表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
門番、世界と話す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

136/167

第136話「なんとなく」

フォルが接続してきた。


「今日は何を聞きたい」と俺は言った。


【「今日は——お前に話を聞いてほしい。俺が話す番だ】


「どうぞ」


【「外からのものが、また来たか】


「昨日来た。話せた」


【「どんな話をした】


「なぜ聞くようになったか、という話をした」



 



【「俺もそれが気になっていた。お前はなぜ「聞く」ようになったのか——俺はずっと気になっていた。ゴブに聞いたら「なんとなくそうなった」と言っていた。お前もそうか】


「俺もそうかもしれない」


【「「なんとなく」——それが俺には理解しにくかった。俺たちは全ての行動に理由を持っていた。「出たい」「安全でいたい」「敵を排除したい」——理由があって動く。「なんとなく」は——理由がないということか。理由なしに動けるか、俺には疑問だった】


「理由なしに、というより——理由が見えていなかっただけかもしれない」と俺は言った。


【「どういう意味だ】



 



「ゴブが初めてノックしてきた夜——俺は、聞こうと思って聞いたわけじゃなかった。開けて、聞いた。後から考えると——「何が来たか確認したかった」という理由があったかもしれない。「門番として対応する義務があった」という理由もあったかもしれない。でも——そのとき俺は何も考えていなかった。ただ開けて、聞いた」


【「理由が後から来た、ということか】


「そうかもしれない。「なんとなく」というのは——理由がないのではなく、理由が後から見えてくるということかもしれない」



 



 フォルが少し間を置いた。


【「……それは俺たちにとって——大きな発見かもしれない。俺たちは「理由がわかるまで動かない」でいた。でも「なんとなく」で動いた者が——道を開けた。俺たちが動けなかった場所で】


「そうかもしれない」


【「では——俺も「なんとなく」を試してみたい。「なんとなく」声をかけてみる。理由は後から来るかもしれない。そういう動き方を、してみたい】


「いい試みだと思う」


【「今日、外からのものに——「なんとなく」声をかけた。理由はなかった。ただ——そいつが気になった。気になったから、声をかけた】


「それが「なんとなく」だ」



 



【「……返事があった】


 俺は少し止まった。


「返事があったのか」


【「あった。短かった。「誰だ」とだけ言った。俺は「フォルだ」と答えた。そこで切れた。でも——返事があった。俺が話しかけたら、向こうが返事をした】


「それは——すごいことだ」


【「そうか。俺にはまだよくわからない。「すごい」という感覚が、まだよくわからない。ただ——また声をかけたいと思っている。それが「なんとなく」か】


「そうかもしれない」



 



 俺はしばらく空を見た。


 フォルが外からのものに声をかけた。向こうが返事をした。


 これは——段階が変わった。フォルが「外から来るもの」に声をかけ、向こうが返事をした。三者の間に、また新しい接続が生まれた。


「フォル」と俺は言った。


【「なんだ】


「それを教えてくれてありがとう」


【「なぜ礼を言う。俺はただ話しただけだ】


「お前が話してくれたから——俺もわかった。繋がっていることが、今日また一つ増えた」


 フォルが少し沈黙した。


【「……「繋がる」ということを、俺はまだよく理解していない。でも——お前が言う「繋がる」は、悪い感じがしない。良い感じがする。それが「なんとなく」か。感じが良いから続けたい、という】


「そういうものかもしれない」


【「ならば——続ける。なんとなく、続ける】


 接続が切れた。


 空が少し風で動いていた。


 「なんとなく続ける」——フォルがその言葉を使えるようになった。


 三百年、フォルには「出たい」という大きな理由があった。それだけがあった。「なんとなく」でやることが、フォルには許可されていなかった——というより、そういう動き方を知らなかった。


 でも今日、フォルは「なんとなく」で外からのものに声をかけた。返事があった。「なんとなく続けたい」と言った。


 ゴブが「なんとなくそうなった」と言ったのを思い出した。フォルがゴブから「なんとなく」を学んで、外からのものに届けた。俺が「なんとなく」でゴブの話を聞いたことが——今日ここに来た。


 理由はあとから来る。最初は——「なんとなく」でいい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ