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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
門番、世界と話す

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第127話「セルディンとフォル」

「フォルと話したい、か」と俺は言った。


「無理なら構わない」とセルディンが言った。「ただ——「書類の向こうにいるもの」と、一度でいいから話してみたかった」


 俺がフォルに呼びかけた。少し間があって、接続が来た。


【「誰かいるのか。人間の感じが——お前だけじゃない】


「セルディンという議員だ。話したいと言っている。ゴブの門番登録に——最後まで迷っていたが、署名した者だ」


 少し間があった。


【「……あの署名した者か。ゴブに聞いた。「反対していたのに最後に署名した者」と言っていた。——どういう気持ちで署名したんだ。聞いてみたかった】



 



「フォルが「どういう気持ちで署名したか聞きたい」と言っている」と俺はセルディンに翻訳した。


 セルディンが驚いた顔をした。「知性体の側が聞きたいことがあったとは」


「フォルも聞く側に回り始めている」


「……そうか」


 セルディンが椅子に深く座り直した。空を一度見てから、俺の方に向いた。


「怖かった。変わることが怖かった。今までのやり方を捨てることが怖かった——それだけだと思う。長い間、反対し続けたのは、正義があったわけじゃない。変わることへの恐怖だった」


 俺がそれを届けた。



 



 フォルが少し時間をかけて答えた。


【「……同じだ。俺たちも封印の向こうから出ることが怖かった。前に進むしかない状況でも——怖かった。三百年間、押し続けながら——怖かった】


「フォルは「同じだ。俺たちも怖かった」と言っている」と俺が伝えた。


 セルディンが静かになった。


「……魔物も怖いのか」


「知性体は怖い。それはわかった」


「人間と——同じだと思ったことがなかった」


「俺もなかった。最初は」



 



【「では——怖いままで、話せるか、と聞いていいか。お前に】


「フォルが「怖いままで話せるか」と聞いている」と俺が言った。


 セルディンが少し時間をかけた。


「……話せる」と彼は言った。「話せる。今——怖くないとは言えない。この場所も、見えないものと話すことも、怖い。ただ——話せる気がする。なぜかはわからないが」


 俺がそれを届けた。


【「……それでいい。俺たちも怖いままだ。でも——今は話せている。怖くなくなってから話そうとすると——永遠に話せない。怖いままで一歩だけ進んだ。それが——ここに来た者のやったことだ】



 



「フォルが言っている」と俺は言った。「「怖くなくなってから話そうとすると、永遠に話せない。怖いままで一歩だけ進んだ——それが、ここに来た者のやったことだ」と」


 セルディンが「そうか」と言った。声が少し低くなっていた。


「……三十年間、議員をしてきた。「怖いままで一歩進む」ということを——いつからか、できなくなっていた気がする」


 ゴブが「俺も最初は怖かったです」と言った。「レンのところにノックしに行く夜——すごく怖かった。でも来た。来てよかったと思っています」


 セルディンがゴブを見た。長い間、見ていた。



 



 セルディンが帰り際に俺に言った。


「アシダ殿。私が議会で感情的に反対した理由が——今日、少しわかった」


「なんだったんですか」


「知らなかっただけだ。話を聞いたことがなかっただけだ。それだけのことが——何年も続いていた」


「わかりましたか」とゴブが言った。


「……わかった気がする」とセルディンが言った。「ただ——「わかった気がする」が全部じゃないこともわかった。まだわからないことがある。ただ——またここに来てもいいか」


「いつでも」と俺は言った。


「来ます。来るたびに——少しわかる気がする」


 セルディンが馬に乗って、石畳の道を戻っていった。


「レン」とゴブが言った。


「なんだ」


「セルディンさん——また来ますね、絶対」


「そうかもしれない」


「「また来ます」と言う人は、来ます。俺の経験では」


 俺は少し考えて、「そうかもしれない」と言った。


「セルディンさんが——「怖いままで一歩進んだ」と言っていました。フォルの言葉を受けて。俺、あれを聞いて——俺自身も最初そうだったと思いました」


「そうだったな」


「ノックするとき——怖かったです。でも来た。来てよかったと思っています。セルディンさんも——今日来てよかったと思ってくれるといいですね」


「そう思う」と俺は言った。「怖いままで来た者には——怖いままで来てよかった、が伝わる方がいい」


「フォルが——怖いままで来た者に向けて話せたのは、フォル自身も怖かったからですよね」


「そうだと思う」


「そういうことなんですね。怖さが——扉になる」


 石門の向こうで、第七迷宮が静かにあった。

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