第24話「カイルの選択」
カイルが三人を連れてきた。
全員Bランク冒険者。男二人、女一人。全員、カイルと同期か近い年齢だ。
「護衛の話があっただろ。連れてきた」
「紹介してくれ」
「マルク。剣士、Bランク。俺の同期で一番強い」
大柄な男が頷いた。無口そうだ。
「レナ。魔法使い、Bランク。制御が得意」
女性が軽く手を上げた。目が鋭い。
「ソウ。斥候、Bランク。索敵と情報収集が専門だ」
細身の男が「よろしく」と言った。
俺はゴブを呼んだ。
「ゴブ、紹介する。護衛候補たちだ」
四人が出てきたゴブを見た。ゴブが四人を見た。
マルクが剣に手をかけかけて——止めた。カイルに目配せされて、止めた。
レナが「本当に話せるんだ」と呟いた。
ソウが「情報通りだ」と手帳に何か書いた。
「確認したいことがある」
俺は四人に向かって言った。
「ここで護衛をするということは、迷宮の民と共同で動くことが増えます。それに問題がある人は、ここで断ってもらってかまいません」
沈黙。
マルクが口を開いた。
「俺は問題ない。カイルが信用しているなら信用する」
「レナは」
「魔物と一緒に仕事するのは初めてだが——」
レナがゴブを見た。ゴブが真顔で見返した。
「——まあ、やってみる」
「ソウは」
「情報が欲しい。迷宮内部の情報を提供してもらえるなら、何でもやる」
現実的だ。
「提供します」
「なら問題ない」
カイルが俺を引っ張った。少し離れた場所で、声を落として言った。
「……俺も残ろうかと思っている」
「残る、とは」
「ここに。護衛として」
俺は少し考えた。
「Bランクだと試験が続くんじゃないか」
「Aランク試験は第七迷宮の35層到達だ。ここにいた方が、むしろ近い」
「それを口実にしているだろ」
カイルが少し黙った。
「……そうかもしれない。でも、なんか——このままギルドで普通の攻略をしていると、お前のやっていることを遠くで見ているだけになる気がして」
「それの何が問題だ」
「問題じゃないけど——つまらない」
俺は少し笑った。
「そういう理由なら歓迎だ」
「本当か」
「Aランクの実力があれば護衛として頼りになる。それに——本音で話す人間は信頼できる」
カイルが照れたように頭を掻いた。
「……お前にそういうこと言われると、なんか恥ずかしいな」
「なんでだ」
「お前がいつも感情なさそうな顔をしているから」
「感情はある。ただ出し方を知らない」
「同じじゃないか」
五人の護衛が揃った。
カイル、マルク、レナ、ソウ、そしてドルグが時々来る。
施設の外に詰所を作った。ルーナ村の大工に頼んだ。また銀貨が出た。
ゴブが詰所を見て言った。
「人間がこんなに増えた」
「増えた」
「居心地は——悪くない」
「そうか」
「子供たちが人間に慣れてきた。マルクが木の棒で遊んでやっていた」
「無口な奴が子供と遊んでいるのか」
「無口だが優しい。子供はわかる」
じいさんが草案を仕上げた。
三者の契約、骨格案。全五章、二十三条。
俺が読んだ。
第一章:この世界と霧の世界の関係の定義
第二章:霧の帰還条件と手順
第三章:迷宮の民の地位と外界との関係
第四章:人間が守るべき義務
第五章:調停者の役割と継承
第五章が俺を少し止めた。
「継承?」
「調停者は一人じゃ続かない。次の世代に引き継ぐ仕組みが必要だ」
「俺がずっとやるつもりだったが」
「何十年も続くぞ。霧が帰っても、世界の窓口は必要だ。お前が老いた後も」
俺は少し考えた。
「……そうか。その話は後で考えよう」
「いつまでも十七歳ではないぞ」
「わかっています」
【迷宮管理 Lv.4(経験値:178/500)】
◆ 次話「第25話:草案を巡る攻防」




