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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
第23層の正体

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22/77

第22話「準備を始める」

三者の契約に向けて、やることを整理した。


 紙に書いた。


```

1. 霧の「本当の要求」を確認する(元の世界に帰りたいのか?)

2. 迷宮の民の代表を決める(ゴブ?ヴァル?シル?)

3. 人間側の代表を確定する(グレン+ドルグ?王国上層部が必要か?)

4. 契約の内容を草案する

5. 三者が同じ場所に立てる場所を作る

```


 五つ。


 六ヶ月で全部終わらせる。



 



 まず霧に接触した。


「聞きたいことがある」


『——なんだ——』


「元の世界に帰りたいか」


 長い沈黙。


『——帰りたい——ずっと——ここは合わない——』


「帰る方法がある。ただし、この世界との規則を決めてからでないと難しい。一緒に決めてもらえるか」


『——規則——とは——』


「どちらの世界からどちらに行けるか。何を持ち込んでいいか。いけないか。お互いが守るべきこと」


『——難しい——』


「俺が手伝う。お前が決めることは、自分に関することだけでいい」


 また長い沈黙。


『——信用して——いいのか——』


「信用していい。約束したろ」


『——わかった——任せる——』



 



 次にゴブとヴァルとシルに聞いた。


「迷宮の民の代表者を決めたい。三者の契約に参加してもらう」


 三人が顔を見合わせた。


「代表とは——誰が決めるのか」


「あなたたちが決めてください。俺が指名するものじゃない」


 しばらく迷宮語で話し合いがあった。


 ヴァルが言った。


「三人で出る。下層の代表としてゴブ、シャーマン代表として俺、上層の代表としてシルだ」


「シルは言葉が」


「俺が通訳する。ただし——シルは外見の印象が強い。人間側に、迷宮の民が多様であることを示せる」


 なるほど、政治的な計算だ。


「わかりました。三人で」



 



 グレンに手紙を送った。


「三者の契約を正式に行いたい。王国の代表として、グレン査察官とドルグ氏の二名をお願いしたい。日時は調整します。ただし——できれば王国の上層部にも知らせてほしい。この契約は、後で国家間の条約に発展する可能性があります」


 グレンの返事は五日後に来た。


「わかった。上層部への報告は俺が引き受ける。ただし——最初は極秘で進めてくれ。上が動くと話が複雑になる」



 



 場所の問題が残った。


 三者が同じ場所に立つ。人間と迷宮の民と霧が。


 霧は23層にいる。人間は地上にいる。迷宮の民は施設にいる。


 どこで行うか。


 俺は迷宮に入った。1層から23層まで。今は一人でも行ける——スキルが内部接続モードになってから、周囲の状況が筒抜けだ。魔物と鉢合わせることがない。


 23層の扉の前に立った。


 霧が薄く漏れている。


「聞こえるか」


『——聞こえる——』


「契約の場所として、23層の入口付近を使いたい。霧を一時的に抑えてもらえるか。人間が入れるくらいに」


『——できる——どのくらい——』


「半日。それで十分だ」


『——わかった——いつでも——言ってくれ——』



 



 準備が整ってきた。


 じいさんが俺を手伝い始めた。


 契約の草案を書くのは俺だが、古代の規則や先例はじいさんの知識が必要だった。


「初代が草案を作っていた。未完だが、ここから始めれば早い」


 じいさんが革張りの古い本を出した。四百年前の文字で書かれている。


「読めますか」


「現代語に直せる。時間はかかるが」


「お願いします。報酬は——」


「いらない。これが俺の仕事だ。百二十年待っていた仕事だ」



 



 三週間が過ぎた。


 草案が形になってきた。


 ゴブが俺の作業を覗き込んで言った。


「難しそうなことを書いている」


「規則の話は複雑になる」


「お前は楽しそうだ」


「楽しい」


「なぜ」


「難しい問題を解いている時が一番頭が動く。前世も今世も変わらない」


 ゴブが「変な奴」と言った。


「よく言われる」


「褒めている」



 



【迷宮管理 Lv.4(経験値:67/500)】

【封印強度:72%(安定)】

【残り猶予:約5ヶ月】



 



 ◆ 次話「第23話:王都から使者が来た」

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