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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
第23層との交渉

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第90話「罠と言われて」

「罠だ」という声に、議場がまたざわめいた。


 俺はヴォルトに「聞こえたか」と念じた。


「聞こえた」


「何と答える」


 少し間があった。


 それから、議場の空気がまた変わった。


 ヴォルトの「意志」が届いた。


 言語ではないが、意味としては届いた。


 「——罠を張るなら、こんな場所は選ばない」


 今度は、音ではなかった。


 概念として、直接頭に届く。


 俺だけではなく——議場の全員に。


 議員たちの顔が、一斉に変わった。驚き、戸惑い、恐怖——様々な反応があった。でも共通していたのは、「今、自分の頭の中に何かが届いた」という体験をした顔だ。


 「罠だ」と言った傍聴席の人間も、黙った。



 



 ヴォルトが続けた。


「——私はここにいる。お前たちが「脅威」と呼んでいたものが、ここにいる。しかし——話しに来た。聞く用意があるなら、話す」


 今度は言葉に近かった。翻訳精度が上がっているのか、ヴォルト自身がこちらの言語に近づけてきているのか——わからないが、意味が届いていた。


 議場が静まり返っていた。


 俺はカーラを見た。カーラが前を向いたまま、わずかに頷いた。


「発言の機会をいただけますか」と俺は議長に向かって言った。


 議長が少し間を置いた。


「……許可します」



 



「ヴォルトは罠を使っていません」と俺は言った。


「証拠は」


「今、全員が「頭に直接届く声」を聞きました。それが罠なら、俺が一人で演じることはできない。俺には、そのような能力がない」


「スキルを使えば」


「俺のスキルは「迷宮管理」です。人を惑わす能力は含まれていない。管理局でスキルの検査を受けてもらっても構いません」


 ウォリック議員が立ち上がった。


「一点、確認させてほしい」


「どうぞ」


「ヴォルト——と呼ぶものは、今、どこにいるか」


「第七迷宮の第23層に、繋がっています。物理的には移動していません。スキルを通じて接続しています」


「物理的には移動していない」


「そうです」


「つまり——今ここに「いる」のではなく「繋がっている」という状態か」


「正確に言えば、そうです」


 ウォリック議員が少し考えた。


「ヴォルトに、直接聞いてもいいか」


「どうぞ」


 ウォリック議員が議場に向かって言った。


「お前が「外から来た」というのは事実か」


 ヴォルトの概念が届いた。


「——事実だ。この世界の「外」から来た。選んで来たのではない。来るしかなかった」


「なぜ、来るしかなかったのか」


 長い間があった。


「——帰る場所がなくなった。だから来た」


 ウォリック議員が腕を組んだ。


 それから——腕を解いた。


「……採決を取ります」と議長が静かに言った。

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