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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
調停者の名

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第11話「噂が広がる」

エリアが王都に戻ってから二週間が経った。


 その間、前哨基地に来た人間は七人だ。


 一人目はグレンの部下。書類を持ってきた。俺の「王国公式調停者」任命状だった。


 二人目は王都の商人パト。月銀石の受け渡し。予定通り。


 三人目から七人目は——冒険者だった。


「第七迷宮の調停者に会いに来ました」


 同じ言葉を、五人が五人とも言った。


 俺は一人ずつ話を聞いた。



 



 事情はそれぞれ違ったが、共通点があった。


 全員がカイルの知り合いだった。


「カイルが話したのか」


 五人目の冒険者——マーク、二十歳、ランクC——が頷いた。


「ダンジョンで魔物に護衛してもらったって。それで……魔物と話せる門番がいると」


「話せる、というより聞ける、の方が正確だが」


「どちらでも。俺はその……迷宮の内部情報が欲しいんです」


「何のために」


「Bランク昇格試験。第七迷宮の20層まで到達が条件で」


 俺はスキルを起動した。


【第七迷宮 11〜20層 現在状況】

11層:ハーピー×16 ——通常

15層:トロール×4 ——やや活性化

18層:ダークエルフ×8 ——非戦闘状態

20層:ワイバーン×2 ——休眠中


 休眠中。今なら行ける。


「今週中なら20層まで安全に行ける。ただし18層のダークエルフには絶対手を出すな」


「なぜですか」


「戦闘意思がない。向こうが攻撃してこない限り、こっちから仕掛けるな」


 マークが目を丸くした。


「ダークエルフが……非戦闘?」


「俺の見立てだ。確認したいなら自分で確かめてくれ。俺は情報を出すだけだ」



 



 夜、ゴブに報告した。


「また冒険者が来た。五人目だ」


「カイルという者が話を広めているのか」


「そうらしい」


 ゴブが少し考えてから言った。


「……良いのか。外の者がここに集まると、俺たちのことも知られる」


「知られても構わない。グレンの文書がある」


「文書で守れるか」


「文書だけでは守れない。だから顔を知ってもらう方がいい。俺が信頼している人間たちに」


 ゴブが黙った。


「調停者の戦略か」


「そうだ。人間は知らないものを怖がる。知っているものには手を出しにくい」


 ゴブがため息をついた。


「……お前の頭の中が怖い」


「そうか」


「褒めている」



 



 翌朝、ヴァルが俺を呼んだ。


 前室の奥、迷宮との境界近くに座っていた。


「調停者。18層のダークエルフについて話がある」


「聞いている」


「あれは……俺たちと同じだ」


 俺は少し待った。


「23層から逃げてきた?」


「昨日来た。12体。言葉は通じないが、迷宮語の古語で少し話せた」


「何と言っていた」


「霧が上層まで来ている。逃げ場がなくなってきた」


 俺はスキルを確認した。


【第23層「支配の霧」封印強度:34%】


 63日あると思っていた。今日で何日経った? 17日だ。


 まだ46日あるはずだが——封印強度が34%まで落ちている。計算が合わない。


「ヴァル。封印強度の低下速度が上がっている」


「……そうか」


「想定より早い。46日の余裕があると思っていたが、このペースなら——」


 俺は計算した。


「30日を切るかもしれない」


 ヴァルが立ち上がった。


「調停者。上層の者たちを迎え入れることはできるか。18層のダークエルフだけではない。もっと上からも来るかもしれない」


「前室の容量に限界がある」


「わかっている。ただ——」


「考える。少し時間をくれ」



 



 俺は報告書を書いた。


 グレン宛。内容:封印強度の低下加速、上層難民の増加、収容限界の懸念。


 書きながら、一つのことを考えていた。


 この前哨基地は小さすぎる。


 もっと大きな場所が必要だ。


 それを王国に認めさせるには——


 俺はペンを置いた。


 マークに頼むことがある。Bランク試験の情報料として。


【迷宮管理 Lv.3(経験値:22/300)】



 



 ◆ 次話「第12話:ダークエルフと話す」

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