第88話「証拠の連れ込み」
ヴォルトを王都に連れていく、という計画を立てた。
正確には「連れていく」ではなく「スキル越しに繋ぐ」だ。俺のスキルを中継点として、ヴォルトの声を議場に届ける。
問題はいくつかあった。
まず、スキルの接続を議場の中で維持できるかどうか。俺が第七迷宮にいるとき、第七迷宮のデータが入ってくる。王都の議場でヴォルトと繋がれるかどうかは——試してみないとわからない。
次に、ヴォルトの声を「第三者にも聞こえる形」で届けられるかどうか。これまでは俺だけが受け取っていた。議員たちが直接聞けるなら話が早い。無理なら、俺が中継して翻訳する形になる。
「ゴブのときより難易度が高いですね」とカーラが言った。
「そうです」と俺は答えた。「ゴブは物理的にそこにいた。ヴォルトは——どこにいるかも正確にはわかっていない」
「リスクを教えてください」
「スキルの負荷がどのぐらいになるか、わからない。接続が途中で切れた場合、再接続できるかどうかわからない。また、ヴォルトの声を他者が直接聞けない場合、俺の翻訳が「作り話」と思われる可能性がある」
「それに対する対策は」
「カイルに先行してもらいます」
カイルに通信を入れた。
「王都に来られるか」
『第四迷宮のナハトがいる。離れていいか判断がつかない』
「ナハトに聞いてくれ」
しばらく間があった。
『ナハトが「行け。また戻ってきてくれればいい」と言った』
「ナハトが、そう言えるようになったのか」
『俺が「また来る」と約束したら、「わかった。行け」と言った。なんか——俺が「また来る」と言えるようになったのが、昨日まで想像できなかった』
「来るつもりがあるんだな」
『ある。思ったより、ここが——なんというか、いい場所だった』
「第四迷宮が?」
『いい場所、という言い方も違うが。俺の言葉が届く、という感じがする。初めてだった』
「そうか」
『レン、一つだけ聞かせてくれ』
「何だ」
『ヴォルトを王都に連れていくのは——危険か』
「わからない。でも、やらないより、やった方がいい」
『お前が言うと、なんか信用できる』
「なぜだ」
『「わからない」と正直に言うから』
カイルが王都に向かうことになった。
出発の前日、カイルからまた通信が来た。
『ナハトが——「今度こそ、俺を信じてみる」と言ってた』
「ナハトがカイルを信じる、ということか」
『俺に「また戻ってきてくれるか」と聞いてきた。「来る」と言ったら「なら行け」と言った。その顔が——なんか、ゴブに似てた気がした』
「待てる顔をしていたか」
『そうだ。「俺は待てる」という顔だった。俺はそれを見て——』
「何を思った」
『今度こそ、信じてみる、と思った。俺の方が』




