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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
第23層との交渉

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第88話「証拠の連れ込み」

ヴォルトを王都に連れていく、という計画を立てた。


 正確には「連れていく」ではなく「スキル越しに繋ぐ」だ。俺のスキルを中継点として、ヴォルトの声を議場に届ける。


 問題はいくつかあった。


 まず、スキルの接続を議場の中で維持できるかどうか。俺が第七迷宮にいるとき、第七迷宮のデータが入ってくる。王都の議場でヴォルトと繋がれるかどうかは——試してみないとわからない。


 次に、ヴォルトの声を「第三者にも聞こえる形」で届けられるかどうか。これまでは俺だけが受け取っていた。議員たちが直接聞けるなら話が早い。無理なら、俺が中継して翻訳する形になる。


「ゴブのときより難易度が高いですね」とカーラが言った。


「そうです」と俺は答えた。「ゴブは物理的にそこにいた。ヴォルトは——どこにいるかも正確にはわかっていない」


「リスクを教えてください」


「スキルの負荷がどのぐらいになるか、わからない。接続が途中で切れた場合、再接続できるかどうかわからない。また、ヴォルトの声を他者が直接聞けない場合、俺の翻訳が「作り話」と思われる可能性がある」


「それに対する対策は」


「カイルに先行してもらいます」



 



 カイルに通信を入れた。


「王都に来られるか」


『第四迷宮のナハトがいる。離れていいか判断がつかない』


「ナハトに聞いてくれ」


 しばらく間があった。


『ナハトが「行け。また戻ってきてくれればいい」と言った』


「ナハトが、そう言えるようになったのか」


『俺が「また来る」と約束したら、「わかった。行け」と言った。なんか——俺が「また来る」と言えるようになったのが、昨日まで想像できなかった』


「来るつもりがあるんだな」


『ある。思ったより、ここが——なんというか、いい場所だった』


「第四迷宮が?」


『いい場所、という言い方も違うが。俺の言葉が届く、という感じがする。初めてだった』


「そうか」


『レン、一つだけ聞かせてくれ』


「何だ」


『ヴォルトを王都に連れていくのは——危険か』


「わからない。でも、やらないより、やった方がいい」


『お前が言うと、なんか信用できる』


「なぜだ」


『「わからない」と正直に言うから』



 



 カイルが王都に向かうことになった。


 出発の前日、カイルからまた通信が来た。


『ナハトが——「今度こそ、俺を信じてみる」と言ってた』


「ナハトがカイルを信じる、ということか」


『俺に「また戻ってきてくれるか」と聞いてきた。「来る」と言ったら「なら行け」と言った。その顔が——なんか、ゴブに似てた気がした』


「待てる顔をしていたか」


『そうだ。「俺は待てる」という顔だった。俺はそれを見て——』


「何を思った」


『今度こそ、信じてみる、と思った。俺の方が』

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