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門番、魔王軍と交渉する〜ハズレジョブでも、話を聞く奴が世界を動かす〜  作者: ハル
第23層との交渉

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第103話「三百年の意味」

封印の壁まで下りた。


 スキルの表示が変わった。


【迷宮管理Lv.8:封印層——接触限界ライン。これより先への進行不可】


 物理的な壁があった。石ではなく——何か、圧力のようなものだった。手を伸ばすと、抵抗を感じる。痛みはない。ただ、押し返される感じがある。


「ここが限界か」とゴブが言った。


「スキル上の限界ライン。ここより先には行けない」


「でも声は届く」


「わかるか」


「なんとなく」


 ゴブが壁に近づいた。手を伸ばして、触れた。


「……冷たい。石じゃないが、何かある」


「ヴォルトたちが三百年守ってきたものだ」


「それを、外の脅威がずっと押してきた」


「そうだ」


 ゴブが手を引いた。


「ドランが死んだのも——これのせいか」


「直接の原因ではないかもしれない。でも、関係はある」


「関係ある、ということは——」


「ドランが限界になったとき、この封印が弱まった。外の脅威が余計に押せるようになった。悪循環だ」


 ゴブが黙った。



 



 ヴォルトに接続して、状況を伝えた。


「今、封印の限界ラインにいる。ここから呼びかけていい」


「——わかった。ただし——」


「ただし」


「——距離が近い。向こうが「本格的に認識する」可能性がある。今まで「内側で何かが動いた」程度だったが——封印の壁から直接呼びかければ、確実に気づく」


「気づかれると何が起きる」


「——わからない。押してくるかもしれない。止まるかもしれない。何もしないかもしれない」


「三択か」


「——今の封印強度は40%。大規模な攻撃があれば、さらに下がる」


「その場合は」


「——引き返す。封印が30%を切ったら危険域に入る。私たちが全力で維持しても厳しくなる」


「30%が限界か」


「——安全ラインはそこだ」


 俺はスキルの数値を確認した。現在40%。10%の余裕がある。


「やる」


「——わかった。私も感知しながら待つ。何か変化があれば伝える」



 



 ゴブが「俺は黙ってる」と言った。


「なぜ」


「俺が話しかけると、ゴブリン語か迷宮語になる。向こうに届くかわからない。調停者が話す方がいい」


「そうか」


「ただ——隣にはいる」


「わかった」


 俺は壁に向かった。


 スキルを起動して、外部信号のある方向に意識を向けた。昨日とは距離が違う。昨日は遠くに「いる」という感覚だったが——今は、壁を隔てて、すぐ向こうにいる気がした。


「聞こえるか」


 返事はなかった。


「俺はこの迷宮の管理者だ。门番というジョブを持っている。話を聞きに来た」


 封印強度の数値が動いた。


【封印強度:40%→38%(低下)】


「下がった」とゴブが言った。


「押してきた。気づいたんだろう」


「引き返すか」


「まだだ。38%。まだ余裕がある」



 



 もう一度、言った。


「俺は攻撃しに来たわけじゃない。ただ——何があったのか、聞きたい。三百年、何をしていたのか。なぜここにいるのか」


【封印強度:38%——変動停止】


「止まった」


「ああ」


 ゴブが「昨日も止まった」と言った。「「聞こえるか」って言ったときも止まった」


「そうだ」


「止まる理由が、何かある」


「あると思う。ただ——」


 スキルに新しい表示が出た。


【迷宮管理Lv.8:外部信号——応答パターン検知。言語処理試行中】


「言語処理?」


 俺はその表示を見た。


「スキルが——向こうの「何か」を解析しようとしている」


「向こうが話そうとしているのか」


「話そうとしているか、話せるかどうか確認しているか——どちらかだ」


 俺たちは黙って待った。


 封印強度は38%で止まっていた。


 一分が過ぎた。


 二分が過ぎた。


 スキルの表示が更新された。


【言語処理——不完全。ただし「意思確認済み」】


「意思確認済み」


「意思がある、ということか」とゴブが言った。


「スキルがそう判断した」


「話せるのか」


「まだわからない。ただ——」


 封印強度の数値が動いた。今度は、上がった。


【封印強度:38%→39%(微増)】


「上がった。なぜだ」


 ヴォルトから接続が来た。


「——封印の向こうで、何かが「止まった」。ただ止まっただけじゃない——引いた。少し、離れた」


「離れた?」


「——向こうが、自分から距離を取った。なぜかはわからない。でも——封印を強化しようとする意思ではなかった。かといって攻撃でもない」


「じゃあ何だ」


「——わからない。ただ一つだけ言えるのは」


「言え」


「——三百年で初めて、外の脅威が自分で「引いた」。それは起きたことだ」


 ゴブが俺を見た。


「調停者」


「わかった」


「どういう意味だ」


「まあ——聞いてから判断しよう」

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