表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
副司令と新しい戦場

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/75

第53話「ゴブの条件」

ゴブの条件は、三つだった。


 一つ目。「証言の場が終わったら、俺を迷宮に返すこと」。


 二つ目。「証言の内容は、俺が決める。誰かに台本を作らせない」。


 三つ目。「北部の人間と、一度話せる場を設けてほしい。議会の前ではなく、被害を受けた人間と直接に」。


 俺がそれをカーラに伝えたとき、彼女がいちばん驚いたのは三つ目だった。


「……なぜそれを」


「ゴブに聞いてください。俺も最初は意味がわからなかったので、聞きました」


「何と言ったのですか」


「「俺たちも、村の人間に怯えてた。お互いに顔を知ったほうがいい、と思った」と言いました」


 カーラは少しの間、口を開かなかった。



 



 翌日、ゴブが第十二層から通信を寄越してきた。


『残留の十八体は今日で全員、第一段階の外気適応が終わった。バインが「あと五日で移動可能」と言ってる』


「それは良かった」


『そっちはどうだ』


「カーラ副司令が、条件を全部受けると言った」


 短い沈黙。


『……全部?』


「全部だ。ただし三つ目の「直接対話」については、日取りを調整する必要がある。すぐにはできないかもしれない」


『わかった。それは待てる』


「移動の前に、一つ確認していいか」


『何だ』


「怖くないか」


 ゴブが少し間を置いた。


『怖い』


「そうか」


『でも、ドランが——』


 また間があった。


『ドランが崩落の前夜、俺に言ってた。「怖くても、話に行けばよかった」って。俺には意味がよくわからなかった。でも今はわかる気がする』


 俺は何も言わなかった。


『だから行く。怖いけど行く』


「わかった。準備が整ったら連絡してくれ」



 



 カーラはその夜、王都に戻る馬の準備をしながら、俺に聞いた。


「一つ、確認させてください」


「はい」


「ゴブは——本当に信頼できるのですか」


 俺は少し考えた。


「信頼、という言葉が何を指すかによります」


「裏切らないか、ということです」


「裏切る理由がありません。ゴブにとって、議会で証言することは、仲間のためです。俺を騙しても得るものがない」


「……でも、魔物です」


 俺は「そうですね」と答えた。


「でも、ゴブは仲間のために条件を出しました。台本を作られたくないのは、本当のことを話したいからです。北部の人間と話したいのは、怖いからです。怖いから、まず顔を知りたい」


 カーラが黙っていた。


「魔物だから信頼できないのではなく、信頼できる理由があるかどうかで判断する——俺はそうしています」


「……なるほど」


「俺も最初はそう判断できなかった。でも聞いてみたら、事情があった。まあ、それだけの話です」


 カーラは馬に乗りながら、もう一度こちらを見た。


「あなたは、本当に変わった門番ですね」


「ランク外です」


「それが、余計に」


 彼女は軽く馬の腹を蹴って、暗い道を王都に向かった。


 ゴブが「条件がある」と言ったとき、その声には怯えと覚悟が両方入っていた。


 俺はそのことを、カーラには言わなかった。


 言う必要がなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ