて沈黙した。カラマーイとかいう名のうちの放蕩司教は、そもそもこの選帝議会が始まってこの方、本会議以外でほとんど見かけていない。日頃から一体どこで何をしているのか全く分からない司教なのだ。むしろ教会側の人達の方が生活スペースが近いので、まだ見かけている率は高いはずであるが。
「一応、探させはしましょう」
「お願いします……」
そう頼んだところで、共有するべき情報についても確認し、一度解散した。
選議卿をすべて集めておくべきとなったので、サリニャック侯も呼び寄せねばならない。だがケーリックを鳥の管理から動かすことも出来ないので、どうしたものか。
「フィリック、サリニャック侯に声をかけてきてちょうだい。それから急ぎケーリックの鳥小屋を向かい側の貴方の部屋の寝室に移設させて、フランカとパラメア妃、ランデル卿もそちらの書斎に移らせ、出歩かず、一所にいるようにしてちょうだい。キルシュ卿は引き続き私達の部屋がある側の廊下の警戒に当たらせて。エリオットはこっちに残すわ」
「……分かりました」
フィリックの部屋に鳥小屋を移築すると言ったせいか、一瞬躊躇があった気がしたけれど、どうせ最後の夜である今夜はろくに眠れたものでも無かろうと思ったのか、首肯したフィリックはくれぐれもエリオットから離れないよう言いおいてから一度部屋を出ていった。
同じように各家門に伝達がなされてゆく中で、記録係として呼ばれたらしいフィレンツィオ含む薬師見習いが三人ほど集まったので、ホールの方の記録をマクシミリアンに任せ、リディアーヌの方はこちらの部屋の中の記録を取らせるべく見て回った。
ついでに北棟との通用路の方も見に行ったのだが、禁事棟の騎士がしっかりと出入口を閉ざして守っており、また多少こちらのホールには乱雑な治療の跡の乱れが残っていたものの、すでに患者もはけて閑散となっている様子などを確認しておいた。
この場の騎士達にも情報の共有と警戒の方針などを伝えたところで、ちょうど北棟から厳重に口を覆い、分厚い布に覆われた何かを手にしたアルセール先生が何人かの修道士を連れて戻って来た。
通用路の先にリディアーヌがいるのを見ると、先生はすぐに近づてこないよう手で制してから、通用路の方で羽織っていた上着を脱いでパタパタと丁寧に身の回りを払い、いそぎ東棟側から駆け寄った修道士から受け取った水で手を清め、しっかりと毒素を落としてから入って来て、さらに通用路の扉もしっかりと閉めさせた。
どうやらあまり看過できない類の薬が焚かれていたようだ。
「アルセール先生、お話しをお伺いしても大丈夫ですか?」
「ええ、お待たせしました。念のため、少し距離を取っておいてください。まだ煙が纏わり付いているかもしれません」
本当ならすぐに着替えに行かせてやるべきかもしれない。なのでひとまず最低限だけ情報を聞いてしまおうと、離れたまま簡単な報告だけを求めた。
「まず薬が焚かれていたのは地階の家事室でした。食堂に通じており、そこから暖炉や通風孔を通じて三階まで吹き抜けている、頒布効果の高い場所です。北棟の構造をよく理解していて選んだような場所に思われます。それから焚かれていた薬については、まだこれから解析しますが、おそらくリゼット系ではないかと」
「……リゼット」
それは二年前にもリディアーヌがリンテンで被害を受けた、フォンクラークなど西大陸南部に流通している薬ではなかっただろうか。
リゼット系でも物によっては聖地でも栽培され麻酔薬として用いられるというが、アルセール先生がすぐに薬の名前を断定しなかったということは、教会の薬園栽培種ではない、南部の固有種である可能性が高いということだ。
まだ決め付けはしないが、アルセール先生の様子を見ても出所としてはフォンクラークやセトーナのような南部の国を想定しているのではなかろうか。
「薬の処方は現在の指示通りで変わりありませんか?」
「ええ、ひとまず禁事棟で手に入るものとしてはこれ以上はないでしょう。ただ薬の相性には個人差もありますし、持病がある者には予想外の症状を併発させることもあります。重傷者などは目を離さず処置に当たりたいです」
「分かりました。この近くの部屋を治療室として整えさせます。ただ薬の方は鎮痛薬のバフが随分と心もとないと、ラモーディオ猊下が」
「……分かりました。症状を見て重傷者を優先的に。それから別の薬での補薬を試してみましょう」
「猊下に在庫分と各家門から提供できる薬のリストを渡してあります。確認してください」
そう淡々と告げたつもりだったが、そう聞いたアルセール先生はクスと笑みを浮かべると、「頼もしいですね」と口を挟んだ。相変わらず、教え子の成長を微笑ましく見ているかのような面差しである。ちょっと恥ずかしい。
「こほんっ……えっと。それから思いのほか、二階への煙の上がりが深かったようです。二階におられたアブラーン殿下やリヴァイアン殿下の様子も心配です。アブラーン殿下はそんなに辛そうにはなさっていませんでしたが、リヴァイアン殿下の容体が心配です」
「リゼット系となるとセトーナのアブラーン殿下には自然と耐性がついていたのかもしれませんね。リヴァイアン殿下はすぐに診察いたしましょう。ただ……ほかの皇帝候補の方々との関係性と言いますか、問題と言いますか。優先順位を付けることに問題ありませんか?」
「ええ。その手の揉め事は起こさないよう、選議卿らにも言い含めます。他の皇帝候補達もそう噛みつくタイプではないですし。それに皆もリヴァイアン殿下のことは心配しております」
「分かりました。ではそうさせていただきましょう」
すぐにでも、と頷いて急ぎ隣の応接間に向かうアルセール先生を見送り、リディアーヌは食堂の方に引き返しながら、着いて来ていた文官らに食堂やホールから近く物が少ない応接間を中心に病室を整えるよう指示を出した。あまり居場所を広く分散させたくはないので、食堂やホールの方にもどんどんと建具やカーテンを出して敷居として、集まった人達がバラバラと好き勝手に周囲の応接間などに分散しないよう呼び掛けてもらう。
すぐにも応接室の方で煙に触れた衣類などを改めたらしいアルセール先生達も食堂に入って来て、さっと見渡したかと思うとすぐにリヴァイアン殿下の方に向かい、横になれる敷物を用意するよう指示した。やはり専門家の目から見ても様子が芳しくなかったようだ。
邪魔にならないよう、その場にいたラルカンジュ侯やコランティーヌ夫人らにもこの情報を共有して、彼らの手も借りながら名簿と本人の照合や病室の設置などを差配してゆく。
派閥が違ってもこうしてやるべき事にちゃんと従ってくれる彼らの存在はとても有難い。あまりいい顔をしない者もいないわけではなかったが、人たらしなマクシミリアンが上手くその気にさせてくれるので、特に大きな問題が起きることもなく、なんとか薬師様達による処置も始めることができた。




