表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
第23層との交渉

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/170

第89話「ヴォルトの王都」

ヴォルトが王都に現れたのは、議会の開催三十分前だった。


 「現れた」と言っても、物理的な姿はない。


 俺が議場の前廊下でスキルを展開した瞬間、ヴォルトが繋がってきた。


「ここが王都か」


「そうだ」


「狭い」


「第23層より狭い」


「狭いが——にぎやかだ」


 ヴォルトが何かを感じ取っているらしかった。人間の気配を感じているのかもしれない。


「今日、議員という人間たちにお前の声を届けたい。可能か」


「試みる。ただし——」


「ただし」


「私の声を聞けるかどうかは、聞く側の問題だ。私はスキルを持たない。お前を通じて話す」


「俺が翻訳する形になるか」


「そうなるかもしれない。ただ——」


 スキルが少し変化した。


 【迷宮管理Lv.7:ヴォルトとの接続——翻訳精度:七十一パーセント——外部出力試行中】


「外部出力試行中」


「何か変わったか」とヴォルトが言った。


「スキルが、お前の声を外に出そうとしているみたいだ」


「それは良い」


「議員たちが直接聞けるかもしれない。でも、どう届くかわからない」


「やってみるしかない」


「そうだ」



 



 議場に入った。


 今回は三十人より多い。緊急召集ではなく、正式な召集だった。五十人近い議員。傍聴席にも人が入っている。


 カイルが前の方の席に座っていた。護衛のつもりなのか、あるいは証人のつもりなのか。入場したとき、軽く目が合った。


 俺が演台の前に立った。


 カーラが「本日の議題を説明します」と言った。


 説明が終わる前に、傍聴席の一人が声を上げた。


「また「魔物」を連れてきたのか」


 俺は演台の前から、声の方向を見た。


 ヴォルトは「物理的な姿」がない。見えていない。でも気配は——ある。俺のスキルが展開されているときの、空気の変化。それを感じ取った人間が何人かいるようだった。


「本日は「第23層の主」ヴォルトに発言してもらいます」


「どこにいる」


「スキルを通じて繋がっています。聞こえる形になれば、直接声が届きます」


「信用できない」という声が、どこかから来た。



 



 ヴォルトに「話してくれ」と念じた。


 スキルが変化した。


 そして——議場に、音が響いた。


 音、というよりも、振動に近い。空気全体が揺れる。遠い雷が近づいてくるような。


 議員たちが一斉に静まった。


 ヴォルトの声が、届いていた。


 言葉ではなかった。言語ではなかった。


 でも——「意志」として伝わっていた。


 「私はここにいる」という意志が、議場全体に広がった。


 誰も声を上げなかった。


 カイルが俺を見た。


 俺はカイルに小さく頷いた。


 それから、傍聴席の方向から声が聞こえた。


「これは罠だ。何かを使って人を惑わせているだけだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ