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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
第23層との交渉

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第117話「よかったと思う」

「「止まれば、内側のものはよかったと思うのか」——その問いに、俺が答えていいか」


 俺はカーラとゴブを見た。二人が頷いた。


「答える。内側のものを代表する立場ではないが——俺の立場で答える」


【受信:「聞く】


「よかったと思う。俺はここの門番だ。この迷宮を管理している。封印が守られれば——ここにいる難民も、ヴォルトも、全員が助かる。「よかった」と思うのは当然だ。だが——それだけじゃない」


【受信:「それだけじゃない、とは】


「お前が「止まれば」、お前も楽になるんじゃないかと思っている。三百年、止まれなかった。「止まれた」とフォルが言っていた。それを——いいことだと、俺は思っている。お前のために」


【受信:「……俺のために?】


「俺に押し続ける意味があったのか、と聞いた。「なぜ出てはいけないのか」の答えを求めていた。答えが来れば——もう押さなくていい。それは楽になることだと思う」


 長い沈黙があった。



 



 カイルが「光が——大きくなった気がする」と言った。


「大きくなった」


「明るくなったというか——広がったというか。フォルのときと同じような動きだ。何かを受け取って、処理している感じがする」


「揺らいでいるか」


「揺らいでいる。でも——攻撃的な感じじゃない」



 



【受信:「……俺たちは——「楽になる」ということを、考えたことがなかった】


「なぜか」


【受信:「動き続けることが——存在することだったから。止まれば、消えると思っていた。でも——フォルは止まっても、消えていない】


「止まっても消えない」


【受信:「それが——初めてわかった。フォルが止まった。それでも——ここにいる。俺たちの感知の中に、フォルがいる。消えていない】


「止まることと消えることは、別だ」


【受信:「……そうらしい。俺たちは——それを知らなかった。動き続けなければ消えると思っていた。だから——止まれなかった】


「今は?」


【受信:「……まだ怖い。でも——フォルが止まっている。消えていない。俺も——少し、考えてみてもいいかもしれない】



 



 ゴブが俺に「どういう状況だ」と聞いた。


「フォルとは別の「光」と話した。止まれば消えると思っていたらしい。でもフォルが止まっても消えていないことで——「止まっても大丈夫かもしれない」と考え始めている」


「それは——進展か」


「かなりの進展だと思う」


「他の者たちも同じ状況なのか」


「フォルに聞く」


「フォル。今、別の者と話した。止まっても消えないとわかり始めているようだ。他の者たちも同じ考えか」


【受信:「……今、みんなに伝えている。全員が同じ反応ではないが——フォルが止まっても消えていないという事実は——全員が確認できている。それが——大きいと思う】


「大きい、とはどういう意味だ」


【受信:「証拠がある。言葉だけでなく、事実が見えている。それは——信じやすい。俺たちは——見えるものを信じてきた。押して、跳ね返されることで「出るな」という意思があると判断してきた。今は——止まったフォルが、ここにいる。それが「止まっても大丈夫」という証拠になっている】



 



 カーラが「アシダ殿」と呼んだ。


「何だ」


「封印強度は」


 スキルを確認した。


【封印強度:41%→43%(増加中)】


「上がっている。二ポイント」


「止まってきている——ということですか」


「向こうが押すのを弱めているなら、封印の強度は自然に回復する。今まで消耗していた分が——少しずつ戻っている」


「……それは、いつまで続くんですか」


「わからない。でも——今の状態が続けば、封印は安定する方向に向かっている」


 カーラが「……本当に起きているんですね」と言った。


「何が」


「交渉が。バトルなしで。話を聞くだけで」


「まだ終わっていない。でも——方向は見えてきた」



 



 帰り道、ゴブが「調停者」と呼んだ。


「何だ」


「一つだけ聞いていいか」


「聞け」


「フォルたちは——どこかに行くのか。止まった後、どこにいるんだ」


「聞いていない。フォルに聞いてみる」


「頼む。どこかに行くなら——ちゃんと行けるように、してやりたい」


「それはなぜだ」


「俺も逃げた。逃げてきたとき——行き場があった。調停者がいた。行き場がなかったら——どうなっていたかわからない。フォルたちも、ちゃんと行ける場所があればいいと思う」


 俺はその言葉を聞いた。


「ゴブ。お前はいい調停者になれる」


「なれるわけない。俺はゴブリンだ」


「関係ない。聞き方を知っている。それが大事だ」


 ゴブが「……まあ、そうだな」と言った。

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