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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
第23層の正体

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第28話「その後のこと」

三者の契約から三ヶ月が経った。


 前哨基地の周囲は、三ヶ月前とは別の場所になっていた。



 



 施設が二倍になった。


 ルーナ村との取引が公式化されて、村の経済が潤った。村人が施設の建設を手伝い、迷宮民が農作業を手伝うようになった。最初は「魔物が畑にいる」と怖がっていた老人が、今はゴブの子供に収穫の仕方を教えている。


 パトの商会が正式に「迷宮素材専門商」として登録された。月銀石だけでなく、迷宮産の薬草や鉱石も流通するようになった。価格は協議機関が管理している。ドルグが議長で、ゴブが副議長だ。会議中に二人が言い合いをして、毎回俺が調停する。


 カイルはAランク試験を一回で通過した。第七迷宮35層。スキルの情報と自分の実力を使い切った、と言っていた。今はBランクとAランクの中間で、正式な任命を待っている。



 



 エリアから手紙が来た。


「じいさんの資料の解析が終わりました。四百年分の封印研究の成果が、王国の魔法学会で発表できる形になりました。じいさんに伝えてください。名前はどうしますか」


 じいさんに聞いた。


「名前がないと言っただろ」


「学会に論文を出すには名前が必要です」


「では——アシダ・ロウでいい」


「アシダ?」


「お前の名前を借りた。世話になったから」


 俺は少し考えてから言った。


「光栄です」


「大げさだ」


「大げさじゃない」



 



 グレンから連絡があった。


「王国議会が動いた。三者の契約を国家条約として正式に批准することが決まった」


「早いですね」


「霧がいなくなった後の第七迷宮の攻略価値が再評価された。迷宮産素材の経済効果も数字が出てきた。議会が動く理由が揃った」


「つまり利益が見えたから」


「そういうことだ。正直でいいだろ」


「正直でいいです」


「ただし条件がある」


「また条件ですか」


「お前の外交官補の資格を——正式な外交官に昇格させたい」


 俺は少し考えた。


「俺はここを離れられません」


「離れなくていい。外交官として、ここに駐在する形だ」


「……十七歳の外交官というのは前例がありますか」


「ない。ただ前例のないことをやってきたのはお前の方だ」


「そうですね」


「受けるか」


「受けます」



 



 リーンが来て、任命状を渡した。


「おめでとうございます、外交官レン・アシダ」


「ありがとうございます」


「これで権限が増えます。次の交渉が楽になるはずです」


「次の交渉というのは」


「ミアが元の世界で話をして、向こうの代表と接触できる状況になっています。近々、こちらに来たいと言っているそうです」


「ミアから連絡がありました。通路を使って」


「向こうの代表との交渉が必要になります。準備を」


「わかりました」



 



 ゴブを呼んだ。


「次の話がある」


「また大きな交渉か」


「大きい。ミアの世界の代表が来る」


 ゴブが少し固まった。


「……霧の世界の代表が」


「ここに来る。迷宮の民にも同席してもらいたい。あちらの世界にも、迷宮と似た存在がいるかもしれない」


「俺たちは——また交渉の席に座るのか」


「座ってもらえるなら」


 ゴブが少し黙った。それから言った。


「……座る。慣れてきた」


「頼りになる」


「当然だ。副議長だからな」



 



 夜、スキルを起動してミアに話しかけた。


「聞こえるか」


『——聞こえる——久しぶり——』


「向こうはどうだ」


『——広い——やっぱり、ここより広かった——でも——』


「でも?」


『——寂しい——こちらには誰もいない——』


「向こうに知り合いはいないのか」


『——いない——四百年——向こうでも——長い——』


「なら来てくれ。いつでも来られる。扉は開けておく」


『——本当に——いいか——』


「いい。ここは——居場所がある人間が増えた。一人増えても困らない」


 ミアが揺れた。


『——ありがとう——レン——』


「またな」



 



【迷宮管理 Lv.5(経験値:198/???)】


 上限はまだわからない。


 次の交渉が、また経験値を積む。


 終わらない仕事だ。


 ただ——終わらなくていいと、俺は思っている。



 



 ◆ 次話「第29話:ゴブの夢」

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