第91話「採決の後で」
採決の結果は、賛成二十九、反対十七、棄権四だった。
「封印維持への協力」を検討する専門委員会の設置が可決された。
補償案の可決より、差が縮まっていた。
議場を出た後、カーラが「可決です」と言った。声は静かだった。
「意外でしたか」と俺は聞いた。
「……反対が十七というのは、意外でした。もっと多いかと思っていた」
「俺も同じです」
「ヴォルトの声が、効いたのかもしれません」
「そうだと思います」
廊下に出ると、カイルが来た。
「どうだった」とカイルが聞いた。
「可決」と俺は答えた。
「そうか。ヴォルトの声が頭に直接届いたとき——俺も驚いた。あれは、何だったんだ」
「ヴォルトの意志の伝達方法だと思う。言語が違っても、意志は届く」
「ゴブが議場で証言したときとは、違う種類の驚きだった。ゴブは言葉で届けた。ヴォルトは——言葉の前の何かで届けた」
「そうだ」
「どちらの方が、効いたと思う」
「両方必要だったと思います」と俺は答えた。
カイルが「なるほど」と言った。
その夜、問題が起きた。
俺がヴォルトとの接続を切った後、カーラから通信が来た。
「一点、お知らせがあります」
「何ですか」
「本日の採決の後、反対派議員の数名が集まっています。詳細はわかりませんが——委員会の設置を骨抜きにしようとしている可能性があります」
「骨抜きとは」
「委員会の権限を制限する、人員を固める、あるいは——別の手段で「ヴォルトとの協力」自体を無効化しようとする動きです」
「どう対処しますか」
「一人ひとりに話を聞きに行くしかないと思っています。ただ——」
カーラが少し間を置いた。
「アシダ殿、あなたも同じ目で見られますよ」
「どういう意味ですか」
「本日の採決で反対票を入れた議員たちの一部は、今後あなたのことを「魔物に肩入れしている人間」と見なす可能性があります。王国内での立場が——難しくなるかもしれない」
俺は「そうですか」と言った。
「……それを聞いて、どう思いますか」
「別にいいです」
「なぜそんなに平気なのですか」とカーラが言った。




