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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
第23層の正体

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第27話「ミアを送り出す」

Lv.5のスキルを確認した。


【世界の扉】

異なる世界の間に一時的な通路を開く。

使用条件:当事者間の合意が成立していること。

使用回数:無制限。ただし通路の維持には調停者の意思が必要。


 一時的な通路。


 ミアが帰るための道だ。


「ミア」


『——なんだ——』


「帰る準備ができた」


 長い沈黙。


『——怖い——』


「帰るのが怖いか」


『——ここに——長くいた——元の場所に——まだ——あるか——』


 四百年。


 四百年、この世界にいた。元の世界がどうなっているか、ミア自身もわからない。


「わからない。ただ——帰って確かめる方がいい。ここにいても、あちらは変わらない」


『——そうだ——な——』


「いつでもここに来れる。扉は俺が維持する。また会える」


 ミアが長い間、揺れていた。


『——約束——か——』


「約束だ」



 



 エリアが魔法陣を完成させた。


「準備できました。調停者のスキルと、この魔法陣を同期させます。ミアが向こう側に抜ける時に、道が安定します」


「いつでもいい」


「……こんなことができると思っていなかった」


「何が」


「別の世界への扉を開くことが。理論的には知っていましたが、実際にやるとは」


「エリアなら絶対うまくやる」


「根拠は」


「今まで全部うまくやっているから」


 エリアが少し笑った。


「そういうこと言うようになりましたね、最近」


「そうか」


「初めて会った時は、もっと事務的でした」


「関係が変わったからかもしれない」



 



 全員が後退した。エリアだけが魔法陣の中央に残った。


 俺がスキルを起動した。


【世界の扉——起動】


 空間に、裂け目が生まれた。


 縦に長い、光の線。


 線が広がって、扉の形になった。


 向こう側が見えた——白い光。形がない世界。あるいは、俺には認識できない形の世界。


 ミアが動いた。


 光の体が、扉に向かって流れていった。


 扉の縁で、一度止まった。


『——レン——』


「なんだ」


『——ありがとう——』


「ゆっくり帰れ」


『——また——来る——』


「待っている」


 ミアが扉を抜けた。


 光が消えた。


 扉が閉じた。



 



 23層が、静かになった。


 四百年間、そこにいた何かが、いなくなった。


 誰も何も言わなかった。


 しばらくして、ゴブが俺の隣に来た。


「……終わったか」


「終わった」


「ミアは——帰れたのか」


「帰れた」


「また来るのか」


「そう言っていた」


 ゴブが23層の扉を見た。もう霧はない。ただの石の扉だ。


「……きれいさっぱりしているな」


「四百年分だからな」


「お前は寂しくないか」


 俺は少し考えた。


「ミアと話せる扉は維持している。また来た時に話せる。寂しいとは違う」


「俺は少し寂しい」


「なぜ」


「大きな仕事が終わった感じがする。これからは——普通になるのか」


「ならない」


「ならないか」


「契約書の第三章には迷宮の民の外界との関係が書いてある。これを実際に機能させる仕事が残っている。第四章には人間が守るべき義務がある。それを徹底させる仕事もある。第五章には調停者の継承がある」


「……それは、これからも忙しいということか」


「かなり忙しい」


 ゴブが「そうか」と言った。


「それなら——寂しくはないな」



 



 全員が地上に戻った。


 青空だった。春の空。


 グレンが俺の肩を叩いた。


「お前、十七歳だったか」


「はい」


「信じられないな」


「俺も信じられません」


 ドルグが笑った。


「俺は信じる。目の前で見たから」


 リーンが手を差し出した。


「王国として、正式に感謝します」


「ありがとうございます」


「ただし、これで終わりではありません。契約書の実施が始まります。外交官補として、引き続きよろしく」


「よろしくお願いします」



 



 カイルが俺の横に来た。


「終わったな」


「終わった」


「Aランク試験、受けてみようかと思う」


「第七迷宮35層か」


「今の俺なら行ける気がする。情報もある」


「行けると思う」


「一緒に来るか」


「俺は迷宮の入口に立っているから、戻ってきたら出迎える」


 カイルが笑った。


「門番らしい答えだ」


「門番だからな」



 



 夜、じいさんが俺に言った。


「見届けた」


「何を」


「初代が始めて、百二十年止まっていたことの続きを」


「続きはまだあります」


「知っている。ただ——始まったのを見た。それで十分だ」


 じいさんが空を見た。


「俺も少し寝る。百二十年ぶりに、心置きなく眠れる気がする」


「おやすみなさい」


「おやすみ。調停者」



 



【迷宮管理 Lv.5(経験値:0/???)】


 上限が表示されない。


 まだ先がある、ということだ。



 



 ◆ 次話「第28話:その後のこと」

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