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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
第23層との交渉

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第109話「カイルが降りた」

フォルとの接触が三日続いた。


 会話と呼べるほどではない。俺が封印の壁の前に立つと、スキルが反応した。フォルが「いる」ことを確認した。短いやりとりがあった。長い沈黙があった。


 それでも——前回より、沈黙の時間が少し短くなっていた。


「慣れてきているのか、向こうが」とゴブが言った。


「そうかもしれない。俺が来ることに慣れてきている」


「俺が来る前に慣れていたら、な」とゴブが言った。少し笑っていた。


「お前がいない方が怖がらないかもしれない」


「……そりゃそうだ」



 



 四日目の夜、カイルから緊急通信が来た。


「レン、俺、第四迷宮の封印層まで降りた。一人で」


「案内なしでか」


「ヴェグに怒られたが、行った。第三迷宮で外部信号が強くなっているという報告があって——比較のために第四でも確認したかった」


「それで」


「壁の前に立った。そしたら——スキルが動いた」


「動いた、というのは」


「お前のスキルほど詳しい表示は出ない。でも——「圧力増加」という表示が出た。それから——俺の前の壁が、なんか、揺れた気がした」


 俺は少し考えた。


「揺れた」


「物理的にじゃない。なんか——こっちに何かが来た感じがした。俺には届かなかったけど、壁が薄くなった感じがした」


「封印強度はどうなった」


「Lv.5のスキルで確認したら、第四迷宮は36%に下がっていた。三日前は38%だったのに」


「二ポイント落ちた」


「お前の第七は今日どうだ」


「こっちは41%で安定している。フォルと話しているから、向こうが押すのを止めている」


「じゃあ、お前と話しているフォルじゃない別の何かが——第四を押している可能性があるのか」


「そうかもしれない」



 



 カイルが「俺、もっと近づいてみた」と言った。


「どこまで」


「壁に触れた」


「触れたか」


「そしたら——なんか、意識が引っ張られる感じがした。一瞬だけ。それから——頭が痛くなって、倒れた」


「今はどうだ」


「ヴェグに拾ってもらった。意識はある。頭痛が残っている」


「すぐ出てきたか」


「出てきた」


「無茶をするな」と俺は言った。


「わかってる」


「わかってないから一人で行った」


「……それはそうだが」


 カイルが「でも」と言った。


「一瞬だけ、向こうが見えた気がした」


「見えた」


「聞こえた、じゃなくて、見えた。お前は「聞こえる」という感覚で話しているんだろ。俺は——光みたいなものが、一瞬だけ見えた」


「お前のスキルと俺のスキルで、感知の仕方が違うかもしれない」


「そうかもしれない。でも——一つだけわかったことがある」


「何だ」


「向こうは、複数いる。俺が見えた光は——一つじゃなかった。いくつかあった」



 



 翌日、ゴブに伝えた。


「複数いる」


「一体じゃないのか」


「カイルが見た。複数の「光」があったと言っている。スキルの感知の仕方が俺と違うから、正確かどうかはわからないが——複数の可能性が高くなった」


「フォルは一体か、複数のうちの一体か」


「一体だと思う。でも——全員が同じ目的で動いているかどうかはわからない」


「バラバラで動いているかもしれない」


「そうかもしれない。フォルは「三百年、止まれなかった」と言っていたが——フォル自身の判断で動けなかっただけで、集団としての意思が別にあるかもしれない」


 ゴブが「それはまずいのか」と言った。


「わからない。フォルとの接触が進んでいるが——フォルが「止まる」と言っても、他の「光」が押し続けているなら、封印は削れ続ける」


「じゃあフォル以外とも話さなければいけない」


「そうかもしれない。ただ——まずフォルとの信頼を作ることが先だ。一つの接点が固まれば、他に広がる可能性がある」


「可能性だけか」


「今は可能性の話しかできない。でも——」


 俺はスキルを確認した。


【外部信号——フォル:待機中。その他信号:複数確認、動向不明】


「複数が確認された。動いているものがある。でも——フォルはまだ待っている」


「待っているということは」


「俺が次に来るのを待っている。俺との接触を、続けようとしている」


「それは——いいことか」


「悪くはない」

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