第87話「王国への報告」
カーラが翌日、議会への緊急報告を設定した。
俺は同席を求められた。ゴブは王都に連れていかない、とカーラと合意した。代わりに、通信で繋いでおく。
議会の場は、前回より小さかった。緊急召集のため、全員は揃っていない。三十人程度。それでも、前回の顔が多い。ウォリック議員もいた。
カーラが説明した。俺が補足した。
「封印が弱まっている」
「外から押してくるものがいる」
「協力が必要だ」
反応は、予想通りだった。
誰も信じなかった。
「証拠を見せろ」
ウォリック議員が言った。今回は感情的ではなく、静かな口調だった。
「スキルのデータがあります」と俺は言った。
「迷宮管理スキルのデータは、以前も提示した。今回は——それ以上のものを見せられるか」
「ヴォルト本人に来てもらうことを検討しています」
「ヴォルトというのは」
「第23層の主の名前です。先日、スキル経由で対話しました」
議場がざわめいた。
「第23層の主と対話した、というのが事実なら——その「主」は、確かに存在する知性体です」
「証明できないではないか。スキルのデータは一人の人間が持っている情報だ」
「そうです。だから本人を連れてくることを検討しています」
「連れてこられるか」
「聞いてみます」
議場の後で、カーラと廊下に出た。
「反応は想定内でしたか」とカーラが聞いた。
「だいたい」と俺は言った。「「証拠を見せろ」は予測していた」
「ウォリック議員が「証明できないではないか」と言ったのは——実はいいサインかもしれません」
「どういう意味ですか」
「感情的に「ありえない」と言わなかった。「証明できないではないか」という問いは——証明できれば信じる可能性がある、ということです」
「なるほど」と俺は思った。
「ヴォルトは、王都に来られますか」とカーラが聞いた。
「再接続して聞いてみます。ただし、ヴォルトが第23層から物理的に移動できるかどうか——わかりません」
「もし物理的に無理なら、別の方法がありますか」
「スキルを通じて、議場に「声」を届けることができるかもしれない。俺が中継する形で」
「それは——議員たちが信じるでしょうか」
「信じない可能性が高い。でも、やらないよりはいい」
「根拠は?」
「聞かないと損だからです」
カーラが小さく笑った。
「あなたはいつでもそれを言いますね」
「他に言えることがないです」
その夜、ヴォルトに再接続した。
「王都に来られるか」と聞いた。
「王都、とは」
「人間が集まる場所だ。中心地。そこで、お前の話を人間に聞かせてほしい」
長い間があった。
「……行ける」
「本当に行けるか」
「私は——第23層に「いる」のではない。第23層に「繋がっている」だけだ。スキルで接続できているなら、別の場所でも同じことができるはずだ」
「つまり、俺のスキルを使えば——王都でも話せる」
「そうだ。お前がいれば、どこでも話せる」




