第97話「反対派議員との対話」
ウォリック議員の執務室は、議事堂の三階にあった。
俺が「話を聞かせてください」と申し入れると、一日置いて「来い」という返事が来た。
扉を開けると、ウォリック議員が机の前に座っていた。書類を読んでいた。俺が入っても、すぐには顔を上げなかった。
一分ほど待った。
ウォルリック議員が顔を上げた。
「座れ」
「はい」
「何の話だ」
「通路設計の話です。迷宮と外をつなぐ安定した経路を作る。その合意を取りたい」
「今日の来訪の目的が、それか」
「はい。ただし——合意の前に、何か聞きたいことがあれば、まずそれを聞かせてください」
ウォリック議員が少し眉を上げた。
「……珍しいことを言う。普通は説得から入る」
「聞く前に話しても意味がないです」
「なぜ」
「聞かないと、何が引っかかっているかわからない。引っかかりが残ったまま合意しても、後で問題になる」
ウォリック議員がしばらく俺を見た。
「……なぜ、私に声をかけた」
「反対派のまとめ役だからです。あなたが合意すれば、委員会を実質的に動かせる」
「お世辞には聞こえないが——」
「お世辞ではありません。反対した理由がある人間が合意した方が、賛成しか知らない人間の合意より重い」
「……なるほど」
「一つだけ聞かせてくれ」とウォリック議員が言った。
「どうぞ」
「私に、なぜ話を聞きに来た」
俺は少し考えた。
「あなたが「証明できないではないか」と言ったからです」
「どういう意味だ」
「「ありえない」とは言わなかった。「証明できないではないか」と言った。その言い方は——証明できれば、可能性を検討する余地があるという意味だと受け取りました」
ウォリック議員が少しの間、口を開かなかった。
「……それを拾ったのか」
「拾いました」
「私自身、そういうつもりで言ったかどうか——わからない。ただ反論したかっただけかもしれない」
「わかりません。でも、俺には可能性として届きました」
「……そうか」




