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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
第23層との交渉

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第99話「怖いままで聞く」

議長への署名交渉は、ウォリック議員が担当することになった。


 俺は待った。


 ゴブへの通信で、バインから「代表者会議で合意が取れた」という連絡が入った。


「全員か」と俺は聞いた。


「全員ではありません。百七十体中、代表者が九十三体分の同意を持ってきました。反対が二十一体、保留が残り。ただし、反対の理由のほとんどは「まだ外の状況がわからない」というものです」


「わからないからまだ決められない、という意味か」


「そうです。反対、というより「判断を保留している」という方が正確です」


「保留の者たちへの対応は」


「「行き来できる道ができたら、来て確認できる」と伝えると、保留のまま合意する者が増えるかもしれないと思っています」


「道ができてから確認すればいい、ということだ」


「そうです。道を作ること自体には反対していない。ただ、戻ることへの判断は保留したい」


「わかった。バインとゴブが代表として署名する形でいいか確認してほしい」


「確認します」



 



 二日後、ウォリック議員から「議長が話を聞くと言っている」という連絡が来た。


 俺は議事堂へ行った。


 議長室は三階の奥だった。


 議長は六十代の白髪の人物で、議場で俺を見たときと、表情が違った。場の前ではなく、一対一の場での顔だった。


「アシダ・レン殿か」


「はい」


「ウォリックから話を聞いた。署名の件だ」


「そうです」


「一つ、聞いていいか」


「どうぞ」


「この署名は——何を意味するのか」


「迷宮と外界を繋ぐ安定した経路の設計に、王国が合意する、という意味です」


「合意した後、王国は何をするのか」


「道を守ることです。一方的に閉じない。知性体が来たとき、攻撃しない。行き来が安全にできるよう、管理する」


「それは——義務か」


「義務というより、約束です。スキルの仕様上、合意が崩れると道は閉じます」


「つまり——守らなければ、道がなくなる」


「そうです」


 議長が少し考えた。


「強制力があるわけではないが、約束を守らないと損をする仕組みだ」


「そういうことです」


「……「聞かないと損」と同じ考え方だな」


 俺は少し止まった。


「ウォリックから聞きました」と議長が言った。「あなたがそういう考え方をしている、と」


「そうですか」


「面白い考え方だ。強制ではなく、損得で動かす」


「強制は続かないです。損得なら、自分の意志で続けられる」



 



 議長が書類に署名したのは、その日の夕方だった。


 カーラが「これで全員分揃ったか」と確認した。


「ウォリック議員が動いてくれました」


「……あの人が、ここまで動くとは思っていませんでした」


「怖いままで動いてくれた、ということだと思います」


「怖いまま?」


「俺の言葉を、そのまま使ったのかもしれない。「怖くなくなってから動こうと思っていた。でも、怖いままでも動けるのかもしれない」と言っていた」


「……そうですか」


 カーラがスキルを見た。


 俺もスキルを見た。


 【迷宮管理Lv.7:通路設計——全当事者合意確認済み。設計可能状態に移行】

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