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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
墓場の門

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第6話「同期が来た」

カイルたちが前哨基地の前に現れたのは、俺が報告書を送った三日後だった。


 五人パーティー。カイルを含む同期の冒険者たち。全員Cランク昇格試験の最中らしく、装備は新品で目が輝いていた。


「レン! お前ここにいたのか!」


 カイルが馬から降りながら言った。驚いた顔をしていた。驚いた顔の中に、少しだけ「やっぱりこんなところに」という色があった。俺には見えた。


「仕事中だ」


「お前が仕事してるのか、これが」


 カイルが前哨基地を見渡した。廃墟同然の小屋。荒れた土地。扉一枚。


「門番だからな」


「……大変だな」


「そうでもない」


 カイルの後ろに、四人の同期がいた。女が二人、男が二人。全員がCランク試験中——第七迷宮の5層まで到達して生還する、というのが課題らしい。


「第七迷宮に挑むのか」


「そう。レンのいる迷宮だ。なんか情報持ってたりする?」


 俺はスキルを起動した。


【第七迷宮 1〜5層 現在状況】

1層:ゴブリン×14、スライム×8 ——通常

2層:コボルト×22 ——通常

3層:ゴブリンシャーマン×3(ヴァルたちの残党)——非戦闘状態

4層:オーク×7 ——やや活性化

5層:リザードマン×12 ——活性化中


 活性化中。


「5層のリザードマンが活性化している。今日は入らない方がいい」


「……なんでそれがわかるんだ」


「スキルだ」


「迷宮管理だっけ。Cランク試験なんだぞ、止めるな」


「止めていない。情報を伝えた。判断はお前たちがする」


 カイルが仲間と顔を見合わせた。


「……どのくらい危ない?」


「5層で全滅する可能性がある。3層か4層で引き返せば問題ない」


「それじゃ試験通らない」


「試験に落ちるのと死ぬのを比べろ」


 カイルが黙った。



 



 結局、彼らは入った。


 俺は止めなかった。大人だし、判断は彼らのものだ。


 ただスキルを起動したまま、状況を監視した。


 一時間後。


【第七迷宮 内部状況】

接触確認:人間5体(4層到達)

4層オーク:戦闘状態

人間側の状態:戦闘中(負傷あり)


 想定の範囲内だ。4層のオークとの戦闘。カイルたちの実力なら抜けられる。


 三十分後。


【人間5体:5層到達】

5層リザードマン:完全戦闘態勢

包囲形成中


 まずい。包囲形成は想定していなかった。



 



 俺は前室に走った。


「ゴブ!」


 ゴブが顔を出した。


「どうした」


「5層で人間が包囲されている。リザードマンに。助けてほしい」


「……なぜ俺たちが」


「対価を払う。後で何でも言ってくれ」


 ゴブが目を細めた。


「調停者が頭を下げている」


「下げている」


「……5層まで行ける仲間がいる。ただし」


「ただし?」


「人間に見られる。迷宮に知性体がいることが知られる」


 俺は一秒だけ考えた。


「知られてもいい。カイルたちには後で俺が話す」


 ゴブが仲間に声をかけた。迷宮語が飛び交った。


 そして前室の奥から、ゴブリン四体が走り出た。



 



 十五分後、カイルたちが戻ってきた。


 全員生きていた。ただし全員ぼろぼろで、一人は腕を吊っていた。


 そして全員が、ゴブリン四体に「護衛」されていた。


 カイルが俺を見た。


「……レン、これは」


「ゴブだ。俺の知り合いだ」


「ゴブリンが知り合い?」


「ああ」


 カイルがゴブを見た。ゴブがカイルを見た。


「……よく生きて帰ってきた」


 ゴブが人間語で言った。


 カイルの口が開いたまま、しばらく塞がらなかった。



 



 夜、焚き火を囲んだ。


 カイルたちと、ゴブたち。人間五人とゴブリン四体。


「魔物が喋る……」


 カイルがまだ信じられない顔をしていた。


「喋る魔物はいる。多くはないが」


「なんで俺たちを助けた」


 俺はゴブに目を向けた。ゴブが答えた。


「調停者が頼んだ。対価を払うと言った。それだけだ」


「調停者って——レンのことか?」


「そうだ」


 カイルがまた俺を見た。


「……お前、門番のくせに何をやっているんだ」


 俺は少し考えてから言った。


「仕事だ」


「仕事? 魔物と交渉するのが門番の仕事か?」


「そうじゃないかと思い始めている」



 



 カイルたちは翌朝帰っていった。


 出発前、カイルが俺のそばに来て言った。


「……ありがとう。助かった」


「礼はゴブに言え。動いたのはゴブたちだ」


「ゴブに礼を言っていいのか、魔物に」


「試してみろ」


 カイルは少し躊躇ってから、ゴブのところへ行った。何か短く言った。ゴブが無言で頷いた。


 それだけだった。


 でも、それで十分だと思った。



 



 馬が遠ざかってから、ゴブが俺の隣に立った。


「あれが調停者の同期か」


「そうだ」


「……悪い人間ではないな」


「悪くない。ただ世界が狭かった」


「今日、少し広くなったか」


 俺はカイルたちが消えた方向を見た。


「少しはな」


【迷宮管理 Lv.2(経験値:44/100)】



 



 ◆ 次話「第7話:グレンが本気になった」

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