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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
門番、世界と話す

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第122話「フォルの質問」

フォルからの接続が増えていた。


 最初の頃は俺から呼びかけていた。「今日の状態を教えてくれ」「封印の数値を確認したい」——そういう、こちら側の用事で繋いでいた。


 それがいつからか、逆になっていた。


 今朝も、朝食を終えて門の前に戻ったとき、スキルが静かに鳴った。


【接続要求:フォル】


 俺は受信した。


「今日は何を聞きたい」


【「いつもそう言うな。俺が何かを聞きに来ると決めているのか】


「そうじゃないか」


【「……そうかもしれない。今日も聞きたいことがある】


「どうぞ」



 



 石の縁に腰を下ろして、俺はスキルウィンドウを展開したまま待った。フォルが話すまでには、いつも少し時間がかかる。考えてから話す存在だ。


【「カイル・ベルグという人間と話した。第四迷宮の件で動いた者だ】


「知っている。どんな話をした」


【「「聞くのが難しかった」と言っていた。「うまくいかなかった交渉がある」と】


「本人から聞いたのか」


【「俺が接触した。第四迷宮の外側で待っていた。声をかけた】


 俺は少し止まった。


「……お前から話しかけたのか」


【「三百年待った。お前が言っていた——「怖いままで聞けばいい」と。俺も試した】



 



 フォルが自分から話しかけた。


 それがどれほどのことか、俺にはわかる。ゴブが初めて俺のところに来たとき、何十体もの仲間がいたはずなのに一体だけが白旗を持って出てきた——あの夜を思い出す。「来た」ということ自体が、すでに何かを越えている。


「カイルの反応は」


【「最初は驚いた。当然だ。それから——「一人では難しい場面がある」と言い始めた。正直な奴だ】


「カイルはそういう奴だ」


【「お前とは違う。お前は「わからない」と言いながら行動する。あいつは「難しい」と言いながら止まっている。どっちがいいと思う?】


「どちらも必要かもしれない。わからなくても動く者と、難しいと言って立ち止まる者が一緒にいると——補い合えることがある」


【「……そうか。お前とカイルが補い合っているのかもしれないということか】


「俺とカイルで補い合っているかどうかはわからない。ただ——カイルが動いてくれたことは助かっている」



 



【「フォル】と俺は言った。


「なんだ」


【「……俺は今、「聞く側」に回ろうとしている。試してみたら——難しかった。お前たちはいつもこれをやっているのか】


「そうだな」


 俺は少し考えてから、続けた。


「お前が「難しい」と感じているなら——それは聞けている証拠だ。難しいと思わない聞き方は、たぶん聞けていない」


【「……それはどういう意味だ】


「相手のことを受け取ろうとしているから、難しくなる。何も受け取らなければ、難しくない。難しいと感じているお前は——ちゃんと受け取っている」


 しばらく沈黙があった。


【「……そうか。難しいことは、悪いことではないのか】


「悪くない」



 



【「外から来るものに——今日、声をかけた。返事はなかった。でも——返事がなくても、聞こえているかもしれないと思った。お前のやり方を真似した】


「返事がなくても続けるつもりか」


【「……まあ、聞いてから判断しよう】


 俺はその言葉を聞いて、少し黙った。


 フォルがその言葉を使ったのは——初めてではなかったかもしれない。でも今日の使い方は、借り物じゃない感じがした。フォル自身の言葉として出てきた、そういう手触りがあった。


 いつから——フォルがそういうことを言えるようになったのか。少し前まで、フォルは「出るか出ないか」しかなかった。封印の強度と脱出の可能性を計算する存在だった。それが今は——「声をかけた」「返事がなくても続けるか考えている」「聞いてから判断しよう」と言っている。


「フォル」と俺は言った。


【「なんだ】


「お前が変わったのが——わかる気がする」


【「……俺に変わった自覚は薄い。ただ——「続けようとしている」ことは感じている。三百年の習慣から、少し外れている気がする。怖くはない。それだけは言える】


「それで十分だ」と俺は言った。


「そうしてみてくれ」と俺は言った。


「返事が来たら——教えてくれ」


【「わかった。来たら、すぐに繋ぐ】


 接続が静かに切れた。


 門の前の風が少し動いた。第七迷宮の匂いが変わったことを、またひとつ確認した。

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