表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
門番、世界と話す

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

130/171

第130話「また来た」

翌朝、ゴブに話した。


「昨夜——外から信号が来た」


 ゴブが手を止めた。迷宮の入口の石段を磨いていたところだった。ゴブは毎朝ここを磨く。ドランがそうしていたから、ということらしかった。


「外から?フォル以外のものがですか」


「そうだ。名前もわからない。ただ——話せた」


「何を話したんですか」


「こちらに「話を聞く者がいる」ということを伝えた。あと——「待っている」と言った」


「それで?」


「「また来るかもしれない」と言って、切れた」


 ゴブが石段の掃除を再開した。ただ、いつもよりゆっくりだった。考えながら動いている。



 



「来ると思いますか」とゴブが言った。


「わからない。ただ——フォルが「三百年前は俺たちも同じだった」と言っていた。来るかもしれない」


「怖いですか、そのもの」


 俺は少し考えた。


「怖くはない。ただ——想定外だった。封印が安定した後に、向こうから来るとは思っていなかった」


「想定外でも、話しましたよね」


「そうなった」


「レンはいつもそうですね」とゴブが言った。掃除の手を止めずに。「想定外でも、まず聞く」


「お前もそうなってきたぞ」


「俺はレンに習いました」


「ちょっと違うと思うが」



 



「何が違いますか」とゴブが言った。今度は顔を上げた。


「お前は習ったんじゃなくて——隣にいて、自然にそうなったんだと思う。習うのと、なるのは違う」


「どっちがいいですか」


「なる方が強い、と俺は思っている。習ったことは忘れることがある。なったことは、忘れない」


 ゴブが「……そうですか」と言って、石段をもう一度磨いた。


「ドランもそうだったんでしょうか」と、しばらくしてゴブが言った。「「習った」んじゃなくて、「なった」んでしょうか」


「わからない。でも——ドランが「話を聞く」ことを続けたのは、そういうことだと思う。誰かに教わったというより——それがドランだった」



 



 その日の昼、カーラが来た。


「報告があります。議会での協議が進んでいます——ゴブの門番登録の件です」


「通りそうか」


 カーラが少し笑った。「難しい部分もあります。前例がないので。ただ——セルディン議員が賛成に回っています」


「セルディンが」


「先週の視察の後——「見てから判断するべきだった」と言って、賛成側に動きました。彼の発言力は大きい。反対派が委縮しています」


 ゴブが「俺の件ですか」と言った。目が少し大きくなっていた。


「そうです。あと少しかかりますが——前向きな方向で進んでいます」



 



 ゴブが少し間を置いた。


「……ありがとうございます」


「お礼を言うならセルディン議員に」とカーラが言った。「彼が動いてくれました」


「でもセルディンさんが動いたのは——フォルと話してからですよね」


「そうですね」


「フォルが動いたのはレンが話しかけたからですよね」


「そうですね」


「つながってますね」とゴブが言った。「繋がって、繋がって——俺のところまで来た」


 カーラが「そういうものかもしれない」と言った。


「そういうものですよ」とゴブが言った。少し強い言い方だった。「レンに聞きました。聞く人間が一人増えると、また別の誰かが聞き始めると。俺——そのことを毎日考えています」



 



「毎日、か」と俺は言った。


「はい。ドランが俺を待っていた。俺がレンを待った。レンがフォルに話した。フォルがセルディンと話した。セルディンが署名した——全部、繋がっている。最初の一個がなければ、全部なかった」


「最初の一個は何だ」


 ゴブが少し考えた。


「ドランです」と言った。「ドランが三百年、ここにいた。来た者の話を聞いた。俺が来たとき、聞いてくれた。——全部の始まりはドランです」


 カーラが「ドランが始まりだとしたら——アシダ殿は?」と言った。


「レンは——続けた人です」とゴブは言った。「始まりを、続けた」


 俺は何も言わなかった。


 言い訳はできた。「俺はただいただけだ」とか「続けたのはゴブだ」とか——そういう言葉は出てきた。でも今日は、それを言う必要がない気がした。


 ゴブが言いたかったことを、受け取ればよかった。


「……わかった」と俺は言った。


「ありがとう」とゴブが言った。俺への「ありがとう」ではなかった。ドランへ向けて言っているような「ありがとう」だった。


 代わりに、スキルウィンドウが静かに点滅した。


【迷宮管理Lv.8——安定継続中】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ