第79話「増えている意味」
スキルの表示を見た。
【迷宮管理Lv.7:観測範囲拡張——第四迷宮・部分接続検出。カイル・ベルグの行動域と連動】
「カイル」
『何だ』
「お前が第四迷宮にいる間、俺のスキルに第四迷宮のデータが入り始めている」
『本当か』
「本当だ。スキルが「カイルの行動域と連動」と言っている」
『それは——どういう意味だ』
「俺のスキルは「迷宮管理」だ。管理している迷宮のデータが入る。でも、お前が第四迷宮で動いていることで、俺の管轄がそこまで広がっているかもしれない」
『俺は迷宮管理スキルを持っていないのに?』
「持っていないが——「聞く」ということをやり始めた。それがスキルに影響しているのかもしれない」
カイルがしばらく黙った。
『……よくわからないが、役に立っているなら、それでいいか』
「そうだ」
第四迷宮のデータを見た。
【第四迷宮第23層類似区域——影の活動パターン検出。移動速度:低。パターン:不規則(発信型)】
「発信型」
ゴブが「どういう意味だ」と聞いた。
「アレが何かを発信している、という意味だ。移動しながら信号を出している」
「誰かに向けて?」
「わからない。でも、方向性はある」
俺はデータをもう少し読んだ。
「北方向に向かっている」
「北というのは、王都の方向か」
「そうだ」
「王都に向かっているのか、アレが」
「まだそうとは言えない。ただ、方向として北が多い」
ゴブが「やばい」と言った。
「まあ、一旦考える」と俺は言った。
増えているのか、移動しているのか、最初から複数いたのか。
俺はその問いを整理しようとした。
第七迷宮のアレは「封印の守り手」だった。封印しているものから逃げるために上に来た。
第四迷宮では、ナハトが「下から来るものがいる」と言った。
「下から来る」とは——封印の内側から来ている、ということかもしれない。
封印していたものが——動き始めた?
あるいは——アレ自身が、封印を越えようとしている?
「ゴブ、一つ聞いていいか」
「何だ」
「第七迷宮のアレは——第23層で何かを封印していた。その「何か」が何なのか、話していたか」
「話していない。アレはそれを「外から来たもの」とだけ言っていた。名前は知らないと」
「外から来た、というのは」
「世界の外から。迷宮の外でも、王国の外でもなく——「この世界」の外から」
俺は少し止まった。
「世界の外から来たものを、迷宮の知性体たちが封印していた」
「そういうことだ」
「それが、各地の迷宮で同時に動き始めている」
「……そういうことになるのか」
スキルが動いた。
【迷宮管理Lv.7:第七迷宮第23層——封印透過度、上昇中。現在値:三十七パーセント】
三十七パーセント。
「ゴブ」
「何だ」
「第七迷宮の第23層の封印が、三十七パーセント透過している」
「百パーセントになったら、どうなる」
「突破される」
ゴブが「いつなる」と聞いた。
「わからない。でも、上がり続けている」
その夜、スキルがまた動いた。
数値ではなく、表示が変わった。
【迷宮管理Lv.7:第23層——接触可能状態に移行しました】
俺は少し止まった。
「接触可能」。
アレと、話せるかもしれない。




