第112話「四人で降りる」
翌朝、四人で封印層に向かった。
レン。ゴブ。カイル。カーラ。
カーラは甲冑を脱いでいた。
「なぜ脱いだ」
「武装していると——攻撃的に見えるかもしれないと思いました」
「向こうには見えないが」
「でも——私の気持ちの問題です」
俺はそれ以上何も言わなかった。
カイルが「俺も剣は置いてきた」と言った。「同じ理由だ」
「俺は最初からない」とゴブが言った。「俺はゴブリンだからな。爪しかない」
「爪は置けないな」
「置けない」
封印の壁の前に立った。
フォルを呼んだ。
「来た。今日は四人いる」
【受信:「……人数が増えた」】
「俺以外に、三人。一人は「見える」者。一人は「感じる」者。一人は——人間の側の代表者だ」
【受信:「代表者?」】
「外の世界で、俺たちの行動に責任を持つ者だ。お前と話し合う席に——正式な立場で来た」
【受信:「……正式な立場。それに意味があるのか」】
「意味があるかどうか、来てから決めた。まあ——聞いてから判断しよう」
【受信:「……またその言葉だ」】
「気になるか」
【受信:「気になる。その言葉が出るたびに、俺は止まる」】
「なぜ止まる」
【受信:「わからない。でも——何かが引っかかる」】
ゴブが「俺が話したい」と言った。
「今だ」と俺は言った。「ゴブ、話せ。俺が届ける」
ゴブが封印の壁に近づいた。人間語で言った。俺がスキルで翻訳して届けた。
「俺はゴブだ。この迷宮の難民だ。二年前、外の脅威——お前たちに追われて、第23層から逃げてきた」
【受信:「……追われた、と言ったか」】
「そうだ。お前たちが来た。俺たちは逃げた。逃げた先がここだった」
【受信:「……俺たちが来た場所から逃げたのか」】
「ああ。お前たちに会ったことはない。顔も見えない。でも——お前たちが近づいてくる「気配」はわかった。だから逃げた」
長い沈黙があった。
【受信:「……お前たちを、追ったつもりはなかった」】
俺は受け取った。ゴブに伝えた。
「追ったつもりがなかったらしい」
「じゃあ何をしていたんだ」
「聞く」
俺はフォルに言った。「「追うつもりはなかった」とはどういう意味だ」
【受信:「俺たちは——前に進んでいただけだ。目的があって前に進んでいたわけじゃない。ただ——前に何かがあって、そこに向かっていた」】
「前に何があったんだ」
【受信:「……封印があった。その先に、何があるのか——知りたかった」】
カイルが「フォルの光が揺れている」と言った。小声で。
「強く揺れているか」
「さっきより大きく揺れている。でも——攻撃的な感じじゃない。何か——困惑しているような感じがする」
「困惑」
「さっきのゴブの話で、何か想定外のことがあったんだと思う」
俺はフォルに言った。
「「封印の先に何があるのか知りたかった」と言ったな。それが、封印を押していた理由か」
【受信:「……そうかもしれない。正確には——理由というほどはっきりしていなかった。ただ、そこに封印があった。内側に何かがある。それを確かめたかった」】
「確かめた上で、どうするつもりだった」
【受信:「……考えていなかった。確かめることしか、考えていなかった】
「確かめたかっただけか」
【受信:「破壊したかったわけじゃない。入りたかったわけでもない。ただ——中に何があるのかを——知りたかった】
ゴブが「それを聞いてどうする、調停者」と言った。
「俺も聞いていた。まだ整理できていない。でも——」
俺はフォルに言った。
「今、封印の内側に何があるかを——教えてやろうか」
長い沈黙があった。
【受信:「……聞きたい」】




