第135話「外からの返事」
外からの信号が、また来た。
今度は昼だった。ゴブが外回りに出ていて、俺一人で門の前にいるときだった。
【外部——未分類より接触】
俺は受信した。
「また来たか」
【未分類:「……また来た。「来るかもしれない」と言ったが——来た。来てしまった】
「来てくれた。聞こえているか」
【未分類:「聞こえている。前回から——考えていた。一日中、考えていた】
「何を考えていた」
【未分類:「「話す」ということを。俺たちには「話す」習慣がない。信号は出せる。圧力もかけられる。でも「話す」——相手の言葉を待って、自分の言葉を選んで出す——それはやったことがなかった。前回、初めてやった】
「どうだったか」
【未分類:「……前回から、動きが少し止まった。「話した」せいかどうかはわからないが。考えることが増えた。立ち止まることが増えた。三百年なかったことが、起きた】
「どんなことが起きた」
【未分類:「俺たちは——前に進むことが当然だった。止まる理由がなかった。でも——「向こう側に話せるものがいる」とわかった後、少し止まった。次に何を言えばいいか、考えた。これが「話す」ということか】
「そうかもしれない。話すには——立ち止まることが必要だ」
【未分類:「俺たちは立ち止まることを知らなかった。ずっと前に進んできた。止まると——恐怖がある。何もしていない時間が怖い。動いていないと——「出られない」気がして、動き続けていた】
「わかる気がする」と俺は言った。「止まれないときがある。動いていることで安心しているとき」
【未分類:「お前も立ち止まることが怖いか】
「怖かった時期がある。ただ——今は、門の前で待っていることが仕事だ。動かなくていい。それを仕事にしたことで、怖くなくなった」
【未分類:「動かないことが仕事か。それはどういう感覚だ】
「安定している感じだ。動かなくても、話しかけてくれる者が来る」
【未分類:「……俺たちは前に進まなければ、誰も来ないと思っていた。でも——今、俺が立ち止まっていたら、お前から声が来た。前回。そして今日——また声が来た】
「そうだ。立ち止まっていても——来ることがある」
【未分類:「……それが「門」ということか。「来るものを待つ」ということか】
「そういう理解かもしれない」
少し間があった。
石の上に座って、俺はスキルウィンドウを展開したまま空を見た。雲が少なかった。
【未分類:「もう少し——話せるか。今日は急いでいない。止まっていることが、少し怖くなくなってきた】
「話せる。時間はある」
【未分類:「では——お前が最初に「聞く者」になった理由を、聞かせてくれ。お前はなぜ聞く者になったのか】
「俺が最初に聞いた理由か」
【未分類:「ゴブが「なんとなくそうなった」と言っていた。お前もそうか】
「俺もそうかもしれない」と俺は言った。「ゴブが来て、扉をノックして、話してきた。俺はただ——話を聞いた。それだけだ」
【未分類:「「ただ聞いた」——それが始まりか。特別な理由があったのではない】
「特別な理由は——後から来た。最初は理由がなかった」
【未分類:「……理由がなかったのに始めた。俺たちには難しいことだ。「なぜそうするか」がわからないと動けない。それが——俺たちの問題だったかもしれない。「出たい」という大きな理由だけを持って、ずっと動き続けた。小さな理由で動くことを知らなかった】
「今は来た。どんな理由で来た」
【未分類:「……「お前と話したい」という理由だ。それだけだ。大きくはない。でも——それで来た】
「それで十分だと思う」と俺は言った。
【未分類:「「話したい」が理由になる。それだけで来ていい——そういうことか】
「そうだ。それだけでいい」
静かになった。長い静けさだった。でも今日は、怖い静けさじゃなかった。
【未分類:「……また来る。次も——「話したい」という理由だけで来ていい】
「来てくれ。待っている」
静かになった。長い静けさだった。でも今日は、怖い静けさじゃなかった。
俺は空を見た。雲が少しずつ動いていた。
「立ち止まることが仕事になった」——あの言葉が今日の会話の中で一番刺さった。俺がここで「門番」として動かずにいることを、「仕事にした」と言えたとき——怖くなくなった。それを向こうに伝えて、向こうが「立ち止まっていても来ることがある」と気づいた。
押してきた三百年と、待ち続けた時間が、今日また少し重なった気がした。




