表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
副司令と新しい戦場

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/74

第52話「議会を止める方法」

カーラの話を最後まで聞いたのは、夜が深くなってからだった。


 北部三村落への被害補償は、三年前の溢出が原因だった。魔物が境界を越えて農地と集落を壊滅させ、二十七人が死亡、百人以上が家を失った。王国が「被害は迷宮管理の失敗によるもの」と認定すれば、補償が出る。ただしそのためには「迷宮が危険な状態でないことを認めること」と矛盾する。だから議会は動かない。


「論理が逆なんです」とカーラは言った。「補償するには危険を認める必要があり、危険を認めると対応策の失敗も認めることになる。そこで立ち往生している」


「つまり、補償の話ではなく、議会が自分の失策を認めない話だ」


「……そう、です」


 俺は少し考えた。


「安全保障の懸念を崩すには、その懸念が最初から正確ではなかったことを示せばいい」


「そうです。迷宮の知性体が脅威ではなく、むしろ封印の維持者だった——その事実を提示すれば、安全保障論は崩れる。補償の否決理由が消える」


「感情論は残るが」


「はい」とカーラは静かに言った。「でも、論理が崩れれば、次の採決で勝てる可能性がある」



 



 俺は空のコップを机に置いた。


「知性体に証言させる、ということの意味を理解していますか」


「わかっているつもりです」


「わかっていないと思います」


 カーラが顔を上げた。


「ゴブは、人語が話せます。賢い。礼儀もある。それでも、議会の場に連れていけば、半数の議員は話を聞く前に結論を出す。魔物が議場に入ってきた、それだけで思考が止まる」


「……わかっています」


「わかっていてもやると言うなら、それは覚悟の話になります」


 カーラは少し間を置いてから、答えた。


「やります」


 声に迷いはなかった。


「理由を聞いてもいいですか」


「三年間、やれることをやってきました。書類を出した、議員に頭を下げた、数字を揃えた。それでも動かなかった。残っている手段がこれしかない」


 俺は頷いた。


「ゴブに相談してみます。ただし、ゴブが嫌だと言えば終わりです」


「もちろんです」


「あと、議場の設定、移動手段、安全の確保——それはあなたが全部手配してください。俺にできるのは、ゴブを説得することだけです」


「わかりました」



 



 翌朝、ゴブへの通信を入れた。


 事情を説明すると、ゴブは少しだけ黙った。


『俺が、王都で話す?』


「そうだ。人間の議会の前で」


『……どんな人間がいる?』


「議員と呼ばれる人たちだ。偉い人たちが集まって、決定を下す場所だ」


『俺を見て逃げるか?』


「見て逃げる人間と、見て武器を持つ人間と、座ったまま怒鳴る人間と、黙って聞く人間がいると思う」


 また沈黙。


『俺は構わない。ただし——』


「条件があるか」


『ある』


 俺は「わかった、聞く」と言った。


 ゴブが言ったことを俺はその場でメモした。それをカーラに渡したとき、彼女は少し目を見開いた。


「これは……」


「ゴブの条件です」


「私の権限を超えることが含まれています」


 カーラは書かれた文字をもう一度読んだ。


「でも——」


 彼女が顔を上げた。


「やります」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ