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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
第23層との交渉

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第110話「二人で聞けること」

カイルが第七迷宮に来た。


「頭痛は治ったか」


「治った。ヴェグに怒られた」


「そうか」


「すまなかった。無茶をした」


「謝らなくていい。ただ——次は事前に言え。一人で行くな」


「なぜだ」


「一人で行って倒れたら、誰にも助けられない。俺が言うのもおかしいかもしれないが」


「お前はゴブがいるだろ」


「そうだ。お前も誰かと行け」


 カイルが「ヴェグに頼む」と言った。「怒ってはいたが、助けてくれた。信頼していいと思っている」


「そうか」



 



 翌日、二人で封印層に降りた。


 カイルはゴブと並んで、俺の後ろにいた。


「ここが封印の壁か」とカイルが言った。


「そうだ」


「感じる。圧力が——第四迷宮より弱い。安定しているのか」


「フォルが押すのを止めているから」


「フォル、と呼んでいるのか」


「名前がないと言うから、俺がつけた」


「向こうは了承したのか」


「「構わない」と言っていた」


 カイルが壁を見た。手は伸ばさなかった。


「俺が触れたときに「光が複数見えた」と言ったが——今も感じるか」


「今は——フォルがいる。一つだけ、強く感じる。他のものは遠くにある」


「俺のスキルで確認するから、少し待ってくれ」


 カイルがスキルを展開した。しばらく壁を見ていた。


「……見える。俺の感知では「光」と表現したが——正確には光ではない。意思のまとまりのようなものだ。フォルと呼んでいるのが一つ、明確に近くにいる。遠くに——五つ、六つ、もしくは七つ程度のまとまりが見える」


「七つか」


「正確にはわからない。遠くて輪郭がぼやけている」



 



 フォルに接続した。


「今日は、一人ではない。別の者が一緒にいる」


【受信:「感じる。別のスキルを持つ者がいる」】


「こちらの仲間だ。第四迷宮でお前と同じ「外のもの」と接触しようとして、怪我をした」


【受信:「……なぜそこまでする」】


「接触するためだ。話すために」


【受信:「話せば何かが変わると思っているのか」】


「変わるかどうかは、話してみないとわからない。でも——」


【受信:「「聞いてから判断しよう」か」】


「そうだ」


【受信:「……お前は、その言葉を何度も使う」】


「口癖だ」


【受信:「口癖——習慣として身についた言葉、ということか。お前にとって「聞くこと」は習慣なのか」】


「そうかもしれない」


【受信:「俺には、その習慣がない」】


「話すことが初めてなんだろ。習慣になるまで時間がかかる」



 



 カイルが俺に近づいて言った。


「スキルで何か出ているか」


「フォルと話している。カイル、お前は何か見えるか」


「フォルが……揺らいでいる気がする。一定じゃなくなった」


「揺らいでいる」


「感情——と呼んでいいかわからないが、何かが変化している。俺が見える感覚では、光の輪郭がぶれている」


「動揺している、ということかもしれない」


「何に」


「「習慣がない」という言葉への返答に」


 俺はフォルに言った。


「習慣は、繰り返すことで身につく。来るたびに話せば——少しずつ慣れる」


【受信:「……慣れる必要があるのか」】


「必要かどうか、俺には決められない。でも——俺は来る。来るたびに話す。それだけだ」


 長い沈黙があった。


【受信:「……なぜそこまで来るんだ」】


「損だから」


【受信:「損?」】


「聞かないことが損だ。お前が何を考えているか、何を感じているか——聞かないままでいるのは、俺には損に感じる」


【受信:「……」】



 



 帰り道、カイルが言った。


「お前と俺で、見えるものが違う」


「そうだな」


「お前は「聞こえる」。俺は「見える」。スキルが違うから感知の仕方が違う」


「それが問題か」


「問題じゃないかもしれない。むしろ——」


「むしろ」


「お前が聞いているとき、俺は向こうの「光」が動くのが見えた。フォルの輪郭がぶれるタイミングと、向こうが答えるタイミングが——一致していた」


「感情のようなものが、答えに影響しているということか」


「そうかもしれない。お前が「損だから」と言ったとき、フォルの光が一番大きくぶれた」


「意外だった、ということか」


「たぶん。少なくとも——予想外のことに、向こうは反応している」


 俺はそれを聞いた。


「二人で来た方がいい、ということかもしれない」


「俺は「見える」。お前は「聞こえる」。合わせれば——向こうがどういう状態で話しているかが、わかりやすい」


「そうだな」とゴブが言った。「俺は何もできないが——」


「ゴブは「感じる」だろ」


「感じる?」


「昨日も「向こうが揺らいでいる気がした」と言っていた。三人で来れば——三つの感知がある」


 ゴブが「……俺の感知も使い物になるのか」と言った。


「使い物にならないものを連れてこない」


「そうか」


 ゴブが「まあ、そうだな」と言った。

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