↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
副司令と新しい戦場

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
66/315

第66話「弟子候補」

カイルから返事が来たのは、翌々日だった。


 管理局の廊下で俺を見つけて、「行く」と言った。それだけだった。


「わかった」


「条件がある」


「聞く」


「第七迷宮に行った後、俺が「やれない」と判断したら、その場で戻る。引き留めない」


「わかった」


「あと、訓練みたいなことはしないでくれ。普通に仕事をしてるところを見せてくれれば、それでいい」


「わかった。その方が俺も助かる」


 カイルが少し顔をしかめた。


「お前、師匠みたいな顔をするなよ」


「してない」


「してる。自覚がないだけで」


 俺は「そうか」と言った。



 



 出発は三日後と決めた。


 ゴブは先に第七迷宮に帰る必要があった。残留組の状態確認と、バインへの報告がある。


「カーラさんと話したか」と俺は聞いた。


「昨日、少し話した」とゴブが言った。


「村の代表者との対話の件は」


「来月まで待ってくれるそうだ。その間に、残留組の適応を終わらせる」


「バインは」


「バインは「できる」と言ってた。あの人は「できます」しか言わないな」


「できない、と言ったことはあったか」


「一回もない」


「それは、頼もしい」


「そうなのか。俺には少し怖い」


 俺は「バインが「できません」と言ったときの方が、状況は深刻だ」と思った。



 



 ゴブが出発する前夜、二人でしばらく話した。


「議場は、怖かったか」とゴブが聞いてきた。


「少し」


「俺はかなり怖かった。ウォリックというやつが立ち上がったとき、足がすくんだ」


「よく話せた」


「アシダが横にいたので」


「俺はただ横にいるだけだった」


「それが大事なんだ」とゴブは言った。


 俺は何も言わなかった。


「一人でいたら、俺は固まってた。でも横に誰かいると、固まりきれない。不思議だ」


「固まりきれない、というのはいい表現だな」


「本当のことだ。言葉が出てきたのも、固まりきれなかったからだと思う」


 ゴブがしばらく黙ってから言った。


「来月、また会えるか」


「来月は、村代表との対話があるから行く」


「北部の老女が来るやつか」


「そうだ」


「怖い」


「そうだろうな」


「でも行く」


「わかった」


 ゴブが「アシダ」と言った。


「何だ」


「手を叩いてくれるの、忘れるなよ」


「忘れない」


「本当だな」


「本当だ」


 ゴブが少しだけ、安心したような顔をした。



 



 翌朝、ゴブが幌馬車で出発した。


 馬車が見えなくなった後、カイルが隣に来た。


「ゴブって、意外と普通だな」


「普通だ」


「あんな小さいのに、議場で話したのか」


「台座に乗っていた」


「……そうか」


 カイルがしばらく、馬車が消えた方向を見ていた。


「一つだけ聞かせてくれ」


「どうぞ」


「なぜお前は聞けるんだ」


 俺は少し考えた。


「聞いてみたいと思うからだ。何が入ってるかわからないから」


「何が入ってるか、というのは」


「話の中に、必ず何か大事なことがある。何かはわからないけど、あるのだけはわかる。だから聞く。聞かないと、それを逃す」


 カイルがしばらく黙った。


「……俺は今まで、聞く前に答えを持ってた気がする」


「多分そうだ」


「それで損したことがあるか、と聞かれたら——あったような気がする。でも気づかなかった」


「気づいたなら、今日からやり直せる」


「お前みたいなことを言うな」


「言った」


「わかってる」


 第七迷宮からゴブの緊急通信が入ったのは、その夜のことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。